2020年7月5日にNHKで放送された「日曜美術館」の【蔵出し!西洋絵画傑作15選(1)】の回をまとめました。
今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《ヴィーナスの誕生》ボッティチェリ
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
イタリアのフィレンツェ。
ここはルネサンス発祥の地として知られています。
「蔵出し!傑作選」、西洋絵画の4作目はフィレンツェのウフィツィ美術館が所蔵する作品。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
サンドロ・ボッティチェリが1485年頃に描いた《ヴィーナスの誕生》です。
大きな貝殻の上に生まれたばかりの女神ヴィーナスが立っています。
画面左側には西風の神と大地の女神がいます。
ヴィーナスに息を吹きかけて、愛の島であるシテール島へと運びます。
反対側にいるのは季節の神です。
一糸まとわぬヴィーナスに衣を着せようとしています。
15世紀末のイタリアでは中世が終わり、ルネサンスが始まっていました。
それまでの神を荘厳に描く時代から、人間らしさを重視する時代へと変わっていきます。
そんな時代を生きたボッティチェリは、それまでの中世では描かれる事のなかった”裸の女神像”を表現しようと試みます。
《ヴィーナスの誕生》に描かれているヴィーナスには独特の立ち姿をしています。
”地面に立つ”という行為は人間的な行為と言えるでしょう。
このヴィーナスは人間的な”立つ”という姿勢よりも、貝の上にそっと降りている、ある意味”重力から解き放たれている”という印象になっているのです。
そういう意味でも、(姿は人間ですが)人間を超越した存在だというのが分かります。
蜷川幸雄氏の考察
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
1983年に放送された「日曜美術館」では、演出家の蜷川幸雄氏がゲスト出演し、《ヴィーナスの誕生》について語りました。
蜷川氏はこの作品について「『誕生』というタイトルでありながら、これは『終末』ではないか」と言います。
蜷川氏によると、この作品には生々しさを感じられないと言うのです。
例えばこの舞い落ちている花。
これは実物の花とほぼ同じ大きさで描かれていますが、どこか模造品のような感じがすると言います。
そこには「違う技術で自然の物を再生する力の凄さ」があるのです。
蜷川氏も実際の舞台上で、例えば本物の”たくあん”や”サンマ”を置いても、本物には見えないと言います。
そこで模造品としてきっちりと作ったものを置いたほうが、実物よりも遥かに本物に感じられるのだそうです。
このボッティチェリの作品にも同じような事、つまり「現実をもう一度再構成する技術」と「それをつかまえ直す観念」が込められているのです。
《モナ・リザ》レオナルド・ダ・ヴィンチ
「蔵出し!傑作選(西洋絵画)」の5作目は、誰もが知る名画、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の《モナ・リザ》です。
この作品を仕上げるのに、レオナルドは晩年10年以上の歳月を費やしました。
描かれているのは一切の装飾品を身に着けず、髪を下ろして、微かな微笑みを浮かべる女性。
その後方には荒涼とした世界が広がっています。
これが現実の世界なのか、想像のものなのかは謎のままです。
映画監督の篠田正浩氏は《モナ・リザ》の背景が気になったと言います。
映画監督という仕事柄、多くの俳優を撮影をしてきた篠田氏。
実際の撮影でも背景と前景との組み合わせによって、ひとつの表情が様々な意味に取れる事があると言います。
「《モナ・リザ》は謎の微笑をたたえていると良く言われますが、背景が違ったら実は笑っていなかったかもしれない」と篠田氏は話しています。
さらに美術家の森村泰昌氏は、自らが「モナ・リザ」となり絵の中に入ることで、その魅力の秘密に迫ろうと試みました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
森村氏が再現する上で最も困ったのが、”手の表現”だと言います。
元の絵のような手のポーズをしようとした場合、奥の肩をぐっと前にださないといけなくなるのです。
そしてそのまま肩と一緒に顔もまた前に出てきてしまいます。
ですので、元の絵のようなポーズを実際の人間が取ろうとすると、かなり大変なポーズになると言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
また森村氏は科学者でもあったレオナルドが残した人体の解剖図にも注目しました。
レオナルドは人間の体の成り立ちを知るために、解剖を数多く行いました。
彼が特に興味を持ったのが、「生命誕生の神秘」でした。
そこで森村氏はモナ・リザの衣服の下に、「新たな生命があるのでは?」と考えました。
見る者が謎を見つけ、無限に空想を広げられる絵の豊かさ。
それこそが《モナ・リザ》が長きにわたり、人々を惹きつける理由だと言います。
素晴らしい絵画と言うのは、これだけ作品が生まれてから時間が経っているにもかかわらず、幾らでも皆がそれについて語ることができるものなのかもしれません。
今回の記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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