2017年7月9日にNHKで放送された「日曜美術館」の【肖像画に秘められた思い~宮廷画家アルチンボルド】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
画家ジュゼッペ・アルチンボルド
アルチンボルドは1526年のイタリア・ミラノで、画家である父ビアージョ・アルチンボルドと母キアーラ・パリシの息子として生まれました。
画家をしていた父親の影響を受けて、アルチンボルドも若いころから美術の世界に身を投じます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
アルチンボルドの名前が最も早く登場するのは、ミラノ大聖堂の公文書です。
そこには23歳の時に、父親と一緒にステンドグラスなどの絵画の下絵を制作した、と書かれています。
そんな彼の転機となったのは36歳の時でした。
ハプスブルク家の宮廷画家として、ウィーンそしてプラハに向かう事になりました。
当時ハプスブルク家はヨーロッパの広大な領土を支配し、全盛を極めていました。
アルチンボルドは、フェルディナント1世、マクシミリアン2世、ルドルフ2世と3代の皇帝に宮廷画家として仕えます。
その中でも最も長く仕えたのが、マクシミリアン2世でした。
その年数は12年間に渡り、その間作品を献上しました。
また、アルチンボルドは絵を描くだけにとどまらず、様々な祝祭行事や余興の衣装などの創案も任されていました。
連作『四季』
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そんな皇帝から揺るぎない信頼を得るきっかけとなったのが、アルチンボルドの代表作でもある連作『四季』でした。
皇帝にたいへん気に入られたこの連作は、1562-63年に最初の連作が作られた以降も、何度もセルフコピー版が描かれました。
ですので『四季』の作品は世界中の美術館に何点か存在します。
《春(Spring)》1563年
ジュゼッペ・アルチンボルド
スペイン・マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵
こちらの《春》はユリやバラなどの花々で人物が表現されています。
当初描かれたオリジナル版は失われており、こちらは2番目に描かれたものになります。
《夏(Summer)》1572年
ジュゼッペ・アルチンボルド
アメリカ、デンヴァー美術館蔵
《夏》には野菜や果物などが使われています。
2017年の「アルチンボルド展」ではアメリカのデンヴァー美術館が所蔵するものが展示されていましたが、こちらは後に作られたセルフコピー版です。
最初に描かれたオリジナル版は現在ウィーン美術史美術館に収蔵されています。
《秋(Autumn)》1572年
ジュゼッペ・アルチンボルド
アメリカ、デンヴァー美術館蔵
《秋》はブドウや麦の穂で、壮年の男性が表現されています。
全体に落ち着きのある色彩が特徴です。
最初に描かれた《秋》は残念ながら消失してしまっており、また現存するものも2点(デンヴァー美術館・ルーヴル美術館)しかないため、《秋》を鑑賞できるのはたいへん貴重です。
《冬(Winter)》1563年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ウィーン美術史美術館 絵画館
《冬》は他の3作とは若干異なり、顔全体が古木で表現されています。
ウィーン美術史美術館に所蔵されているこちらのバージョンがオリジナルで、他にもルーヴル美術館やミュンヘンのバイエルン州立絵画コレクションに収蔵されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
アルチンボルドは四季を通じて繰り返される時の流れ、そしてその永遠性にハプスブルク家の繁栄を重ね合わせて表現したのです。
《春》
『四季』の連作の中でも、傑作の呼び声が最も高いのがこちらの《春》です。
人物を構成するのは、80種類の花や草木です。
至近距離で見てみると、まるで花の匂いまでこちらにしてきそうなほど、緻密に描かれているのが分かります。
落語家の立川志らくさんが気になったのは後頭部にあるユリの花だといいます。
「春」と聞くと、どこか抜けたような、”ほわ~”としたような所がありますが、それがこのユリで表わされているといいます。
確かにこのユリの花を隠して《春》を見てみますと、また違った雰囲気になるのがよく分かります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
大阪大学准教授の桑木野幸司さんも、この《春》が大好きな作品だといいます。
この作品の持つ華やかさは、”春の庭園”を彷彿とさせるといいます。
描かれている人物に特定のモデルはいなく、あくまで”春”という季節の擬人像だと言われています。
アルチンボルドは「”春”という季節を一番連想させるもの=花」と考え、この作品を描きました。
現代の我々が見ても、”春”だなと一目で分かります。
立川志らくさんは「この絵は小さい子どもが見たって喜ぶと思う」と言います。
一般に「美術」と聞くと、敷居が高い・難しい・専門家でなければ分からないなどと敬遠される事がありますが、子どものうちにこの《春》のような作品を見ておくと「これ面白い!」という感動を味わうことができ、ここから絵の世界に入っていくことができると立川氏は述べています。
一方で見方を少し変えてしまうと、グロテスク(悪趣味)に見えてきかねないのがアルチンボルドの作品です。
しかし、グロテスクとは捉えられない、そのギリギリの所で一つの美に昇華させているというのは「センスが素晴らしい」の一言に尽きます。
連作『四季』が描かれた当時の時代背景
この作品が描かれた16世紀の後半は、「黄金のルネサンス時代」終わりを迎えた時代でした。
ですのでルネサンス期に活躍したミケランジェロやラファエロと同じことをやっても評価がされない時代だったのです。
そこでアルチンボルドは「過去の巨匠たちがまだやっていないこと」に挑戦したのです。
見た人を驚かせようと考えたアルチンボルドは、この《春》という作品で花を使って人物を表現したのです。
アルチンボルドが生み出したのは、誰かの真似ではないオリジナルであり、そして誰も真似できない独創性に満ちた作品だったのです。
今回の記事は以上になります。
続くパート2では、「実際の花々を使ってアルチンボルドの作品は再現できるかどうか」についてまとめてまいります。
こちら☚からご覧いただけます。
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[…] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1はこちら☚からご覧ください。 […]