【ぶら美】京都・智積院の名宝②【美術番組まとめ】

ぶらぶら美術・博物館

2023年1月10日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#424 寺外不出の国宝・重文!「京都・智積院の名宝」~長谷川等伯一門が描いた国宝障壁画ほか、多彩な名宝を一挙公開!~】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

このページでは展覧会の目玉作品、長谷川等伯の国宝《楓図》と息子・久蔵の《桜図》について見ていきます。

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国宝《桜図》長谷川久蔵


国宝《桜図》桃山時代、16世紀
長谷川久蔵
智積院蔵

まずは《桜図》の方から見ていきます。
こちらは等伯の息子、長谷川久蔵による作品です。
(サントリー美術館・学芸部長の石田佳也氏は「久蔵が描いた画面ではないか、という説が有力」と話していました)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

画面中央に桜の巨木が描かれ、枝全面に桜が咲き誇っている、まさに「春爛漫」といった情景です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

地面にはタンポポやスミレなどの花々が描かれ、画面に彩りを与えています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

長谷川久蔵は1593(文禄6)年に26歳の若さでこの世を去りますが、この《桜図》はその直前、24~25歳の時の作品だと考えられています。
(ちなみに同時代に活躍した狩野永徳は、久蔵が亡くなる3年前の1590年に亡くなっています)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この《桜図》の特徴の一つは、桜の花が盛り上がって立体的に表現されていることです。

これは「置上胡粉(おきあげごふん)」と呼ばれる技法で、胡粉(貝殻から作られる白色顔料)を練り上げたものを使っており、日本古来のやまと絵でも使われる技法です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

桜の花は実物よりもかなり大きく表されており、その全てが「置上胡粉」によって表現されています。
久蔵の工芸的・装飾的側面が見られる傑作です。

国宝《楓図》長谷川等伯


国宝《楓図》桃山時代、16世紀
長谷川等伯
智積院蔵

そしてこちらが父・等伯による《楓図》です。

巨木を画面の中央に置き、そこから枝を伸ばす構図は、等伯と同時代のライバル絵師・狩野永徳が構築した「大画様式」を参考にしていると思われます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

画面右側には緑や赤といった鮮やかな色の葉や、ハギや菊など様々な花々を描き、永徳作品にはない”叙情性”を表現しました

これらの草花はほぼ実物大で描かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

左側は余白の部分があり、また水面の表現も幾何学的な点から「琳派」を思わせるものがあります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

今回の展覧会では《楓図》の横にスペースを開けて二面の襖絵が展示されています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらは智積院では別の場所にあった襖絵になります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

置かれていた場所が良かったのでしょうか。
色彩がよく残っており、画面上部の緑と赤の葉はとても色鮮やかです。

「これ(画面上部の緑と赤の葉)を基準に(楓図の)当初の色鮮やかさを想像するのも面白いところじゃないでしょうか」(サントリー美術館学芸部長・石田佳也氏)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

恐らくはこの間のもう一面別の絵があり、より大きな画面であったことが想像できます。

確かに画面上部の枝が続いている感じがありますね。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この《楓図》も《桜図》もじつは制作当初に比べて、50cmほど上下が切り詰められていると考えられています。

ですので本来の姿は上下左右ともに大きい、もっと迫力のある画面であったと考えられます。

秀吉が亡き息子を偲んで建てた祥雲禅寺。
そしてそこに納められた国宝《楓図》。
この鮮やかな画面で等伯はこの世の極楽浄土を表そうとしたのかもしれません。

国宝《松に秋草図》長谷川等伯

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

高さ2m28cmの大画面に、力強い松の表現が見事です。
ムクゲ、ススキ、菊、芙蓉と秋の草花が描かれています。

楓図》や《桜図》では画面の上下が切られていましたが、こちらの《松に秋草図》は描かれた時のサイズからそのままの姿で今に残っています

《楓図》や《桜図》も元々はこの大きさだったということですね!

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この《松に秋草図》については、研究者によっては「長谷川等伯の作品ではない」と考える人もいるといいます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

画面右側のススキが描かれている部分ですが、こちらはどこか幾何学的な表現になっています。
この点から等伯久蔵親子による合作と考える研究者もいるのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

しかしながら、樹木や草花の表現は圧巻の一言です。
闊達で覇気溢れるその筆遣いは、等伯その人の作であると考えると考える研究者も多くいます。

今回の記事はここまでになります。

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