2023年11月5日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【華麗なる至宝 天平の祈り 〜第75回 正倉院展〜】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
イントロダクション:第75回 正倉院展
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今年も奈良国立博物館で正倉院展が始まりました。
1300年に渡り守り伝えられてきた貴重な宝物を見ることができます。
終戦の翌年・昭和21年から始まった正倉院展は今回で75回目です。
今年は初出陳6件を含む全59件の宝物が展示されています。
まずは今年の展覧会で大注目の宝物からまとめていきます。
《平螺鈿背円鏡》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
豪華な素材を使い技巧の限りを尽くした直径40センチの鏡、《平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)》です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
紅色の琥珀と白色に輝く螺鈿で、大小の花々が表されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その花の間にさまざまな色のトルコ石がちりばめられています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この鏡は様々な場所で採れた材料が使われています。
琥珀はミャンマー産、トルコ石はイラン産で、それらを使って中国の唐で製作されました。
当時の盛んな国際交流が反映されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
白い螺鈿の部分にいくつもの細い線が見られますが、こちらは”毛彫(けぼり)”と呼ばれる技法が用いられており、葉脈の表現や縁取りに使われています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
赤い花びらの下には小さな花弁が見えます。
こちらは金で表されたものです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《平螺鈿背円鏡》はその随一の華やかさから、”歴史上最高峰の鏡の一つ”といわれています。
《斑犀如意》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いての宝物は《斑犀如意(はんさいのにょい)》です。
東大寺の僧侶が教えを説く際などに使った仏具です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
全長77センチで、材料は動物の犀(サイ)の角を加工したもので、その端には当時からたいへん貴重だったラピスラズリの装飾が施されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
扇形の部分にはカラフルな宝石の装飾が見られます。
中心に水晶が置かれ、その周囲を孔雀石や琥珀が囲んでいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
贅沢な素材をふんだんに使ったこちらの仏具からは、天平文化の華やかさが感じられます。
《紫檀小架》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは《紫檀小架(したんのしょうか)》と呼ばれる宝物。
高さは46センチ、幅は30センチの調度品です。
何かをかけるような仕様に見えますが、現在でもその具体的な用途は分かっていないという、ちょっと不思議な宝物です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
素材は日本では取れない紫檀(したん)でできており、それを鳥居の形に組み合わせています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
唐草模様の突起は象牙で作られています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
上下にそれぞれ付けられていますが、それらは互い違いになっています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
台座の上面には鼈甲(べっこう)が貼られ、さらにその下には金箔が施されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
台座側面には色合いの違う木材を組み合わせた”木画(もくが)”が施されています。
正倉院宝物にはこの木画の技法が多く見られ、その数は約30点にのぼることから、当時の人気の技法であったと考えられています。
《九条刺納樹皮色袈裟》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
正倉院には聖武天皇の遺愛の品が数多く納められています。
それらは聖武天皇が756年に亡くなった後、妻の光明皇后によって大仏に献納された品々でした。
それが正倉院宝物の始まりです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
『国家珍宝帳』はその献上品の目録で、600点超の献納品が記されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
次に取り上げる宝物はその『国家珍宝帳』の中で一番最初に挙げられているもので、正倉院展に出陳されるのは24年ぶりです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《九条刺納樹皮色袈裟(くじょうしのうじゅひしょくのけさ)》は、聖武天皇がその身にまとったと伝わる袈裟(けさ)です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
幅2メートル53センチ・縦1メートル47センチで、様々な色と形の絹が何百枚と縫い合わされています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
細かくほぐした絹を、刺し子縫いでつなぎ合わせています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この袈裟は糞掃衣(ふんぞうえ)と呼ばれる、僧侶にとって最も尊い袈裟にならって作られました。
糞掃衣とは、かつて釈迦が捨てられたぼろキレを洗い清め、縫い合わせてつくった衣のことです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
糞掃衣を身に着けることは、煩悩をを断ち切り、釈迦の生きざまを体現するものと考えられたのです。
聖武天皇が生きた時代
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
聖武天皇が生きた時代は疫病・自然災害・戦乱などが頻発したため、人々は不安な生活を送っていました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
民のことを思い、またこれら社会不安について自らを責めた聖武天皇は出家を決意します。
そして”仏のしもべ”を意味する「三宝の奴(さんぽうのやっこ)」と自身を称しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《九条刺納樹皮色袈裟》が『国家珍宝帳』の筆頭に記されているのは、実際に身につけられた袈裟は聖武天皇のその人を象徴するものであるという考え方が理由であると考えられます。
この袈裟には聖武天皇のあつい信仰心と、仏教に込めた平安への願いが宿っているのです。
今回の記事は一旦ここまでです。
パート2へと続きます。