2023年11月22日にNHKにて放送された「歴史探偵」の【天下の名香 蘭奢待(らんじゃたい)】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
毎年秋に奈良国立博物館で開催される「正倉院展」。
2023年に開催された第75回正倉院展は、17日間という短い開催期間にもかかわらず、約11万5千人の来場者数を記録しました。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
今回取り上げるのは、正倉院宝物の中でも最も名高いお宝といわれる『蘭奢待(らんじゃたい)』です。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
蘭奢待は香木と呼ばれる木で、火にくべたり焚いたりすることで良い香りを放ちます。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
蘭奢待が収められている正倉院は東大寺の倉として建てられたもので、聖武天皇ゆかりの品など約9,000件が収められています。
また蘭奢待は足利義政、織田信長、そして明治天皇といった歴代の天下人に求められ、その香りは”天下無双の名香”と呼ばれました。
なぜ蘭奢待はそれほどまで大切にされてきたのでしょうか?
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
蘭奢待という名前は通称で、正式名称は『黄熟香(おうじゅくこう)』といいます。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
ではなぜ蘭奢待という通称がついたのか?
これには諸説ありますが、蘭奢待は元々お寺の名前そのままに”東大寺”と呼ばれていたといいます。
しかし香木は火で焚きますので、”東大寺”と名の付くものを火で焚くのは縁起が悪いということで、「蘭奢待」という名前をつけてその中に「東大寺」の文字を隠したのです。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
他の正倉院宝物が一目で煌びやかな印象なのに対して、蘭奢待は一見すると、ただの木に見えます。
そんな蘭奢待がなぜ正倉院イチ名高いお宝といわれるのか?
その理由について深堀りしていきます。
”最高峰の香木”に迫る
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
北倉・中倉・南倉の3つの区画からなる正倉院。
蘭奢待は中倉に保管されてきました。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
正倉院事務所で蘭奢待の調査が行われています。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
内部は空洞になっており、鍾乳洞のような独特な雰囲気です。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
表面は黒っぽい色になっていますが、この部分は樹脂がたまっている部分です。
ここに香りの成分が含まれていて、熱を加えることで樹脂が揮発し、良い香りが発せられるのです。
蘭奢待が大事にされてきたのは、この”樹脂”が日本では手に入らないものだからでした。
というのも樹脂が表面に出るような木は日本には自生していないのです。
蘭奢待は科学調査の結果、ラオスやベトナム原産であることが分かっています。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
蘭奢待のように香りの高い香木は沈香(じんこう)と呼ばれ、それらは東南アジアなどのごく一部の山岳地帯だけでしか採ることができません。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
こちらの木の内部の黒くなっている部分が樹脂です。
樹脂はどんな木でもあるものではなく、表面にできた傷などが原因で偶然的にできるもので、その確率は数百本に一本ともいわれています。
今ではその多くが伐採されており、ほとんど手に入らないといわれています。
まさに自然が生んだ”奇跡の産物”なのです。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
蘭奢待も東南アジアのどこかで採られたのち、日本にもたらされたと考えられます。
それ以外にも蘭奢待が正倉院宝物の中で特別なものである理由があります。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
それがこちらの付箋です。
左が織田信長、右が足利義政です。
この付箋はこの2人によって切り取られた箇所に目印としてつけられたものです。
こんな歴史上の人物の名前が付いている宝物は他にないですよね!
足利義政と香文化
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
信長の時代からおよそ110年前、蘭奢待を切り取ったのが室町幕府八代将軍の足利義政です。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
銀閣を建てたことで知られる足利義政。
応仁の乱で京の都が焼け野原となる中、政治の表舞台から離れ、芸術を嗜みました。
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義政は茶道や華道、そして蘭奢待にも深く関わる香道・香文化の礎を築いたといわれています。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
香道の流派の一つである志野流。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
志野流の祖である志野宗信は足利義政と親交がありました。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
香炉の中で温めた灰の上で小さな香木を熱し、立ち上る香りを感じます。
香道では香りを嗅ぐことを「聞く」と表現し、その行為を「聞香(もんこう)」といいます
また香道には「六国五味(りっこくごみ)」という教えがあります。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
「六国」は香木を品質の違いで6つに分類したものです。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
「五味」は「甘い・苦い・辛い・酸っぱい・塩辛い」の五つの香りの表現です。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
足利義政の元で志野宗信らが香の作法を制定し、六国五味もその中で生まれました。
香の文化は平安時代から既にありましたが、義政の時代にルールや作法が決められ、楽しみ方も統一されたのです。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
香を嗜み、様々なルールを決めた義政は優れた香木の調査を命じたといわれています。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
その調査の後、『六十一種名香』という香木のリストがつくられました。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
この『六十一種名香』で最上級に位置付けられたのが蘭奢待でした。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
その香りは五味の全てを兼ね備えていると記載されています。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
江戸時代には『六十一種名香』は香道には必須の香木リストとなり、一般大衆にも広まっていきます。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
蘭奢待は多くの人に知られる最高の香木、宝物として憧れの的になったのです。
”月見香”を体験
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
番組では「月見香(つきみこう)」と呼ばれる、遊戯性のある組香(くみこう)が行われました。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
まず初めに「月」と呼ばれる1つの香りを聞き、それを覚えます。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
その後3つの香りを聞き、最初に聞いた「月」と同じかどうかを当てていくものです。
同じだと思った場合は「月」と答え、違うと思った場合は「客」と答えます。
画像出展元:テレビ番組「歴史探偵」より
「月」と「客」の組み合わせでそれぞれ答え方が異なります。
全て「月」の場合は”十五夜”となり、逆に全て「客」の場合は”雨夜”となります。
答え方も風流があって素敵ですね!
今回の記事はここまでになります。
パート2の記事へと続きます。
【歴史探偵】蘭奢待②【美術番組まとめ】
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[…] 今回の記事はパート2になります。 パート1の記事はこちらかあご覧いただけます☟ 【歴史探偵】蘭奢待①【美術番組まとめ】 […]