【ぶら美】フェルメール《信仰の寓意》【メトロポリタン美術館展】

ぶらぶら美術・博物館

2022年3月29日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#403 今年イチオシ!メトロポリタン美術館展・後編〜フェルメールから印象派の巨匠たちまで!「西洋絵画の500年」完結篇〜】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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バロック期のオランダ絵画

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

一般的に「バロック美術」といえば”劇的”かつ”大袈裟な明暗表現”がイメージされますが、これは当時の画家のスポンサーが王様やカトリック教会だったことが理由の一つであり、彼らがそういった劇的な表現を求めたが発端です。

しかし次に紹介する画家が生まれた国、オランダではその両方(王様・カトリック教会)がなかったので、この国独自の絵画が花開いていくことになります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

オランダは”プロテスタントの国”ということで、教会が画家に宗教画を発注することはありませんでした。
また王様も市民が呼んだ王様ということで、この国の主役は”市民”だったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

裕福な市民が画家のパトロンになったことで、他のヨーロッパの国とは違う絵画(風俗画・風景画・肖像画)が発展していきました。

そんなバロック期のオランダで活躍し、日本でも人気の高いのがヨハネス・フェルメール(1632-1675)です。

フェルメール《信仰の寓意》


《信仰の寓意》1670-72年頃
ヨハネス・フェルメール
ニューヨーク、メトロポリタン美術館蔵

じつはメトロポリタン美術館フェルメール作品を5点所蔵しており、単館では一番多く所蔵しています。

アメリカがもしかしたら日本以上にフェルメール好きかもしれなくて、30数点しかないフェルメールの3分の1以上アメリカに(ある)」(山田五郎氏)

この《信仰の寓意》はメトロポリタン美術館が所蔵する5点の中でも”一番出来の良い作品”だといいます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

まずその大きさに驚かされます。
フェルメールといえば小ぶりの作品が多く、生涯描いた作品の総面積が、同時代の画家レンブラントの《夜警》という一つの作品よりも小さいほどです。

そんなフェルメールの作品の中でも”大作”といえるのがこの《信仰の寓意》なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この作品はタイトルからも分かる通り”寓意画”で、画中には様々なモチーフが描き込まれています。
フェルメールの頑張っている作品なんですよ、これ」(山田五郎氏)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

日本ですと、小ぶりで控えめな作品(《牛乳を注ぐ女》や《真珠の耳飾りの少女》など)が人気がありますが、絵画の「格」や「ランク」としてはこの《信仰の寓意》の方が上なのです。

込められている寓意

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

それでは作品に登場するモチーフを一つずつ見ていきましょう。
まずこの作品全体で表現されているのは、”カトリック教会の信仰”です。

冒頭で「オランダはプロテスタントの国」と書きましたが、それでも人口の3分の1はカトリック信者だったと言われています。
フェルメールは妻とその母(フェルメールの義母)が少数派のカトリックだったことから、自身も結婚を機にカトリックに改宗したと考えられています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

まず中央に描かれている女性、こちらは「カトリック信仰」という概念そのものを表しています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

その女性が踏みつけている地球儀。
これは「カトリック教会が世界を統治している」というメッセージだと考えられます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

天井から吊るされたガラス球は、同時代のオランダ絵画にも描かれていることから一般的なインテリアであったと考えられますが、この作品では”地球儀”との対比で「天国」を表しているとされます。

信仰を表す女性の視線もガラス球に向かっているのが分かります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

女性の背後にある絵は実在する絵画で、ヤーコブ・ヨルダーンスという画家の『キリスト磔刑』という作品だと思われます。
フェルメールはこの作品の模写を持っていたと考えられており、現在『キリスト磔刑』はフランスのレンヌ美術館が所蔵しています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

足元に転がるリンゴは、アダムとイヴの”原罪”を示しています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

その隣では大きな石で蛇が潰されて血が流れています。
石はキリスト教会を表しており、蛇はサタンや悪を表しているとすると、「サタンや悪に勝利するキリスト教会」という意味合いに取ることができます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

女性が肘を乗せたテーブルには聖杯とキリストの磔刑像、聖書が置かれています。
これは聖餐式(ミサ)を表しているのです。

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