2017年7月28日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#245 国立西洋美術館「アルチンボルド展」~精巧・不思議!”だまし絵”の傑作が奇跡の集結~】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回は記事パート6でラストです。前回のパート5はこちら☚からご覧頂けます。
《コック/肉》
《コック/肉(The Cook)》
ジュゼッペ・アルチンボルド
ストックホルム国立美術館蔵
料理が今しがた運ばれて、蓋が開けられた瞬間です。
若鶏や子豚の丸焼きがリアルに表現されています。
じつはこの作品は《四季》や《四大元素》とは違った楽しみ方をアルチンボルドは用意しています。
この作品を逆さまにしてみると・・・
!
なんとこちらを見る人の顔になるのです!
これまでの”合成肖像画”にプラスして、上下逆さまにするだまし絵になっているのです。
《庭師/野菜》
《庭師/野菜(The Vegetable Gardener)》
ジュゼッペ・アルチンボルド
イタリア、クレモナ市立美術館蔵
今度は逆に人の顔に見える方から見てみましょう。
黒い帽子を被った人の顔が野菜で表現されています。
こちらも逆さまにしてみましょう。
ボウルに入った野菜の静物画になるのです。
じつは”静物画”というのはまだこの時代には独立したジャンルとして存在していないのです。
この時代は絵画の中に物語を盛り込んだ歴史画や、肖像画というのが絵画として描かれる題材でした。
この《庭師/野菜》はもしかすると”西洋美術史で初めての静物画”かもしれません。
《金属製の皿に載ったモモとブドウの葉》フィジーノ
”静物画”の話が出ましたので、ここで「アルチンボルド展」で展示されていた貴重な一枚をご紹介致します。
《金属製の皿に載ったモモとブドウの葉》1590-91年頃
ジョヴァンニ・アンブロージョ・フィジーノ
個人蔵
よく「最初の静物画」として出てくるのが、こちらのフィジーノの作品です。
西洋美術史を専攻した人ならば、一度は見た事のある作品と言っても過言ではありません。
この絵がヨーロッパ、少なくともイタリアでは初の静物画と言われています。
カラヴァッジョの《果物籠》の話をする際にこちらの作品が必ず”参考図案”として出てきます。
ミラノにはこのような”静物画”の伝統があり、カラヴァッジョもその流れにあるというのを説明するために、この絵がよく使われます。
作者のフィジーノ(1552年頃-1608)はアルチンボルドと同じミラノの画家です。
(アルチンボルドの方が20歳以上年上です)
フィジーノとアルチンボルドの親しい友人だったので、《庭師/野菜》といったアルチンボルドの作品を見ていた事が考えられます。
そうなると、アルチンボルドはフィジーノに影響を与え、フィジーノがカラヴァッジョに影響を与えていた事になるのです。
アルチンボルドは西洋美術史の中で、流れに属さない”奇抜な画家”のように捉えられています。
しかしそうではなく、レオナルド・ダ・ヴィンチの伝統や北方絵画の技法を受け継いでおり、その上で彼の得意とする合成肖像画が生まれたのです。
そこから「ものを写実的に描く」という技法がフィジーノを通じて、カラヴァッジョに受け継がれていきました。
つまり、アルチンボルドはダ・ヴィンチとカラヴァッジョをつなぐ重要な存在だったと言えるのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #245」
晩年のアルチンボルド
1587年、61歳の時にウィーンから故郷ミラノに帰ってきます。
しかしミラノはウィーンやプラハと距離があるので、皇帝の宮廷画家としての活躍っぷりは伝わっていませんでした。
恐らくアルチンボルドはそれを残念に思ったでしょう。
彼は後世に自分の業績や評価を伝える目的で、ミラノの学者に自らの伝記を書かせたりしました。
《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世(Vertumnus)》
ジュゼッペ・アルチンボルド
スウェーデン、スコークロステル城
ミラノに帰ってからもプラハにいるルドルフ2世との関係は続いていましたので、こちらの《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世》を送ったりしていました(1591年)。
その翌年にはルドルフ2世より”宮中伯”の称号を与えられています(1592年)。
そして1593年に66歳(もしくは67歳)でミラノで亡くなるのです。
「アルチンボルド展」で展示されたその他のアルチンボルド作品
ここからは今回ご紹介できなかったアルチンボルド展で展示された、彼の油彩作品をさらっと(笑)、まとめていきます。
《ソムリエ(ウェイター)(The Sommelier (Waiter))》1574年
ジュゼッペ・アルチンボルド
大阪新美術館建設準備室
《司書(The Librarian)》
ジュゼッペ・アルチンボルド
スウェーデン、スコークロステル城蔵
《法律家(The Jurist)》1566年
ジュゼッペ・アルチンボルド
スウェーデン、ストックホルム国立美術館蔵
いかかがでしたでしょうか。
「アルチンボルド展」の特集はここまでです。
最後までご覧頂きありがとうございました(*^-^*)
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