2020年3月29日にwowowで放送された「CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~」の【#5 ダリ/福岡市美術館】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
福岡市美術館
画像出展元:福岡市美術館ホームページより
今回取り上げるダリの《ポルト・リガトの聖母》を所蔵しているのが福岡市美術館です。
福岡市中央区の大濠公園(おおほりこうえん)の敷地内にあります。
1979年に開館し、設計は日本近代建築の巨匠前川國男が手掛けました。
2016年より休館し、2019年3月にリニューアルオープンしています。
展示コレクションは近現代美術と江戸以前の古美術が共存しており、その総数はおよそ1600点になります。
美術館の前には、草間彌生の《南瓜》が展示されています。
《ポルト・リガトの聖母》
画像出展元:福岡市美術館ホームページより
ダリの作品の中でも特別澄み渡った印象を受ける作品だと原田マハ氏は言います。
美しく、研ぎ澄まされて静かな画面です。
この作品はダリ46歳の時に描かれました。
描かれている背景はスペインのポルト・リガトの風景です。
ここは彼の最愛の妻であるガラと共に過ごした場所です。
妻のガラはダリにとってマドンナ的な存在でした。
そんな妻を聖母に見立てて描いたこの作品は、ガラに捧げた一枚です。
聖母の周囲にはさまざまなモチーフが描かれています。
画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART #5」より
聖母の横にある籠の中にはザクロが描かれています。
ザクロは”キリスト復活の象徴””とされています。
(ボッティチェリも《ザクロの聖母》という作品を残しています)
幼子イエスが手にしている青い球は、もしかしたら地球かもしれません。
画面右下の銀色の物体はよくみると、人の上半身です。
シュルレアリスム絵画はこういう細かいところを見るのが楽しいですね♪
画家:サルバドール・ダリ
サルバドール・ダリ(Salvador Dali、1904-1989)はシュルレアリスムを代表するスペインの画家です。
シュルレアリスムは「超現実主義」「超写実主義」と言われ、それまでになかったアートの在り方を提示しました。
《記憶の固執》1931年
サルバドール・ダリ
ニューヨーク近代美術館蔵
彼の初期の代表作でもある《記憶の固執》は教科書などで目にした方も多いのではないでしょうか。
この作品には”死への恐怖”や”性へのコンプレックス”が込められていると言われています。
ダリは才能に恵まれた人でした。
絵画のみならず、デザインやファッションの仕事もこなし、また時には政治的な発言をし物議を醸すという噂の絶えない人物でした。
まさにダリそのものがアートのような存在だったのです。
ちなみにフルネームはカタルーニャ語で「サルバドー・ドメネク・ファリプ・ジャシン・ダリ・イ・ドメネク」といいます。
ながっ!!(笑)
遠近法
この作品で特徴的なのは「遠近法」です。
描かれている対象すべてにピントが合っているのです。
通常、遠近法とは遠くのものは間に空気の層が入り、青くぼやけて描かれます。
しかしこの《ポルト・リガドの聖母》では遠くの物まで、ピシッとピントの合った状態で描かれています。
じつはこの作品にはダリが精巧な構図で描くために試行錯誤した跡が残されています。
画面の中央にピンを刺した穴の跡があるのです。
この画面中央からそれぞれの対象物まで、精密な採寸を取ったと思われます。
画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART #5」より
これにより完璧な遠近法を実現しようとしたのです。
ダリの妻、ガラ・エリュアールについて
《ポルト・リガドの聖母》は1950年に描かれましたが、その前年にも同じタイトルの作品をダリは描いています。
画像出展元:wikipedia「The Madonna of Part Lligat」より
全体の構成は福岡市美術館所蔵のものと似ていますが、女性がこちらでは聖母マリアになっています。
妻ガラとの出会いは1929年、ダリが25歳の時でした。
二人の年齢差は10歳差ですが、二人は強く惹かれ合い結婚します。
ガラはダリの才能を信じており、彼の成功のために画廊を奔走したといいます。
またプロデューサー的な側面もあり、ダリの奇抜な装いやパフォーマンスもガラのアイディアによるものでした。
ダリにとって妻ガラの存在は何物にも変え難い唯一無二の存在だったのでしょう。
彼女が1982年に先立つと、ダリは激しく落胆して、その翌年以降は絵筆を握ることもありませんでした。
ダリの言葉です。
「彼女は私の母であり、私の酸素だった」
マドンナとしてのガラ、そしてその膝の上で遊ぶ幼子イエス。
もしかするとダリはこの幼子に自分自身を投影していた、という見方もできるかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART #5」より
いかがでしたでしょうか。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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