【日曜美術館】北宋書画精華③【美術番組まとめ】

日曜美術館

2023年11月19日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【北宋絵画 ベールを脱ぐ中国芸術の最高峰】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回の記事はパート3になります。
※前回のパート2の記事はこちらから☟
【日曜美術館】北宋書画精華②【美術番組まとめ】

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重要美術品《五馬図巻》李公麟

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

今回取り上げるのは、展覧会のメインビジュアルにもなっている作品です。

李公麟(りこうりん)の《五馬図巻(ごばずかん)》です。
李公麟北宋を代表する文人画家で、また科挙に合格し中央官僚まで登り詰めた経歴も持ち合わせています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この《五馬図巻》は、李公麟の傑作として古来から有名な作品で、西域諸国から北宋に献じられた五頭の名馬が描かれています。

五馬図巻》は清朝滅亡後に日本に流出、実業家が所有していました。
1933(昭和8)年に重要美術品に指定されますが、その後行方が分からなくなり、先の大戦で失われたともいわれていました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

五馬図巻》は中国歴代王朝で長く大切にされてきた作品で「神品(しんぴん)」と呼ばれる、最上級のものと位置付けられてきました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは南宋時代の皇帝が所持していたことを示す「紹興(しょうきょう)」印です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そしてこちらが清朝最盛期の皇帝・乾隆帝(けんりゅうてい)が記した感想の文章です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

約80年ぶりに発見された《五馬図巻》。
それを最初に目にした板倉聖哲氏は次のようにその時の感想を語っています。

2015年に実は初めて見せて頂いた。その時には当時活躍している研究者では誰も見たことがない。なのでその責任感と、目の前にある嬉しさ・興奮というのはそれまでの経験の中でも最上級のものであった。(中略)絵の説得力やオーラというものは格別でした」(板倉聖哲氏)

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは1925年に中国で発行された五馬図の画集(清宮蔵龍眠五馬図)です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

モノクロの図版でコロタイプと呼ばれる技法で印刷されています。

この画集に残された図版を頼りに、研究者は李公麟について研究してきました。
しかし今回実物の《五馬図巻》が発見されたことで、それまでの李公麟像が覆ることになりました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

李公麟は”白描画の名手”といわれてきました。
”白描画”とは、基本彩色を施さず、筆の線だけで描かれた絵のことです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかしその”白描画の名手”の代表作といわれる《五馬図巻》が、彩色された絵であることが分かったのです。
これは専門家に衝撃を与える発見でした。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは図巻の一番最初に描かれている人物ですが、顔が少し赤らんでいます。
また髭の部分も、その毛の質感までとてもリアルに描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらの馬は一見すると茶色一色の馬のように見えますが、じつはよく見ると…

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

体の部位や筋肉の付き方に合わせて色の塗り方が変えられているのです。

ただ単に色が塗られていたという訳ではありません。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

色の表現だけで凹凸を表しているわけではありません。
こちらの馬の背中部分。一つの線の中に太い・細い・擦れといった様々な線を使い分けています。

これによって遠近表現・前後関係が表されているのです。

《孝経図巻》李公麟

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

今回の展覧会ではもう1点、李公麟の作品を見ることができます。
1つの展覧会で李公麟の作品を2点見ることができるのはかなり貴重です。

ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する《孝経図巻(こうきょうずかん)》です。
すべて墨の線によって描かれた、白描画の典型的な作品です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

儒学聖典である「孝経(こうきょう)」の18の章をそれぞれ1図ずつ絵画化したもので、老若男女、様々な人々が百数十人描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらの場面では、年老いた両親の前で、子どもたちが踊りや手品して楽しませています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは庶民が君主に謁見する場面です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この《孝経図巻》に見られる白描表現が、李公麟作品の最大の特徴だと考えられていました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

先に紹介した《五馬図巻》では、李公麟の署名や落款はありませんでしたが、この《孝経図巻》では「公麟」の文字が残されています。

このことから李公麟の真筆の書は「この作品しかない」と長らく言われてきました。
まさに”文人の在り方”としての李公麟を象徴する作品なのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

今回の展覧会では《五馬図巻》と《孝経図巻》が一つの展示室で展示されていますが、このようなことは今度二度とないといえるほど貴重なことだといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この2つの作品は中国・元時代の王芝(おうし)という収集家が所有していたと記録されています。
もしかすると《五馬図巻》と《孝経図巻》が完全に一つの空間で並ぶのは、その王芝の頃から800年ぶり…かもしれません。

今回の記事はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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