【永徳と等伯】桃山ー天下人の100年②【ぶら美】

ぶらぶら美術・博物館

2020年11月3日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#360 東京国立博物館「工藝2020」「桃山 天下人の100年」〜伝統と革新!世界に誇るニッポンの工芸と、狩野永徳、長谷川等伯…桃山時代のお宝美術が大集合!〜】の回をまとめました。

今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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国宝《檜図屏風》狩野永徳

パート1でご紹介した狩野永徳の《洛中洛外図屏風》ですが、一般に私たちがイメージする永徳の作品よりも細かく、繊細に描かれていました

狩野永徳と言えば、《唐獅子図屏風》のようなドーン!
とインパクトのある作品を思い浮かべます。

しかし段々と豪快な作風に変わっていきます。
続いてご紹介するのは《洛中洛外図屏風(舟木家本)》から25年後に描かれた、こちらも国宝の《檜図屏風》です。


国宝《檜図屏風》1590年
狩野永徳
東京国立博物館蔵

このインパクト!
「ザ・狩野永徳!」って感じですね。

金地を背景に濃彩の巨木が描かれています。
永徳は巨木のインパクトを強調するため、その前には金の雲は描いていません。


このように曲がりくねった檜というのは現実の木ではあり得ません。
その枝ぶりは”大蛇”のよう、圧倒的な生命感に満ちた巨木表現です。

永徳らしい豪快な作品ですが、先の《洛中洛外図屏風》の細かい表現からどうしてこのようになったのでしょう?
じつは永徳は元々洛中洛外図屏風》のような細かい絵が得意だったと言われています。

時の権力者である信長・秀吉に仕え、数多くの仕事が舞い込むようになります。
極めて多忙になった永徳は、結果として”細かい絵を描く暇がなくなって”しまい、このようなダイナミックな表現の作品が増えたのです。

確かにダイナミックなものの方が描く時間は短く済みそうです。


この作品は秀吉が直接永徳に発注して、描かせました。
しかしこの《檜図屏風》を描いている間に体を壊し、完成した年に亡くなっています
47歳という年齢で亡くなっており、一説には過労死とも言われています。

こちらの作品は今回の展覧会では前期展示となっており、既に展示が終了しています。


後期展示では、こちらも永徳の代表作《唐獅子図屏風》がお目見えします。

私もこの作品は生で見た事がありますが、
本当にインパクトがありました!

国宝《楓図壁貼付》長谷川等伯


国宝《楓図壁貼付》1592年頃
長谷川等伯
京都、智積院蔵

狩野永徳のライバルと言える存在が、長谷川等伯です。

今回の展覧会では、「長谷川等伯と狩野永徳と比べよう」と考え、同じ”巨木”を描いた作品をチョイスした結果、《檜図屏風》と《楓図壁貼付》の競演が実現したといいます。

等伯のこの作品も巨木が腕を伸ばしているかのような表現ですが、永徳のものとはどこか雰囲気が違います。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この作品は京都の智積院という寺院にあります。
この『楓図』の隣には、等伯の息子である長谷川久蔵(きゅうぞう)が描いた『桜図』があります。

この時代狩野永徳が時代をリードする絵師でしたが、早くに亡くなってしまい、その後頭角を現していったのが長谷川等伯です。

この『楓図』は、豊臣秀吉が息子を弔うために建てた祥雲寺(現在の智積院)の障壁画として、等伯が依頼を受け描かれました。


永徳は《檜図屏風》で、ある意味「抽象画」のように、”力”を表現しています。
まるで「力で周りをねじ伏せてやる」と言わんばかりです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

しかし等伯の作品は永徳と比べると、柔らかく、また装飾性もあります。
今は絵具が落ちてしまっていますが、描かれた当初はもっとカラフルで鮮やかだったと考えられます。
等伯の「美しい世界を作ろう」という思いが感じられます。

秀吉は自分にとって一番大事な寺の仕事を狩野派ではなく、等伯に依頼しました。
しかしその後は、長谷川派は狩野派に取って代わる存在にはならなかったといいます。

永徳が亡くなったとはいえ、狩野派には圧倒的な組織力がありました。
しかし長谷川派はそこまで大きな組織になっておらず、また跡継ぎと考えていた息子の久蔵も急死してしまうのです。

国宝《松林図屏風》長谷川等伯


右隻
国宝《松林図屏風》
安土桃山時代・16世紀
長谷川等伯
東京国立博物館蔵

今回の展覧会では、東京国立博物館が所蔵する国宝《松林図屏風》も展示されています。
*こちらは会期終了まで展示されています。

毎年お正月にだけ公開されるこの作品が、
この時期に見られるのは嬉しいですね。

さらに東京国立博物館の「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」では、新作VR『国宝 松林図屛風ー乱世を生きた絵師・等伯ー』が上映(2021年1月17日まで)されています。

展覧会に行かれた際には、是非こちらもチェックしてみてください。

今回の記事はここまでになります。
続くパート3では、あの『ザビエル像』、そしてキリスト教に関する美術についてまとめていきます。
こちら☚からご覧いただけます。

コメント

  1. […] 今回のパート1はここまでです。 続くパート2では「ザ・桃山美術」、ライバル関係でもあった狩野永徳と長谷川等伯の作品を見てまいります。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

  2. […] 今回の記事はパート3になります。 前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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