【アートステージ】ナビ派が描いた子どもたち【美術番組まとめ】

アート・ステージ

2020年4月11日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【ナビ派が描いた子どもたち】の回をまとめました。

番組内容に沿ってそれでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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『ナビ派』とは

ナビ派』とは、1892年にパリのアカデミー・ジュリアン出身の画家たちによって結成されたグループです。
ナビ』とはヘブライ語で”預言者”という意味があります。
自分達を「新しい芸術の預言者」としてナビ派を名乗り、まるで秘密結社のような雰囲気を漂わせていました。

ナビ派の画家には、ゴーギャンの影響を受けたポール・セリュジエ、2018年に国立新美術館で展覧会が開かれたピエール・ボナール、その他モーリス・ドニエドゥアール・ヴュイヤールらがいました。

ナビ派の絵画の特徴としては、画面が平面的・物憂げな雰囲気・装飾的な画風などが挙げられます。

今回はそんなナビ派の描いた、”子どもたち”の作品を見ていきます。

《赤いエプロンドレスを着た子ども》モーリス・ドニ


《赤いエプロンドレスを着た子ども》1897年
モーリス・ドニ
個人蔵

先ずはナビ派の中心人物の一人、モーリス・ドニ(1870-1943)の作品を見てみましょう。
この作品は27歳の時に描かれました。

一面に咲く花々を背に、女の子がこちらも見ながら歩いています。
まるで絵本の絵のような、柔らかく温かみのある作品です。
薄紅色の頬と大きな青い目が可愛らしいです。

このような愛らしい作品を描くドニですが、彼は意外にも理論派の画家として知られています。
彼は自分の絵画論について、このように述べています。
絵画とは様々な色彩の平面からなる表面である

なんだか難しい事を言ってますね・・・

どういう事なのか、この《赤いエプロンドレスを着た子ども》を基に見てみましょう。
女の子が着る赤い格子柄のドレス、そして背景のピンク色の花々、それらは点描画のように大きな点々で描かれています
このように、ドニ単色の平らな色彩によって作品を構成しているのです。

けれどもこの作品には、そんな理屈っぽさは感じられません。
斬新な芸術観を持ちながらも、温かみを忘れないというドニの魅力が詰まった一枚です。

《子どもたちの昼食》ボナール


《子どもたちの昼食》1897年頃
ピエール・ボナール
フランス、ナンシー美術館蔵

もう一人のナビ派を代表する画家ピエール・ボナール(1867-1947)の子どもを描いた作品を見てみましょう。
今度は室内にいる子どもたちの絵です。

描かれているのはボナールの二人の甥っ子です。
テーブルにお行儀よく座り、昼食を取っているというありふれた日常を優しい眼差しで描いています。

画面全体が茶色の暖色系でまとめられており、落ち着いた印象を受けます。
親密な家庭の情景を表すのに、ぴったりの色彩です。

ボナールといえば、お風呂に入っている奥さんの絵を多く描いたことで知られていますが、二人の間に子供はいませんでした。
ですので、その甥っ子たちを我が子のように可愛がり、その姿を何枚も作品に残しています。


手前に描かれた猫も印象的です。
子どもたちを見守るように、可愛らしく描かれています。
ボナールの作品には猫や犬といった身近な動物も頻繁に登場します。

この作品からは、ボナールの小さなものへ向けた愛情と慈しみが伝わってきます。

『子ども』という主題

このようにナビ派の画家は、「子ども」を主題にした作品を多く描きました。
しかしそれ以前には、「子ども」を題材にした作品はほとんど描かれる事はありませんでした

17世紀まで”絵画の中の子ども”いえば、幼子イエス天使、または王侯貴族の子どもであり、一般の子どもが描かれることはほとんどありませんでした。
例外として、ブリューゲル(父)などに代表されるネーデルラント絵画があります)

その理由は、昔のヨーロッパでは子ども=大人未満の未完成な存在として、価値を認められていなかったのです。

その子供観に変わっていったのは、今からおよそ250年前です。
哲学者であるルソーが自身の著書の中で「子どもは未完成な大人ではなく、むしろ大人が失ってしまった純粋さを持つ貴重な存在である」と記し、子どもの存在を重要視したのです。


《食前の祈り》1740年
ジャン・シメオン・シャルダン
ルーヴル美術館蔵

以降、絵画に日常生活の子どもたちの姿が登場するようになります。
ルソーと同じ時代のフランスの画家、シャルダンの作品には子どもがよく登場します。

時代が進み、19世紀になると印象派の画家たちによって子どもを描いた作品が数多く生まれます。

《可愛い天使たち》ヴァロットン


《可愛い天使たち》1894年
フェリックス・ヴァロットン
三菱一号館美術館蔵

作者のフェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、ユニークな作風で知られる画家です。

何やら沢山の子どもたちが一斉に集まってきています。
満面の笑みを浮かべている子や、驚いている子など、その表情やポーズは様々です。

ではなぜ子どもたちは集まってきているのでしょう?
何やら2人の男性の所に寄ってきているようですが、彼らは警察官と捕まった犯人なのです。

つまりこれは白昼の街中で起きた逮捕劇。
その滅多に見られない瞬間に子どもたちが駆け寄ってきているという、無邪気さ故の少し残酷な場面です。
そして作品のタイトルが《可愛い天使たち》というのもどこか皮肉めいています。

「画家が見たこども展」@三菱一号館美術館

三菱一号館美術館で2020年6月7日㈰まで開催予定の「画家が見たこども展」。
(*2020年4月30日現在は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため臨時休館中。
開館時期も未定です。)

今回ご紹介した中から、モーリス・ドニボナールヴァロットンの作品が展示されています。
ナビ派らしく単に可愛らしいだけではない、別の視点からの作品を楽しめます。
その他にもゴッホゴーギャンの作品も見る事ができます。

今回の記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました!

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