【アート・ステージ】画家が描いたパリの夜【美術番組まとめ】

アート・ステージ

2019年9月21日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【画家が描いたパリの夜】の回をまとめました。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。

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イントロダクション:パリの夜

花の都と称される、フランス・パリ。
華やかなパリの夜は多くの劇場や酒場などがあふれ、この街を訪れる旅人の心をときめかせます。

音楽とワインと恋。
画家たちもそんなパリの夜を愛し、また作品に残しました。
都会の表だけでなく裏側も、持ち前の鋭い観察眼で描いたのです。
今回は画家たちが描いたパリの夜の魅力をご紹介します。

《フォリー=ベルジェールのバー》マネ


《フォリー=ベルジェールのバー》1882年
エドゥアール・マネ
コートールド美術館蔵

パリの夜の世界を描いた傑作《フォリー=ベルジェールのバー》。
印象派の父と呼ばれるエドゥアール・マネの最晩年の傑作です。

タイトルにある「フォリー=ベルジェール」とは、パリ中心部に今でもある劇場です。
1869年にオープンして以降150年に渡って、人々を楽しませてきたミュージック・ホールです。

マネは上演されている舞台ではなく、そこのバーで働くバーメイドを描きました。

彼女の表情は、ミュージックホールの賑わいとは裏腹にどこか暗く虚ろです。
バーメイドの後方に見えるのは鏡で、そこには客席の様子だけでなく彼女の後ろ姿も描かれています。

バーメイドは「酒と愛の売人」と表現されることがありました。
彼女たちは劇場で酒を提供するとともに、自分を売る娼婦でもあったのです。
この作品には、そんな華やかな都会の表も裏も描かれています。

後方で楽しむ観客たちの上に、空中ブランコ乗りの足だけが描かれています(画面左上)。
劇場「フォリー=ベルジェール」はバレエやコンサートだけでなく、曲芸や見世物まで様々な催しが行われる場所でした。

また客席を照らす丸い照明が随所に描かれていますが、これは当時最先端のガス灯です。

鏡の中の観客席は全体的に粗いタッチで描かれているのに対して、バーカウンターの上に置かれた酒瓶などはとても丁寧に描かれています。
それらは単体の静物画としても成り立つほど、見事な出来栄えです。

画面左に置かれた赤い酒瓶のラベルには、よく見ないと分かりませんが
マネ 1888年
のサインが書かれています。
マネの遊び心が現れています。

この作品はマネ50歳の時に描かれました。
その当時のマネは病に侵されていました。
しかし彼はこの作品の完成の為に実際に「フォリー=ベルジェール」に何度も足を運びました。

さらにはモデルのバーメイドを自宅に呼び出し、自室内にバーカウンターを再現してまで作品に臨みました。
そしてこの作品が完成した翌年の1883年にこの世を去るのです。
この作品はマネの画家としての最後の大作と言えるのでしょう。

マネが愛した夜のパリ。
その光と影の間に立つ女性の表情に、彼は何を託したのでしょうか?
こちらを見つめるバーメイドにの瞳には、今なおその謎を私たちに問いかけます。

トゥルーズ=ロートレック

トゥルーズ=ロートレック(1864-1901)

ロートレックもまた、パリの夜を愛した画家の一人です。
彼が描いたミュージックホールのポスターは、今でも色褪せない魅力を放っています。


《悦楽の女王》
ロートレック
華やかな劇場を舞台に繰り広げられる、ワインと恋の夜。
都会の喧騒と快楽を描き切った彼の作品は、当時のパリのエスプリを今に伝えています。

ドガ《アプサントを飲む人》


《アプサントを飲む人》1875-76年
エドガー・ドガ
オルセー美術館蔵

カフェの壁際に並んで座る男女。
二人の視線は交わることもなく、それぞれ違う方向に向けられています。

舞台は早朝のカフェ
女性は一説には娼婦とも言われています。
その女性の前に置かれているのが、作品のタイトルにもなっているアプサントです。

アプサントは当時パリで大流行したお酒ですが、かなり強い酒で幻覚を起こす作用がありました。
多くの中毒患者を生み出し、中には命を落とす者もいたほどです。
これは当時のパリで社会問題にまで発展しました。
あのロートレックもこの酒が原因で、死期を早めたとも言われています。

ロートレックは楽しい、浮き立つパリの夜を描きましたが、ドガが描いたのは真逆の宴のあとの寂しさです。

この作品の人物の配置は、日本の浮世絵の構図から影響を受けたとも言われています。
この斬新とも言える構図は、鑑賞者にまさにその場にいるかのような臨場感を与える効果を生んでいます。また筆遣いは全体的に粗く大まかなタッチです。
それどころかテーブルにいたってはよく見ると足も描かれていません。
この状態だとまるで宙に浮いているように見えます。
ドガは細部の正確さを表現するよりも、早朝のカフェのけだるい空気感を表現するのを優先したのでしょう。この作品が発表された当初は、酷評の嵐でした。

不快極まりない下劣な絵
胸が悪くなる酔っ払いが描かれた不道徳な絵」などなど。確かに快楽と酒のおぼれた男女を描くのは、見ていて気持ちの良いものではないでしょう。

しかし、宴のあとに訪れる気怠さと虚しさ、そして都会の孤独感を見事に画面に収めたこの作品は、ドガにしか描けない作品と言えるでしょう。

コートールド美術館展 魅惑の印象派

東京・上野の東京都美術館で2019年12月15日まで開催されていた「コートールド美術館展 魅惑の印象派」。
現在は「愛知展」が開催中です。

今回の記事で取り上げた《フォリー=ベルジェールのバー》はこの展覧会で見る事ができます。

コートールド美術館とは、イギリスのロンドン大学に付属するコートールド美術研究所の美術館です
コレクションの核は、イギリスの実業家のサミュエル・コートールドが収集したフランス印象派ポスト印象派の作品です。

分かり易く言うと、コートールドさんの

コレクションという事です。

今回の展覧会では、ルノワールモネドガロートレックゴッホゴーギャンなど巨匠たちの作品を見る事ができます。
セザンヌ作品は特に充実しており、イギリス随一のセザンヌ・コレクションとも言われるほどです。

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