2021年4月27日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#377 世界を魅了した天才絵師・渡辺省亭 知られざる全貌 〜ドガも驚嘆!鮮やかな花鳥画から、国宝・迎賓館の七宝額原画まで〜】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回は東京藝術大学大学美術館で2021年5月23日まで開催(4月25日から臨時休館)の展覧会、『渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-』についてまとめていきます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
渡辺省亭(わたなべせいてい、1852~1918)は明治期から大正期にかけて活躍した、特に花鳥画を得意とした日本画家です。
今回の展覧会が”国内初の回顧展”になっています。
展示作品数は約110点、うち約40点が初公開の作品です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
日本の建築界が総力をあげて、明治42年に造られた迎賓館赤坂離宮。
省亭はここの「花鳥の間」の室内装飾を手掛けました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
そんな大仕事をオファーされるほどの画家でありながら、知名度はなく、忘れられた存在になっています。
実際に省亭の研究が行われるようになったのは、ここ4~5年のことで、少し前までは専門家ですらよく知らない存在だったのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
「日本で知られていないのが意外で。逆に西洋美術を勉強している人は(省亭の事を)結構知っている。西洋美術をやっていると(省亭の)名前がでてくる」と山田五郎さんはいいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
解説の山下裕二先生は、省亭について「とにかく、めちゃくちゃ上手い!」と言います。
その技量は当時の画家の中でもトップクラスだとか。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
省亭は日本画家として、初めてヨーロッパに渡った人物でした。
1878(明治11)年に開催された「パリ万国博覧会」に作品を出品しています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
印象派の画家の前で絵を披露し、その席画をあの《踊り子》の絵でお馴染みのドガが生涯大切にしたといいます。
印象派時代のパリで人気を博した画家なのです。
その後ロンドンでも個展を開催しています。
なんだかすごい経歴の画家ですね!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
欧米の名だたる美術館には、省亭の作品が収蔵されています。
海外でそれだけ人気のある画家だと、日本でも名前が残るように感じますが…
存命中は日本でも人気のある画家でした。
しかし徐々に忘れられた存在になっていきました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
そうなってしまった最大の理由は、省亭が作品を展覧会に出品しなくなったことが挙げられます。
当時は文展を始めとする公式な展覧会に出品し、賞を獲った画家が評価されていたのです。
そんな中で省亭は「展覧会に出してもしょうがない」と言い、浅草に居を構え、下町の旦那衆から絵の注文を受けていたのです。
迎賓館赤坂離宮 花鳥の間の装飾
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
まず最初にご紹介するのは、迎賓館赤坂離宮の「花鳥の間」の装飾、その下絵です。
ここには省亭が描いた下絵を基にした七宝焼が装飾されています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の展覧会では、省亭の下絵そのもので「花鳥の間」が再現されています。
じつは花鳥の間の装飾は、省亭のチームと、もう一つ別のチームとのコンペ形式になっていました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
省亭は七宝家の濤川惣助(なみかわそうすけ)とタッグを組みます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
もう一つのいわばライバルチームは、画家・荒木寛畝(あらきかんぽ)と七宝家・並河靖之(なみかわやすゆき)のペアでした。
この2つのチームが競い、結局省亭のペアが装飾を手掛ける事となりました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
両七宝家の名字が「なみかわ」ですが、これは偶然で親族関係などはないといいます。
並河靖之は京都を拠点に、一方省亭と組んだ濤川惣助は東京で活動していました。
「東西のナミカワ」や「二人のナミカワ」と呼ばれる、ライバル同士の関係性でした。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
また同じ七宝家でも、二人はそれぞれ「有線七宝」と「無線七宝」と技法も異なっていました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
「有線七宝」は模様の縁に、金属の線が入る特徴があります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
一方の「無線七宝」は釉薬を入れたあとに、金属の枠の線を抜きます。
そうする事で隣あった色が、微妙に混ざり合い、グラデーションのようになります。
これにより、より絵画的な表現が可能になるのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
省亭のペアがコンペに勝った要因はなんだったのでしょうか?
「花鳥の間」は元々、食事や宴会を行う事を想定して作られた場所でした。
そこで天井にはフランスから輸入した、狩猟の絵が飾られていました。
その天井画とのバランスも考慮して、省亭の絵と無線七宝の方が、装飾に相応しいという事になったのです。
《淡紅鸚哥に科木》
省亭が描いた実際の下絵を見ていきましょう。
淡紅鸚哥(ももいろいんこ)が科木(しなのき)にとまっています。
顔から胴体のグラデーションが特に綺麗ですね。
通常、日本画ですと細かく描いていきますが、省亭はそこを”ぼかし”で表現しています。
ここにはヨーロッパで油絵を見た経験が生かされています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
下絵というのはもったいないほどの完成度です。
実際に迎賓館にある七宝焼も、この下絵に忠実に再現されています。
科の実の立体感、陰影のつけ方も日本画にはあまり見られないものです。
一方、木の表現は日本古来の水墨のにじみで表現されています。
《山翡翠・翡翠に柳》
こちらでは山翡翠(やませみ)と翡翠(かわせみ)が柳にとまっています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
カワセミの羽の色の表現が見事です。
宝石の”ひすい”も、この鳥の”カワセミ”も、どちらも「翡翠」と書きます。
「カワセミの羽根の色のように綺麗な宝石」という事でこの字が使われるようになったとか。
「省亭は鳥に対する観察眼が本当にすごい」と山下先生はいいます。
また「ただリアルなだけでなく、ものすごくシャープで、その上で立体感がでている。ここまでのレベルで描ける人はちょっと他にいない」(山下先生)
それだけの実力のある画家でしたので、後半生、文展に出品された絵を見て、「あいつは全然描けてねぇな」と酷評したり、京都画壇の重鎮である竹内栖鳳の事をボロカスに批判したりした、なんてエピソードも残されています。
今回の記事はここまでになります。
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