2023年4月2日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【重要文化財の秘密 知られざる日本近代美術史】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回の記事では【西洋画】の作品についてまとめていきます。
高橋由一《鮭》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今回の展覧会で、洋画作品のトップバッターを飾るのが高橋由一の《鮭》です。
1967年に日本の洋画で一番最初に重要文化財に指定された作品です。
教科書に載っているくらい有名な作品ですね!
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その質感までも伝わってくるような、リアルな表現が見事です。
日本近代洋画の”記念碑的作品”といえます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
高橋由一は日本の洋画の礎を築いた画家です。
佐野藩の武士の家に生まれた由一は、元々は狩野派で日本画を学んでいましたが、西洋画と出会い、その道を極めました。
当時はまだ十分に西洋画の情報がない時代でしたので、手探りで技術を学んだのち、明治以降はその普及に尽力します。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
由一はこの作品を、行灯の薄暗い明かりの中で見せました。
その効果もあり「本物そっくりだ」と大評判になります。
由一の死後、この絵は東京美術学校の所蔵となりました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
解説の大谷省吾氏は高橋由一について、「明治に入って本格的に油絵を描き始めたという意味では、高橋由一が最初と言っていいんじゃないかなと。パイオニアですね」と語っています。
そういった背景から西洋画の重文指定の第一号になったのかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
”鮭”を画題に選んだ理由としては、西洋絵画のジャンルである”静物画”からヒントを得た可能性が考えられます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この《鮭》という作品の面白い点は、体の一部が切られ、赤身の部分が見えていることです。
由一が西洋画を知った時に一番驚いた点が、”質感の表現”だったといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
あえて赤身の部分を描く事で、外側の皮の部分との質感の違いを表現する狙いがあったのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
質感にこだわったのは鮭だけではありません。
縄の部分についても、けば立った様子などリアルな質感になっています。
このように対象ごとにその質感が描き分けられているのです。
そしてこうした表現は後の画家にも受け継がれていきます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
大正時代に入ると『麗子像』でおなじみの岸田劉生にその影響が見られます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらの《麗子微笑》という作品の肩掛けの毛糸の質感表現は、ものすごい真に迫る描き方をしています。
これについて「きっとアプローチの仕方は同じだと思います」と大谷省吾氏は言います。
次ページでは青木繁の《わだつみのいろこの宮》、
萬鉄五郎《裸体美人》についてまとめています。