2025年3月2日にNHKで放送された「日曜美術館アートシーン」の展覧会紹介の内容をまとめました。
*画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より
開館記念展 Ⅱ(破) 琳派から近代洋画へ
―数寄者と芸術パトロン 即翁、酒井億尋
東京・白金台。
日本庭園に囲まれて立つのは荏原 畠山(えばら はたけやま)美術館です。
4年半の休館を経て、2024年10月リニューアルオープン。
琳派の名品が勢揃いする展覧会が開催されています。
能楽や茶の湯を嗜む数寄者でもあった実業家の畠山一清(はたけやまいっせい、1881-1971)が収集したコレクションが展示されています。
こちらは琳派の祖とされる本阿弥光悦・俵屋宗達2人の共作です。
風に吹かれて大きく揺れるすすきを、金泥と銀泥で描いたのは俵屋宗達。
その下絵と溶け合うように、「古今和歌集」を墨書したのは本阿弥光悦です。
個性あふれる絵と書の見事な調和。
この優れたデザイン性が琳派の魅力です。
書以外にもさまざまな分野で才能を発揮した本阿弥光悦。
こちらはろくろを使わず、手づくねで作られた茶碗。
なだれるようにかけられた白釉(はくゆう)を、山の峰に降り積もる白雪に見立て…。
大きな火割れを漆と金粉で繕い、雪解けの渓流になぞらえました。
「狩野派や土佐派といった流派が血脈や師匠を尊重するという考え方に対して、琳派は先達を私淑するという強い思いによって支えられている点に特徴があります」
「時代や地域を越えて、比較的自由な芸術様式がそこに展開されています」(水田氏)
光悦と宗達の時代からおよそ100年後。
琳派を大成させたのがこの人です。
琳派の絵師の中でもひときわ鋭いデザイン感覚の持ち主、尾形光琳です。
渓流に臨む岩間から伸びた紅白の躑躅(つつじ)。
そして、たらし込みによる墨の微妙な変化を生かした両岸の岩。
川の上に広がる余白に光琳の美意識を感じさせます。
同じく光琳による硯箱。
立葵(たちあおい)と八重葎(やえむぐら)が全体を覆っています。
立葵の花にはすず。
つぼみはアワビ貝。
葉と枝は金の蒔絵で表現されています。
モチーフを大胆かつ効果的に配置することで見るものの視線を釘付けにする、光琳作品の大きな魅力です。
光琳の時代からおよそ100年後。
その作品に魅せられ、江戸で琳派を再興した酒井抱一。
四季の草花が一つの画面の中に配されています。
主役は桜の大木。
太い幹には苔が生え、大きく伸びた枝には満開の花が咲き誇っています。
新しく造られた新館には、畠山の甥である酒井億尋(おくひろ)のコレクションが展示されています。
セザンヌに傾倒し、日本人ならではの洋画を追求した安井曾太郎の静物画。
伸びやかな筆致で描かれた黄色やピンクのバラ。
形はデフォルメされ、色彩や明暗が強調されています。
琳派の名品と近代洋画を楽しめる展覧会。
東京港区の荏原 畠山美術館で2025年3月16日まで開催です。
今回の記事はここまでになります。