2020年6月9日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#349 ぶらぶらプロデュース!夢の特別展①~葛飾北斎の凄さがわかる!漫画家・しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景」展~】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
葛飾北斎《富嶽三十六景 東海道程ヶ谷》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
現在の横浜市保土ヶ谷区(ほどがや)からの景色を描いた作品です。
作品名が「保土ヶ谷」ではなく「程ヶ谷」になっていますが、これに深い意味はなく、江戸時代は漢字は適当に使われていたのだそうです。
籠を持つ人や馬に乗る人、また人々の後ろに見える松並木からここが「東海道」である事が当時の人にはすぐに分かったといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
画面右端に見切れている白い物は、道端に祀ってある不動明王の石仏だといいます。
パッと見でなんだか分からないほど大胆にトリミングされています。
しかしこれが逆に写真のスナップショットのような効果を生み出し、自然且つ現代的な画面になっています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品でも北斎が得意とする〇と△の構図が活かされています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
富士山の雪の積もり方も独特で、片方だけが雪が積もっているように描かれています。
これも北斎が仕掛けたもので、これにより右側のラインが強調されて画面に〇が2つ現れるのが分かります。
北斎は対象を単純な形に一度還元し、その上で再構成し画面を作っています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
北斎は『富嶽三十六景』より前に〇や△で牛や馬が描けるというのを解説した『略画早指南』というものも作っています。
ですので〇や△に分解する発想は以前より得意としていました。
《大きな松のあるサント=ヴィクトワール山》1887年頃
ポール・セザンヌ
コートールド・ギャラリー蔵
”木の間から富士山が覗いている”というこの構図は、フランスの画家ポール・セザンヌに影響を与えました。
近いものを大胆に拡大し、遠くに色々な風景を描くという構成は、北斎が先駆的に取り入れた方法でした。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
しりあがり寿作《アミダ並木》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらのパロディー作品では松並木をあみだくじにしてしまってます。
パッと見だとあまり変わっていない印象を受けますね。
しりあがり寿さんは極力手を加えない事を念頭に、印象的な松並木を活かしてこの作品を作りました。
葛飾北斎《富嶽三十六景 駿州江尻》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
作品の読み方は「すんしゅうえじり」です。
「駿州」とは駿河国の別名で今の静岡県中部で、「江尻」は静岡市清水区の事です。
静岡市清水区と富士山の組み合わせと言えば、「三保の松原」という富士の絶景スポットが有名で、歌川広重や蘇我蕭白も描いています。
しかし北斎は全くもって有名ではない所からの景色を描いています。
一説には江尻にある姥が池の付近だと言われています。
北斎はこの作品で目には見えない「風」を表現しようとしました。
紙を宙に舞わせる事で、風を表現しています。
舞っている紙は懐紙(かいし)と呼ばれるもので、今でいうティッシュペーパーやメモ用紙などの用途にされていたものです。
紙の一枚一枚の動きや舞い方にも神経を使って描いているのが分かります。
また人物の風に対する体勢からも、どれだけ強い風が吹いているかが伝わります。
人体表現に長けた北斎ならではです。
そして何より、線だけで表現された富士山が見事です。
漫画家のしりあがり寿さんもこの線を描くとなると緊張すると言います。
浮世絵というのは版画なので、輪郭線など線の美しさが大事になってきます。
”線の美しさ”、これも北斎の魅力の一つなのです。
しりあがり寿作《台風中継》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
マイクやカメラが描き足され、現代の台風中継さながらの光景が描かれています。
「風」をモチーフに描いた作品ならではのパロディーですね。
しりあがり寿さんはテレビの中継のようなギャップを出されば面白いなと考え、画面上部に「○○半島に台風が上陸」などとテロップを入れる事も考えたそうです。
しかしパッと見ですぐ分かるのではなく、鑑賞者自身がどこが変わっているのか探す「見る人が自分で気づく価値」を優先したといいます。
この見事な線で描かれた富士山はやはり手を加えられなかったといいます。
この富士山に手を加えると画面全体の緊張が解けてしまう、としりあがり寿さんは述べています。
葛飾北斎《富嶽三十六景 遠江山中》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
作品の読み方は「とおとうみさんちゅう」です。
遠江とは浜松などがある静岡県西部の事です。
その山の中で職人が大きな角材から板を切っている様子を描いています。
角材がかなり大きいですが、これは北斎によるデフォルメが入っていると考えられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品には三角形が数多く隠されています。
『富嶽三十六景』は作品の中にある〇や△を探し出していくのも楽しみ方の一つです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
三角形だけではなく大きな〇も2つ隠されています。
これはパート2でご紹介した《富嶽三十六景 程ヶ谷》とも共通しています。
しりあがり寿さん曰く、「すごくデリケートな所でバシッと決めている」と言います。
北斎の絵は情緒的な絵(例えば雨が降っていて、悲しい雰囲気)ではなく、まるで歌舞伎役者が舞台でバシッと見えを切るようなその一瞬を捉えているのです。
それも絶妙な難しい所で決めているので、片足で立っているような感じだといいます。
この《遠江山中》も一歩間違えると、手前のものに富士山が消されて、画面がガチャガチャになってしまいます。
そこを絶妙なバランスで構成し、富士山の存在感がちゃんと生きるようにしているのです。
しりあがり寿作《驚異のマジック、美女まっぷたつ》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
しりあがり寿さんはこの作品をマジックショーの人体切断に仕立ててしまいました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
図のように、「中に二人入っていれば全然不思議じゃない」としりあがり寿さん自身も言っています(笑)
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
当初は煙と角材を生かして、大きな煙草にしようとも思ったと言います。
この煙がある事で直線や三角形だらけの画面に柔らかさを生んでいるといいます。
今回の記事はここまでです。
この続きはパート3にて!
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コメント
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