【日曜美術館】プライス・コレクション③【江戸絵画コレクター】

日曜美術館

2023年5月28日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【選 東北に届け 生命の美 〜アメリカ人コレクター 復興への願い〜】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回の記事ではプライスさんの特に好きな作品、そして鑑賞方法のこだわり江戸絵画の魅力についてまとめていきます。

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森狙仙《猿図》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらはプライスさんが特に気に入っている一枚です。
「もし家が火事になったら、これだけは持って逃げる」とプライスさんはいいます。

江戸中~後期に活躍した森狙仙(もり そせん)の描いた《猿図》です。
動物の毛が柔らかく描かれていたら、それは狙仙の作品に違いない」と言われるほど動物画の評価が高く、そこから”森狙仙自身が猿だった”という伝説すら残るほどです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

座って天を仰ぐ猿。その視線の先には…

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

一匹の蜂の姿が。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

猿の手と足の指先、それから体の筋肉の全てがあのハチを見ています。捕まえたいけど下手をすると刺されることも分かっているのでしょうね。絵師の込めたユーモアが伝わってきます」(プライス氏)

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

見る人によって様々な捉え方ができるのもこの作品の特徴です。

ある人はこの絵を見て、「猿が蜂を目掛けてジャンプしたところ、捕まえられず宙を落ちていっているところだ」と捉えたといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

また番組司会の井浦新さんは、「下ろしている猿の右手は、じつは蜂にさされたところを抑えている。つまりこの猿は自分を刺した蜂に対して、『なにくそ!』と見上げている」と考えました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

見る人によって様々な解釈ができるのは、画面に猿と蜂しか描かれていないからでしょう。

森狙仙は不必要なものを画面からすべて省くことで、見る人によって様々な解釈ができる画面を作り上げているのです。

葛蛇玉《雪中松に兎・梅に鴉図屏風》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは葛 蛇玉(かつ じゃぎょく、1735~1780)という名の江戸時代中期の大阪で活躍した画家の作品です。
葛 蛇玉は狩野派や南蘋派に学び、また鯉の絵を得意としたことから「鯉翁」とも呼ばれました。

あまり有名な絵師ではありませんが、この画家もプライスさんによって”発見”されました。
実際にプライスさんはこの屏風を購入する際、店の人から「なんでこんなものを買うんだ?」と聞かれたといいます。

プライスさんが購入して以降に葛 蛇玉は学者からも注目されるようになり、論文もたくさん書かれるようになったのです。

先見の明がすごいですね!

プライスさんの鑑賞方法のこだわり

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

今の時代の私たちとって、夜になれば”電気をつけて明るくする”のは当たり前のことです。

しかし、当然江戸時代に電気や電灯はなく、夜に絵を鑑賞する時はろうそくの火を頼りに見るしかありませんでした

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そんな風にろうそくの明かりだけで絵を見ると、明るい所で見るのとでは随分印象が変わってきます。
プライスさんは、描かれた当時と同じ状態で見ると絵師の思いがより鮮明に見えてくるといいます。

次に紹介する作品もまた、明かりの違いによって印象が変わる作品です。

《簗図屏風》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

激しく流れる川で行われているアユ漁の様子を描いた屏風です。
この作品の作者は分かっていません。

プライスさんが”発見した”江戸時代初期の名品です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

タイトルにある簗(やな)とは、鮎を捕まえるために竹で編んだ仕掛けのことです。
この屏風ではその簗の上に鮎とカニが描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この屏風にはなんと9種類もの金箔が使われています。
これがこの屏風をより美しく、効果的なものにしているのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

番組では江戸時代の夜の鑑賞方法を再現すべく、暗闇の中のわずかな明かりのみで見た様子が紹介されました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

また違った雰囲気になりますね!

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

細やかな金の美しさが、明るい所で見るよりも、より映えて見えるのがわかります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

(にかわ)で立体的になった簗(やな)部分が光にあたって影があるじゃないですか。だから本当の絵じゃなくて、(立体的に)『簗がある』っていう」(井浦新氏)

プライスさんが思う江戸絵画の魅力

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

1000点にも及ぶ大コレクションを築いたプライスさん。

プライスさんが江戸絵画に魅了された理由について語ってくれました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

それが最も凝縮されているのが、コレクションの第1号である伊藤若冲の《葡萄図》だといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この絵にはブドウの蔓(つる)が這うための棚(たな)がどこにもありません。
これ以上蔓が伸びてしまうとたいへんなことになるでしょう。

しかしそれでも若冲はぶどう棚を描こうとしていません。
そういう点からみると「写実的」な絵画でないのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかしこの絵は見ていると、他のどんな絵よりも「ブドウらしい」という気持ちになるといいます。
その理由を「若冲が自然の本質を捉えているからだ」とプライスさんは語ります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

江戸の絵師たちは自然(Nature)の本質を強く感じ取っていたからこそ、命の力が伝わってくるのです」(プライスさん)

今回の記事はここまでになります。

最後までお読みいただきありがとうございました。


◉参考資料
ジョー・D・プライス/山下裕二著『若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語』小学館

コメント

  1. […] 今回の記事はここまでになります。 この続きはパート3にて(リンクはこちらから)。 […]

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