2025年2月25日にテレビ東京で放送された「開運!なんでも鑑定団」の【江戸時代の医学解剖書「解体新書」】と【渡辺崋山の掛け軸】についてまとめました。
番組内容に沿って、それでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
*画像出展元:テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」より
医学の発展のために! 「解体新書」誕生秘話
『解体新書』は1774年、日本で初めて発行された本格的な西洋医学翻訳書である。
原書はドイツ人医師クルムスが著した『解体図譜』のオランダ語版である『ターヘル・アナトミア』。
人体構造を細かく記した解剖学書だが、日本では長らく解剖が禁止されており、人体はまさに”未知の世界”であった。
小浜藩の藩医だった杉田玄白が藩主に頼み込み、当時非常に高価だったこの洋書を手に入れたのは39歳の時。
その解剖図を見るや、天地がひっくり返るほどの衝撃を受けた。
それまで学んだ五臓六腑とはまったく異なっていたからである。
そこですぐさまこの図が正しいのかを確かめるべく、後輩の中川順庵、中津藩の藩医の前野良沢と共に、ある罪人の解剖を見学した。
杉田玄白らはその正確さに驚嘆し、それと同時に強い反省の念が込み上げた。
「基本的な人の体の中も知らずに医者をしていたとは面目なき次第」。
3人は翻訳を決意し、”善は急げ”と翌日から作業を開始したのであった。
とは言え、玄白と淳庵はアルファベットすら読めず、良沢は長崎への留学経験があったが単語を知っている程度であった。
オランダ語の辞書もなく、翻訳は困難を極めた。
例えば、丸一日かけて解読した文章が「眉は目の上に生えた毛である」だったことも。
意味はわかるが、当てはまる言葉がないものには新語を創作した。
「神経」もその一つで、これは漢方医学の「神気(しんき)」と「経脈(けいみゃく)」を組み合わせたものである。
またどうしても訳せない単語には、「この語 解せず」と正直に記した
さらに、翻訳以外にも大きな問題があった。
図の模写である。
当時、日本にこの細密画を描ける者はそういなかった。
そこで白羽の矢が立ったのが秋田藩主・小田野直武である。
かの平賀源内に西洋画法を学んだ小田野は、玄白の期待に応え、細部に至るまで正確に模写。
小田野はわずか半年ほどでこの難題を成し遂げたのであった。
実は『解体新書』の図版は「ターヘル・アナトミア」以外の洋書からも引用されている。
図の横のマークはその出典を表している。
今でいう参考文献を表記した形で、極めて先進的かつ良心的といえよう。
玄白は、「翻訳ができる頃には、自分は草葉の蔭(くさばのかげ)にいるだろう」と何度も弱音を吐き、ついには仲間から「草葉の蔭」とあだ名されるほどだった。
しかし玄白の「一日も早くこの本を多くの医者に読ませたい」との思いはすさまじく、なんとおよそ3年で翻訳を完了。
かくして1774年『解体新書』は序図1巻・本文4巻の全5巻で発行された。
しかし、その発行人の中に共に尽力した前野良沢の名はない。
実は良沢は翻訳が未熟であることを理由に発行を渋り、「自分の名は載せてくれるな」と申し出たのである。
もちろん玄白も完成度が決して高くないことは百も承知で、後年次のように語っている。
「この世に良沢という人がいなかったら、この蘭学の道は開けなかったであろう」
「また一方、私のような大ざっぱな人間がいなければ、この道はこれほどまでにすみやかに開けなかったであろう」
改めて依頼品を見てみよう。
『解体新書』の序図の巻である。
表紙はかなり傷んでいるが、中は汚れもなく非常に状態がいい。
日本医学の発展はこの『解体新書』から始まったと言っても過言ではなく、発行当時のものであれば資料的価値は極めて高いが…
果たして鑑定やいかに?
「解体新書」序図 出版初期の貴重本 50万円!

50万円!
「1774年に杉田玄白らが発行した『解体新書』に間違いありません」
「『解体新書』は木版刷りです。版木はこの一つしかありません」
「これはよく見ると、細かい線が非常にくっきりと出ておりますので、最初の刷りのグループだと思います」
「表紙も元の表紙の状態ですので、大変貴重だと思います」
「徳川吉宗の時代に洋書解禁ということになったんですが、この本を出版することは大変な冒険だったんですね。幕府の通訳者ですら、オランダ語の会話がおぼつかない時代に、これをよくゼロから翻訳して行ったかと思うと、すごいことだと思います」
渡辺崋山の掛軸
依頼人が10年前にネットオークションで一目惚れし、購入したもの。

2万円!残念!
「渡辺崋山の掛け軸、偽物です」
「もう全体的に非常に絵が硬いんですよね」
「芙蓉の花は縁取りをして色を塗っている感じ。そういうのはあり得ない」
「渡辺崋山は没骨法という輪郭線を描かずに、
面で柔らかく描くのがその書き方」
「この印、ぼやけてますでしょ?やっぱりね、良いものってもうしっかりした印なんですよ」
今回の記事はここまでになります。