2017年7月9日にNHKで放送された「日曜美術館」の【肖像画に秘められた思い~宮廷画家アルチンボルド】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧ください。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
花絵師・藤川氏による《春》の再現
アルチンボルドが描いた連作『四季』の中の一枚、《春》。
80種類の実在する花々で描かれたこの作品を、実際に表現することは可能なのでしょうか?
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
番組では、花絵師として活動する藤川靖彦氏が《春》の再現に挑戦しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
藤川氏は大地の上に花を敷き詰めて、巨大なアートを作る”インフィオラータ”の第一人者です。
その作品は海外でも高く評価され、ローマ法王からの絶賛を受けるほどです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
藤川氏を作品を見て、《春》は生花を実際に置いて作ったようなイメージに近いといいます。
それではアルチンボルドは実際に花を並べて、《春》を完成させたのでしょうか?
それがどうやらそうでもないようで…
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
肌を構成する花々を最初に敷き詰め、その上に各部のパーツとなる花を置いていきます。
しかし段々と全体のバランスが崩れていってしまいます。
その理由は”花それぞれの形”にあると言います。
アルチンボルドの作品の中の花は全て綺麗に開いていますが、実際の花は曲がっていたり歪んでいたりと、形がそれぞれ違うのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
またこちらの口元の部分に置かれている花は、平面上に実際に置く事のできない向きで置かれているといいます。
花は立てるか、横向きに置くかしかできなく、絵のように微妙な位置で置き留めることはできないのです。
花の大きさも実際のものと異なっているので、「アルチンボルドはイメージ(頭)の中で花を自由に縮尺を変えながら置いていった」藤川氏は言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
以上の理由から、アルチンボルドは実際に花を並べて《春》を描いたのではないと藤川氏は結論付けました。
彼の頭の中にまるでコンピューターが入っているかのごとく、画像を的確に処理して、縮小したり角度を変えたり、ミックスさせて画面を造り上げたのです。
実際に再現できないからこそ、凄いのですね!
更に藤川氏がもう一つ驚いた点がありました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
それが頬の部分に置かれたバラの花です。
普通に考えると、頬というのはコブがあるわけではないので、ここにバラを配置する必要はないといいます。
しかしここにバラを置くことで、人物の微笑みをより効果的に表しているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
上の画像は処理ソフトを使って、頬のバラを取り除いた状態です。
この状態ですと、バラがある時に比べて微笑の印象が薄くなったのが分かります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
アルチンボルドは花々を巧みに配置して、その表情をより豊かなものにしたのです。
花を描くのが得意な画家というのは、アルチンボルドの他にも数多くいた事でしょう。
しかしアルチンボルドは花々の一つ一つを正確に描くテクニックにプラスして、人の顔に見えるように画面を構成する発想力、そして想像力を駆使してこの作品を描いたのです。
《夏》に見られるリアリティ
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《春》の次の季節である《夏》では、上の画像のように首筋の所にウリ科の野菜が見えます。
じつはこの野菜の配置も、当時の解剖学の知識を正確に取り入れているのです。
すなわち、実際のヒトの筋肉のつき方や、筋の流れという所までアルチンボルドは表現しているのです。
野菜や果物をデタラメに置いて、人物を表しているいるという訳ではないというのが、アルチンボルドの更に凄い所なのです。
連作『四大元素』
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
アルチンボルドは『四季』の連作の後に、『四大元素』という同じく4枚からなる連作を手掛けています。
《大気(Air)》
ジュゼッペ・アルチンボルド(?)
スイス、個人蔵
空を飛ぶ鳥で描かれた《大気》。
《火(Fire)》
ジュゼッペ・アルチンボルド
スイス、個人蔵
燭台や大砲、導火線など火にまつわるもので描かれた《火》という作品です。
そのタイトル通り、頭部は炎で燃え上がっています。
《大地(Earth)》1566年(?)
ジュゼッペ・アルチンボルド
リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
パッと見てまず目に入るのは、耳から頬にかけて描かれたゾウです。
首は牛の背中で表わされ、肩には毛皮になったライオンが見えます。
この《大地》という作品は、まさに大地に生きる動物たちの姿で全体が構成されています。
花などであれば平面的に貼っていく事で画面を構成できますが、動物は立体的で四本足ですので、それを組み合わせてちゃんと人の顔に見せるというのは、かなり高い技量がうかがえます。
《水(Water)》1566年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ウィーン美術史美術館 絵画館
魚だけでなく、カメやカエルなど水辺に棲む動物たちで描かれた《水》。
その数は全部で約60種類に及びます。
サンゴや真珠で装飾品が表されているのも特徴的です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この時代、世界は「大気」「火」「大地」「水」の4つの物質から構成されていると考えられていました。
アルチンボルドは『四季』同様に、それらを関係のある動物やモチーフで擬人化して、時の皇帝に献上しました。
『四大元素』と人の性格
また、この時代のヨーロッパでは世界が4つの元素から構成されるのと同じように、私たち人間も4つの性格を持っていると言われていました。
例えば《火》という作品はその点が分かりやすく示されています。
ここでは「短気・怒りっぽい・情熱的」といった人間の性格が表されています。
《水》は、人間の性格でいうと「粘着質・優柔不断さ」が表されています。
『四季』の中の《春》と結びつく《大気》はその名の通り、「軽やか・朗らか・陽気」な性格を表現しているといわれます。
《大地》は「内に込められたメランコリック(物思いにふける様子)」な性格だと言われています。
アルチンボルドはこのように『四大元素』と性格の結びつきというものを考えて、それとなく表情に忍ばせたのではないかと考えられます。
それではなぜアルチンボルドは様々な動物を使って、これら『四大元素』を描いたのでしょうか?
そもそもヨーロッパの内陸、ウィーンに暮らすアルチンボルドはこれらの動物を実際に見る事ができたのでしょうか?
続きのパート3ではその秘密についてまとめていきます。
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コメント
[…] 今回の記事は以上になります。 続くパート2では、「実際の花々を使ってアルチンボルドの作品は再現できるかどうか」についてまとめてまいります。 こちら☚からご覧いただけます。 […]
[…] 今回の記事はパート3になります。 前回のパート2はこちら☚からご覧ください。 […]