2020年7月5日にNHKで放送された「日曜美術館」の【蔵出し!西洋絵画傑作15選(1)】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
シリーズで放送されている「蔵出し!傑作選」。
今回からは西洋絵画の作品を取り上げていきます。
『ラスコーの洞窟壁画』
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
人間が地球に誕生して初めて絵を描いた場所、それは暗闇が支配する洞窟でした。
岩肌にはバイソンや鹿、馬などの動物600頭がダイナミックに表されています。
『ラスコーの洞窟壁画』はフランスの南西部にあります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
描かれたのは今から1万7,000年前で、旧石器時代のクロマニョン人が描きました。
日本でいう縄文時代よりも前の時代です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
壁画には描いた人たちが持っていた高い技術が見られます。
一見すると一頭の牛に見えるこの絵、じつは手前に赤い雌牛とその奥に角を持った黒い雄牛が描かれています。
絵に奥行きが表現されているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
また洞窟という凹凸のある空間を巧みに利用しています。
こちらで描かれている馬は、前足が岩の角を飛び越えるように表現されています。
人類進化学者の海部陽介氏によると、描かれている動物たちは写実的であるようで、実はそうではないと言います。
それは色と、動物それぞれの大きさの比率が実物とは異なるというのです。
つまり、見たそのままの世界をクロマニョン人は描いていないのです。
洞窟という平面ではない空間に、デフォルメされたり天地逆転した動物たちが描かれ、それらが見る者を圧倒するのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
では1万7,000年前のクロマニョン人はどのようにして壁画を描いたのでしょう。
世界各地の洞窟壁画を調査してきた考古学者のミッシェル・ロルブランシェ博士によると、先ず口の中に炭の塊を噛み崩し、それを唾液と混ぜます。
それを壁に吹き付けて色を付けていったといいます。
この方法はオーストラリアの先住民アボリジニの手法からヒントを得ました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
このように顔料を吹き付ける技法をプロジェクション(投影)といいます。
この方法を最初に用いたのは旧石器時代の人たちだったのです。
真っ暗闇の洞窟に描かれたこれらの壁画は、光が当たらなければ見る事ができません。
つまり通常は見えない形で潜在しているのです。
そしてその潜在しているものに命を与えるのが「光」という事になるのです。
「光」を近づけた時に初めて壁画が現れる、「描くというよりそれ以前の何か行為」と言えるのではないでしょうか。
壁画を描いた目的
では、当時の人たちは何のためにこの壁画を描いたのでしょうか。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
考古学者のジャン・クロット博士は描かれている動物が皆大型動物のみで、植物や昆虫、日々の暮らしなどは描かれていない点に注目しました。
つまりこの壁画には「日常の暮らし」を表現する意図はないと考えられるのです。
博士は壁画を描く目的は「超自然的な力とのコミュニケーションの方法」であったと考えています。
当時の人間は他の動物たちの存在の中に埋もれていました。
人間の方がちっぽけで、動物たちの方が偉大な存在だと考えていたのです。
そんな小さな存在の人間は、当時の世界を生き抜くために人間を超える”何ものかの力”を求めたのです。
そこで大型動物に自分たちの求める超自然的な力が備わっていると信じて、壁画に残したのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
描かれた動物たちを通じて、動物の精霊とのコンタクトを図り、その力を得ようと考えたのです。
また、写真家の港千尋さんは『ラスコーの動物壁画』について、「”芸術”という言葉を使えなくなっていく」と言います。
すなわちこの壁画には、”芸”もなければ”術”もなく、”芸や術が生まれる以前のもっと大切なものの表現”があるというのです。
1万7,000年前から描かれ始めた壁画は1万年前を境に描かれなくなっていきます。
気候の変化からマンモスやトナカイは北方へと移動していったのです。
『ショーヴェ洞窟の壁画』
ここで番組では触れませんでしたが、もう一つフランスの有名な原子の時代の壁画をご紹介します。
画像出展元:wikipedia「ショーヴェ洞窟」より
こちらが『ショーヴェ洞窟の壁画』です。
現在、我々の見る事のできる最も古い美術と言われており、今からおよそ3万2千年前に描かれたとされています。
(ラスコーの洞窟壁画は1万7千年前なので、それよりも古い事になります)
描かれているのはラスコーの洞窟壁画と同様に、サイや野牛などの動物です。
画像出展元:wikipedia「ショーヴェ洞窟」より
まとめ(美術検定対策)
描かれた時期:今からおよそ1万7,000年前
場所:フランス南西部
描かれた時期:今からおよそ3万2,000年前
場所:フランス南東部
過去の美術検定では、壁画の一枚が表され、どこの洞窟壁画か問われる問題がありました。
もちろん壁画を見て、どこのものか分かるのがベストですが、見たことのない壁画だと正直判断が難しいです(僕の場合は)。
そこで判断基準となるのが、描かれた時期と場所です。
その時の問題文にも「フランス南西部にある洞窟に描かれた~」の一文で『ラスコーの洞窟壁画』だと分かりました。
美術検定を受験される方は覚えておくと良いポイントだと思います。
今回の記事は以上になります。
続くパート2では、「蔵出し!傑作選」の2作目と3作目、ポンペイ壁画『ディオニュソスの秘儀』と《貴婦人と一角獣》についてまとめています。
こちら☚からご覧頂けます。
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