2019年6月8日にテレビ東京にて放送された「新美の巨人たち」の【長沢芦雪「虎図」】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
今にも飛び掛かってきそうな、迫力満点の虎。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
描いたのは長沢芦雪(ながさわ ろせつ)。
江戸時代中期、京都で活躍した天才絵師です。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
この作品があるのは、和歌山県の串本町。
海沿いの光あふれる町です。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
駅から歩いて10分ほどの場所にある臨済宗の古刹、錦江山(きんこうざん)無量寺(むりょうじ)。
その境内の「応挙芦雪館」という小さな美術館に《虎図》はあります。
重要文化財《虎図》
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
「日本で最も大きな虎の絵」と言われているこちらの作品。
縦180センチ、横幅約100センチのふすま6枚に描かれた作品です。
目の前に獲物を見つけたのでしょうか。
足をピタリと止め、姿勢を低くした、まさにその瞬間が描かれています。
今にも襖から飛び出してきそうな迫力に溢れていますが、顔つきなどはどこか愛らしさも感じられます。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
ゲストの井浦新さんはこの作品について、「本当に迫力ある。こんなに大きな虎なのに、端から端まで筆の早さを感じる」と言います。
重要文化財《龍図》
この《虎図》の向かい側には…
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
こちらも重要文化財、《龍図》があります。
吹き荒れる嵐のなかを龍が舞っています。
鋭い牙、どう猛な爪が特徴的です。
こちらの《虎図》同様、ものすごい勢いで描かれているのが分かります。
絵師 長沢芦雪(1754-1799)
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
長沢芦雪は1754年、丹波国の篠山藩(ささやまはん)の下級武士の家に生まれたと言われています。
しかし詳しいことは分かっていません。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
芦雪はの絵の師匠は、京の画壇に君臨した円山応挙でした。
円山応挙はそれまで日本画の主流とされてきた「狩野派」の流れから、いわば一大転換するくらいの型破りの絵師でした。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
芦雪は応挙の写生の技術を徹底的に学び、弟子ながら、時には”応挙の腕前を超える”とまで言われました。
なぜ「虎図」は生まれたのか?
じつは無量寺は、1707年に起きた大地震とその津波により全壊してしまっていました。
再建されたのは、それから約80年後の1786年。
愚海(ぐかい)という僧によってでした。
同年、愚海は円山応挙の元を訪ねます。二人は古くからの友人だったのです。
そして二人の間には一つの約束がありました。
「愚海が寺を建てた時には、応挙は絵を描く」と。
しかし応挙はどうしても都合がつかず、代わりに無量寺に派遣されたのが当時33歳の芦雪でした。
派遣された和歌山の串本で、芦雪の才能が大爆発するのです。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
そして誕生したのが、この《虎図》です。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
至近距離でこの《虎図》を見ると、非常に勢いのある筆で毛並みが描かれているのが分かります。
井浦新さんは「この筆運びはゆっくり描いてはいられない。相当早く描いてますよ。3…40分もかかってないような」と言います。
実物大で再現!
芦雪は《虎図》をどのようにして描いたのでしょう。
番組では水墨画家の大竹卓民氏が実物大での再現を行いました。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
大竹氏によると、芦雪はこのように紙を立てた状態で、《虎図》を描いたといいます。
まず初めに木炭で下図を描きます。
そこに濃さの異なる墨、大きさの違う丸筆と数種類の刷毛を使って描いていきます。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
最初に描き始めるのは、目の部分。
そこから全体のバランスが決まります。
筆の向き・描く方向は虎の構造(骨格)に従って描かれています。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
短い毛並みは刷毛を使って描きます。
大竹氏は芦雪の筆さばきについて次のように話します。
「筆さばきが早いといっても、実際に描く時はそうでもない。早すぎると一本一本の毛が出ません。紙が墨を留めてくれない。しかし、そのスピード感を感じさせる、それが芦雪の面白いところ」
”裏”に描いた 驚きの仕掛け!
じつはこの《虎図》、裏に驚きの仕掛けがあったのです。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
「虎図」の裏側には、《薔薇に鶏・猫図》と題されたこちらの作品が描かれています。
画面左側、岩肌から野薔薇の枝が伸びています。
枝の先では2匹の猫がまどろんでいます。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
その奥の水辺では子猫が何かを狙っています。
その視線の先には…
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
魚です。鮎でしょうか?
そして、この魚の視点から子猫を見てみると…
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
そう、《虎図》の虎ということになるのです!

これはすごい仕掛けですね!!
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
「『虎図』といえば、裏の猫と魚っていうのは、これもうセットですか。『虎図』だけじゃないですからね」(井浦新氏)
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
まさに表裏一体。芦雪の洒脱な遊び心が生きているのです。
画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より
そうなると、こちらの『龍図』の裏側も気になるところです。
裏には一体何が描かれているのでしょうか…
この続きはパート2にて。
【新美の巨人たち】長沢芦雪「虎図」②【美術番組まとめ】
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[…] 今回の記事はパート2になります。 前回の記事はこちら☚からご覧いただけます。 […]