2023年9月10日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【“実物大”で迫る!レンブラント「夜警」】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回の記事はパート2になります。
パート1の記事はこちらからご覧ください☟
【日曜美術館】レンブラント《夜景》①【美術番組まとめ】
《夜警》の細部
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
画家としての絶頂期を迎えたレンブラント。
《夜警》はその頃に火縄銃手組合から依頼を受けて描かれた作品です。
躍動感のあるポージングで人物を配置し、劇的な明暗表現を取り入れています。
それにより画面全体がこちらに迫ってくるような迫力を表現しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この作品の中で一際存在感を放つこの少女。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その腰元をよく見てみると、ニワトリが吊るされています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
じつはこのニワトリは、火縄銃手組合の一つのシンボルなのです。
こちらの別の画家の火縄銃手組合をモデルにした作品にも、ニワトリのモチーフが画面右上(鏡の中)にさりげなく描かれています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
レンブラントはそのシンボルマークを、さりげなく画面に登場させているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
8Kで撮影した映像ではここまで近づいて、かつ綺麗に見ることができます。
少女の耳には真珠の耳飾りがあり、頭にも装飾品があるのが見て取れます。
この少女の顔立ちは、レンブラントの妻のサスキアによく似ているといいます。
サスキアはこの《夜警》が完成する直前に亡くなってしまいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
次に画面の上部を見ていきます。
画面中央より少し右の部分に、楕円形の飾りのようなものが見えます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ここにはこの作品の発注者の名前が書かれているといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
絵画の世界観を崩すことなく、クライアントにも配慮したレンブラントの見事な表現です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
次に後列の男性陣を見ていきます。
じつはここに作者のレンブラント自身が描きこまれているといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
それがこちらの目だけ見えている男性です。
よく見るとこの男性だけ、瞳に白いハイライトが入れられ、特徴的な眼差しになっているのがわかります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
最後に隊長のこちら側に差し出す手と、その手の影について見ていきます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
手の部分はまるでトリックアートのように、こちらに飛び出しているように見えます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その手の影は、隣の人物の服の装飾部分に重なっており、さらにその陰の指先をよく見ると何か記号のようなものが見えます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
×印が3つのこちらのマークです。
じつはこのマークはアムステルダム市の紋章なのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この紋章は今でもアムステルダム市内で見ることができます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
なぜ3つの×印が紋章になったのかは、はっきりと分かっていません。
一説には、アムステルダムが乗り越えてきた3つの災害(洪水・大火・疫病)を表しているといわれます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
市民警備隊の手の影が、アムステルダムを守るように包み込んでいます。
作品の中ではわずか数センチの部分ですが、ここにレンブラントは大切なメッセージを込めたのかもしれません。
レンブラントは鑑賞者がこの部分に目が行くように、更なるこだわりを残していました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
レンブラントの作品を約20年間、科学的に調査してきたペトリア・ノーブルさん。
ノーブルさんによると、近年の調査でこれまでに検出されなかった鉛化合物が見つかったといいます。
このことから一つの仮説として、顔料を溶くための油に酸化鉛を混ぜていたことが考えられるといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こすうることで絵の具の粘着性が増し、この部分のような厚塗りができたと考えられます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
さらに今回の調査では、白い服の副隊長のジャケットの部分から他のレンブラント作品では検出されなかったパラ鶏冠石という顔料が見つかりました。
この顔料はヒ素を含んだ毒性の高いものです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この毒性の高い顔料に用いた背景には、”それまでにない豪華さを絵画で表現したい”と思ったからだと考えられます。
晩年のレンブラント
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《夜警》を描いて以降、順風満帆だったレンブラントの画家生活に陰りが見え始めます。
妻サスキアの死のショックから描く作品数は激減。
またプライベートでは2人の女性と関係を持ちトラブルとなり、裁判沙汰にまで発展します。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
さらには経済的にも困窮してしまいます。
その理由の一つに、レンブラントの浪費癖があったと考えられています。
レンブラントは世界中の美術品や珍しいものを買い集め、それらを創作のヒントにしていました。
その出費が生活を圧迫していたのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
では描いた作品はどのようになっていったのでしょう?
こちらは55歳の頃の自画像です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《夜警》のジャケット部に見られたような細密表現はありません。
背景も簡略化されています。
頭にかぶっている帽子には、筆跡がくっきりと残っています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは最晩年の作品です。
手を重ね寄り添う二人が、まるで浮かび上がるように表現されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
近くで見てみると、筆跡だけでなく絵の具の固まりまでも残っているのがわかります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
男性の右袖はものスゴイ厚塗りで、光り輝いています。
見る人は二人の存在感を感じるとともに、それが絵の具であることも感じられるのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
あのゴッホもこの作品を見た感動を残しています。
今回の記事はここまでです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。