【日曜美術館】やまと絵展②【美術番組まとめ】

日曜美術館

2023年11月12日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【まなざしのヒント 特別展やまと絵】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回の記事はパート2になります。

スポンサーリンク

重要文化財《隆房卿艶詞》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

今回の記事でまず取り上げるのは《隆房卿艶詞(たかふさきょうつやことば)》。
王朝貴族の悲哀を描いた絵巻物で、鎌倉時代に描かれました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

鎌倉時代の貴族・藤原隆房の歌集『隆房集』を絵巻にしたものです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

隆房小督(こごう)という琴の名手の女性との物語が描かれています。

この作品ように色が塗られてなく、墨だけで描かれた作品を”白描画(はくびょうが)”といいます。
鎌倉時代、朝廷を舞台にした物語を描く際にこの技法はよく使われました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

白描画と同じく墨だけ描いたもので水墨画がありますが、両者には明確な違いがあります。

水墨画は墨の濃淡で画面を構成していくものです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

一方で白描画は”線”で描くという違いがあるのです。

白描画作品でよく知られているもので《鳥獣戯画》があります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この作品では細い線が使われています。
しかしよく見てみると、人物の衣の線はとてもやわらかい線になっています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

それに対して建物の線は、まるで定規を使って描かれたようなカッチリした線になっています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

さらにもう一つ対比になっているのが、画面全体の淡い色彩に対して、男性の冠の烏帽子と女性の髪の濃淡も対比になっているのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

女性の髪の上には桜の花びらが乗っています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

じつは絵巻の初めには桜の花が描かれています。
その花びらが風に乗って女性の髪に乗った、というのが想像がここからできるのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そうした濃淡と、やわらかい線とかたい線といった対比が随所に見られるのがこの作品の特徴です。

”艶詞(つやことば)”というタイトルといい、桜の花びらが散る様子といい、どこか色っぽい印象を受けますが、どういったストーリーなのでしょうか。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

公家の藤原隆房小督(こごう)の2人は元々恋仲でした。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかしその小督のことを時の天皇が見初めてしまい、隆房小督の中が引き裂かれてしまう、という悲しい恋のお話なのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

ですので、色彩豊かに表現されるような物語というよりは、白描画のモノクロの画面の方が”悲哀”というテーマにおいてはマッチしているのです。

重要文化財《浜松図屏風》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

最後に取り上げるのは室町時代のやまと絵屏風です。

東京国立博物館所蔵の《浜松図屏風》。
重要文化財に指定されている作品です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

高さは約1メートルと、屏風にしてはやや小ぶりな作品です。

右側から左側へと画面は進んでいきます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画面の一番右、まず目に入るのは柳の木です。
その葉はまだ少し短く、まだ新しい新芽の状態であることが分かります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その柳に沿って視線を下に移すと、たんぽぽが咲いています。
この場面では春から夏の草花が描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

屏風のちょうど分かれ目、右隻と左隻にまたがるように描かれているのは桔梗の花です。
桔梗は夏から秋にかけて咲く花ですので、右から左へ季節の流れが進んでいるのが分かります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

桔梗の左側にはススキが描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画面の一番左側になると大きなマキの木が見えます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そこには粉雪が乗っています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

マキの木の下にはバラの花があります。
この時代の絵画でバラが描かれるのは非常に珍しいです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

右から左にかけて春夏秋冬が描かれ、そのあいだを鳥たち楽しそうに飛んでいる。
それがこの作品の全体の構図になります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

一つの作品で四季折々の草花が描かれていますが、これは実際にはありえない光景になります。
この作品はつまり「桃源郷」「パラダイス」といった理想的な世界を表しているということになるのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

このような絵画「四季絵」と呼ばれ、やまと絵の重要なテーマの一つになっています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

「やまと絵」と聞くと、絵巻物のような平面的な作品をイメージしがちですが、じつはやまと絵が誕生した初期の頃は屏風や障子と呼ばれる壁画のようなものが主流でした。

しかし長い年月が経つ中で、そういった大画面の作品は失われていき、結果として絵巻物のような作品が多く残ったのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そういった背景を考えた時、こちらの室町時代につくられた屏風絵が、ここまできれいな状態で残っているのは非常に珍しく、たいへん貴重な作品といえるのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画面には金や銀がふんだんに使われ華やかな印象ですが、こういった作風は室町時代に流行したものです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

じつはこの屏風は下地に雲母(きら)という鉱物が使われています。
その上に金や銀を乗せることで、単にギラギラした感じではなく、少しくすんだ、まるで月夜に照らされたような雰囲気を出しているのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらの《浜松図屏風》は今回の展覧会「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」のラストを飾る作品です。

今回の記事はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました