2017年7月28日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#245 国立西洋美術館「アルチンボルド展」~精巧・不思議!”だまし絵”の傑作が奇跡の集結~】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回は記事パート5です。前回のパート4はこちら☚からご覧頂けます。
《冬》
《冬(Winter)》1563年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ウィーン美術史美術館 絵画館
枯れちゃいましたね~
首もだいぶ…
首は年齢がでますからねぇ(笑)
確かに枯れていますが、味というかなんとも深みある一枚ではないでしょうか。
顔全体が枯れた木によって表されています。
目元は切り株の割れ目で表現されています。
唇は木から生えたキノコで、その周りに生えたコケは口ひげになっています。
首から飛び出しているレモン、じつは”冬の果物”と言われています。
「冬」というのは、”枯れて終わる”というだけではなく、次の春に循環していくという意味も込められています。
体の部分はマントのようなものでぐるっと覆われています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #245」
背中の部分には”M”の文字が半分だけ見えています。
これは献上したマクシミリアン2世のイニシャルです。
よって、この作品はマクシミリアン2世の肖像画とも言われています。
この当時マクシミリアン2世は30代半ばだったので、ここまでよぼよぼではありません。
こういう描かれ方をされてもあまり良い気にはならないと思いますが・・・
じつは古代ローマでは「冬」が季節の一番最初だと考えられていました。
ですので冬=皇帝の季節と言われていました。
アルチンボルドはこの作品で、その当時のマクシミリアン2世ではなく、将来の偉大なる皇帝としての彼の姿として描いたのかもしれません。
頭部も古代ローマの王冠のようにも見えます。
右下には画像では分かりにくいですが、「GIVSEPPE ARCIMBOLDO. F.」とサインがあり、これは「ジュゼッペ・アルチンボルド作」と書かれています。
裏面には「1563 HIEMS(冬)」と書かれている事から、献上したマクシミリアン2世が皇帝になる以前、『四季』の連作の一番最初に描かれたと考えられます。
《冬》ルーヴル美術館蔵
《冬》1573年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ルーヴル美術館蔵
こちらはルーヴル美術館に所蔵されている《冬》です。
描かれたのは最初の『四季』の連作から10年後の1573年です。
ウィーン美術史美術館所蔵のものと比べると、年老いた感が更に増した印象があります。
《水》
《水(Water)》1566年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ウィーン美術史美術館 絵画館
こちらの《水》は水の中の生き物という事で、魚など海や水辺の生き物によって構成されています。
まず描かれている動物の一つ一つが本当に上手く、アルチンボルドの描写力の高さが伺えます。
けれども縮尺は気にしないで描いている所もなんだかおもしろいです。
耳の上のアザラシとその正面にいる魚がほぼ同じサイズになっています。
アザラシと同じサイズの魚がいたら怖いですよね(笑)
アザラシの後ろのタツノオトシゴは完全に干からびています。
カエルはヨーロッパトノサマガエルという種類です。
このようにほとんど全ての種類が同定できるのが、アルチンボルドのすごい所と言えるでしょう。
描かれている生き物は全部で60種類以上です。
頭上には《冬》同様に王冠を表すために、赤いサンゴの枝やなんと水しぶきまで描き込まれています。
ウィーンは海に面していないので、ちゃんと生きた状態の海の生き物を観察するのはなかなか困難だったのかもしれません。
《四季》
《四季(Four Seasons in One Head)》1590年頃
ジュゼッペ・アルチンボルド
ワシントン、ナショナル・ギャラリー蔵
『四季』や『四大元素』の連作を描いてから約20年後、ウィーンからミラノに帰郷した後に描かれた作品です。
アルチンボルド晩年の頃(60代半ば)の作です。
この作品はアルチンボルドの友人であり人文主義者のグレゴリオ・コマニーニに送った作品です。
「四季」や「四大元素」は皇帝に送られた作品だったのに対し、友人に送ったものという点からも格式ばった作品というよりは、「自分の技量を見せつけてやろう」というようなテンションの作品です、
《四季》というタイトルの作品ですが、「春・夏・秋・冬」の全ての要素がこの一枚に盛り込まれています。
胸元から肩にかけての花の部分が「春」を表しています。
「夏」は同じ肩の部分の麦で表現されています。
耳元のサクランボも「夏」を表しています。
サクランボがイヤリングみたいでかわいいですね。
「秋」は頭部の果物、リンゴとブドウです。
顔そのものは枯れ木で表現されており、こちらが「冬」のイメージです。
これまでの『四季』や『四大元素』は全て真横からの肖像だったのに対し、この作品では四分の三正面の肖像画のような描かれ方が特徴的です。
それ故に彼の自画像ではないかとも言われています。
その一方で女性(おばあさん)ではないか言う説もあります。
確かにそう言われるとおばあさんにも見えますね!
アルチンボルドの作品の面白い所は、性別が判別できないという所にもあるのです。
角のような木の枝の剥けた所に、「ARCHIMBOLDUS F.」とサインが書かれています。
アルチンボルドの代表作『四季』の全てが詰め込まれた最晩年の傑作、彼の画業の集大成と言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
パート5はここまでです。
次のパート6が”アルチンボルド展”の記事のラストです!
こちら☚からご覧頂けます。
コメント
[…] いかがでしたでしょか。 パート4はここまでです。 続くパート5は『四季』と『四大元素』のそれぞれラスト! 《冬》と《水》についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]
[…] 今回は記事パート6でラストです。前回のパート5はこちら☚からご覧頂けます。 […]