【アート・ステージ】キャンバスに流れる音楽【美術番組まとめ】

アート・ステージ

2019年9月14日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【キャンバスに流れる音楽】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。

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《ピアノを弾く少女たち》ルノワール


《ピアノを弾く少女たち》1892年頃
ルノワール
オランジュリー美術館蔵
19世紀後半のフランスでは、音楽をテーマにした名画が数多く描かれました。
先ず初めはこの一枚、幸せの画家ルノワールが描いた音楽のある風景です。

鍵盤に指を乗せたまま、楽譜を見つめる少女。
そしてその少女に寄り添うお姉さんも、一緒になって楽譜を確認しています。
ルノワールの持ち味とも言える、明るく柔らかな色彩が穏やかな日常の一瞬を捉えています。

この時代は一般家庭でのピアノ演奏がブームになっていました。
ショパンリストなどの作曲家が活躍したのもこの時代です。

それまでの楽器演奏は、一部の王侯貴族だけの嗜みで庶民には手の届かないものでした。
ピアノも大きなグランドピアノしかなく、庶民の家庭には置くこともできなかったのです。

けれどもフランス革命後に、当時の住宅事情に合わせたアップライトピアノが発明されました。
これにより一般家庭でも、ピアノを置くことが可能になり、ピアノ演奏もポピュラーになっていきました。

画家オーギュスト・ルノワールについて

オーギュスト・ルノワール(1841-1919)

ルノワール(本名:ピエール=オーギュスト・ルノワール、Pierre-Auguste Renoir)は、1841年フランス中南部のリモージュで生まれました。

10代の頃から磁器の絵付けの仕事をしていましたが、やがて失業してしまいます。
その後、画家のシャルル・グレーの画塾に入り、そこでモネシスレーバジールらと出会い、彼らと同じく屋外での絵画制作に取り組みます。

後に印象派と呼ばれる彼らも、当初はサロン(官展=政府主催の美術展覧会)で入選する事を目指していました。
ルノワールは1864年のサロンで入選を果たします。

印象派展には、第1回(1874年)から第3回、そして第7回に参加しています。

第一回印象派展には7作品を出展しています。
そのうち一作は「コートールド美術館展」で来日した《桟敷席》という作品です。


《桟敷席》1874年
ルノワール
コートールド美術館蔵

合計4回の印象派展に参加したルノワールですが、1879年にサロンで成功したのを機に印象派からは距離を取るようになっていきます。

1890年代には評価を確立し、強力なパトロンにも恵まれて名声を得る事となるのです。

カフェ・コンセールについて


《カフェ・コンセール》
リカルド・カナルス
ここからは19世紀の人々と音楽との関わりを見ていきます。

この時代、社会の変化に伴って、人々と音楽の関係性は大きく変化しました。
その象徴となる存在が「カフェ・コンセール」です。
これはお店の名前ではありません
ショーを見ながら飲食ができるお店の形態の事を指します。

東京ディズニーランドにあるような、

感じですかね?

その中でも代表的なカフェ・コンセールが、シャンゼリゼにあった「コンセール・デザンバサドゥール」でした。
そこの光景をエドガー・ドガが描いています。

《カフェ・コンセール・デ・ザンバサドュール》エドガー・ドガ


《カフェ・コンセール・デ・ザンバサドュール》1876-77年
エドガー・ドガ
リヨン美術館蔵

画面奥のステージ上には、ドレスで着飾った歌手たちが見えます。
赤いドレスの女性は、客席に手を伸ばし臨場感たっぷりに歌唱しています。
その隣の女性は当時流行していた扇子を手にしています。

画面上部に葉っぱが見えていることからも、このステージが屋外のステージである事が分かります。
画面の右側にはこの時代を象徴する発明品のガス灯も見えます。

画面手前には、ステージの歌に聞き入るお客さんの姿が至近距離から描かれています。
そのお客とステージの間には一見分かりにくいですが、オーケストラピット(オーケストラの為の演奏場所)が見えます。
特にコントラバスの上の部分を目立つように描き、その存在をアピールしているようです。

ドガ優れた画面構成で知られる画家です。
この作品でもその巧みな表現が見られます。
ドガはあえてこのコントラバスを大きく描いています

そうすることで、客席とステージの間に埋もれてしまいそうなオーケストラの存在を強調しているのです。
さらに赤いドレスの女性と重ねて描くことで、その遠近感も効果的にしています。

カフェ・コンセール」を舞台にした作品はドガだけでなく、彼以外にも多くの画家が描きました。
しかし、ドガ父親がアマチュア音楽家だったこともあり、他の画家よりも音楽は身近な存在でした。

また音楽家との交流もあり、頻繁にも劇場に足を運びました。
次の作品はそんなドガと音楽家との交流から生まれた作品です。

《オペラ座のオーケストラ》エドガー・ドガ


《オペラ座のオーケストラ》1870年
エドガー・ドガ
オルセー美術館蔵

描かれている舞台はパリのオペラ座です。
芸術の都を代表する歌劇場で、別名ガルニエ宮とも呼ばれます。

画面奥に目を移すと、舞台上ではバレエが上演されています。
ドガと言えばの「踊り子」、バレリーナはここでもしっかりと描かれています。

しかしこの作品の主役は「踊り子」ではなく、舞台下のオーケストラ奏者たち、彼らはパリ・オペラ座管弦楽団です。
画面中央に描かれているファゴット奏者が、ドガの友人デシール・ディハウです。
しかし彼以外の演奏者も一人一人が、まるで個人の肖像画として描かれているかのようなリアリティです。
今にも迫力ある演奏が聞こえてきそうな臨場感が作品から伝わってきます。

画面構成にこだわりをもっていたドガは、この作品に何度も手直しを加えていたことが近年の研究で分かっています。
例えば踊り子の上の部分は切り取られていたり、ハープは後から書き加えられています。

ヴァイオリンの弓も計算された配置で、画面にリズミカルな印象を与えています。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
今回は音楽をモチーフにした作品をご紹介しました。

19世紀末のパリは音楽で溢れており、「全ての芸術は、音楽に憧れる」という言葉まで生まれたほどでした。

最後までご覧頂きありがとうございました♪

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