2017年2月25日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【フェルメール『手紙を書く女』】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
フェルメール作品を最も多く所蔵している国は?
世界中に多くのファンがいるフェルメール。
彼の作品を一番多く所蔵しているのはどこの国でしょう?
三十数点と言われる彼の作品は、世界7か国13都市に点在しています。
フェルメールが生まれ育ったオランダは7点です。
お隣のドイツには6点。
芸術大国フランスは意外にも2点だけです。
じつは最も多くフェルメール作品を所蔵しているのは、海を越えたアメリカです。
その数なんと12点にも及びます!
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
画像出展元:wikipedia「National Gallery of Art」より
今回ご紹介する《手紙を書く女》はワシントン・ナショナル・ギャラリーに収蔵されています。
この美術館は他にも、
- 《天秤を持つ女》
- 《赤い帽子の娘》
- 《フルートを持つ女》(*フェルメールの作品か議論が続いている)
といったフェルメール作品を所蔵、ここだけで4点のフェルメール作品を見る事ができます。
ワシントン・ナショナル・ギャラリーはアメリカで唯一の国立美術館です。
そのため入館料も無料となっています。
コレクションの総数は13万点以上で、フェルメール以外にもレンブラントやエル・グレコ、ボッティチェリなど数多くの名画を所蔵しています。
(表)
(裏)
《ジネヴラ・デ・ベンチの肖像》1474-1478年頃
レオナルド・ダ・ヴィンチ
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵
フェルメールではないですが、こちらはレオナルド・ダ・ヴィンチの作品です。
ヨーロッパ以外で唯一見る事のできる彼の作品になっています。
こちらは表と裏の両面に描かれている珍しい作品です。
《手紙を書く女》
《手紙を書く女(A Lady Writing a Letter)》1665年頃
ヨハネス・フェルメール
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵
美しく着飾った女性が机で手紙を書いています。
黄色の色鮮やかなガウン、これは他のフェルメール作品でも登場するものです。
サテン地の滑らかな質感が伝わってくるようです。
襟元や袖口の白い毛皮と黄色い部分とで、見事に質感の表現を描き分けています。
画面左側から入る光の表現はフェルメールの十八番です。
その柔らかな光は、女性の真珠のイヤリングや、髪飾りに反射してより魅力的なものにしています。
女性はこちらの存在に気づいたかのように、ペンを止めて、穏やかな微笑みをこちらに向けています。
美しさの秘密:構図と色の使い方
《手紙を書く女》では、色の使い方や構図が綿密に計算されています。
先ずは「色の使い方」から見ていきましょう。
この絵を見た時に一番最初に目が行く部分はどこでしょう?
大半の方は女性が着ている黄色いガウンに目が行くでしょう。
じつはこのガウン、黄色が使われているのは”左腕の部分”だけなのです。
他の所はじつは茶色で描かれています。
もしガウン全体に黄色使っていたら、とてもしつこい印象になっていたこでしょう。
あえて一部に黄色を使う事で、逆に画面全体にインパクトを与えているのです。
まさに「フェルメールマジック」ですね!
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
次に「構図」を見ていきましょう。
上の図をご覧ください。
フェルメールは比率に準じて、画面を構成しているのが分かります。
女性が使う机の横幅はちょうど画面の半分。
高さは画面全体の3分の1になるように描かれています。
壁にある絵の高さも同じ3分の1。
横幅は全体の3分の2です。
女性が腰掛ける椅子の高さはちょうど画面の半分の位置です。
このようにきっちりかっちりバランスを取って描くことで、画面に安定感をもたらしています。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
そしてその絶妙な配置に中にいる女性を三角形にして、安定感と心地よさを演出しているのです。
フェルメールと「手紙」
フェルメールが手紙をモチーフに描いた作品は、全部で6点になります。
彼の作品全体のおよそ6分の1に手紙が登場している事になります。
なぜこんなにも”手紙”を作品に取り入れたのでしょう?
この時代、17世紀のオランダでは郵便制度が急速に発達していました。
また当時の女性の識字率も非常に高く、手紙のやりとりが一つのブームだったのです。
中でも恋文、ラブレターを書くことが流行します。
女性の日常の姿を描くフェルメールにとって、これ以上のモチーフはなかったと言えるでしょう。
しかし手紙との向き合い方は各作品ごとにことなっています。
手紙を読んでいる
《窓辺で手紙を読む女》と《青衣の女》では女性は手紙を読んでいます。
手紙を渡される
《婦人と召使い》と《恋文》では手紙を渡されています。
手紙を書いている
《手紙を書く婦人と召使い》では女性は手紙を書いています。
《手紙を書く女》の場合は…
そして《手紙を書く女》では、手紙を書く手を止めてこちらを見ているのです。
そう、この作品だけが明らかに他とは異なるのです。
手紙というモチーフを使ってはいますが、フェルメールはこの女性の姿を描こうとしたのです。
そういう意味でいうとこの作品は「肖像画」という側面もあるかもしれません。
だとしたら一体この女性はだれなのでしょうか?
と、長くなりましたのでパート1は一旦ここまでです。
パート2へと続きます。
【美の巨人たち】フェルメール《手紙を書く女》②【美術番組まとめ】
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[…] 今回は後編になります。前編はこちら☚からご覧いただけます♪ […]