【ぶらぶら美術博物館】《そして妖精たちは服を持って逃げた》【怖い絵展①】

ぶらぶら美術・博物館

2017年11月24日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#253 英国の至宝が初来日!「怖い絵」展~名画に潜む“恐怖”を、ベストセラー著者・中野京子さん解説で!~】の回をまとめました。

2017年にたいへん話題となった「怖い絵展」。
展覧会のキャッチフレーズは「その闇を知ったとき、名画は違う顔を見せる。
一見すると普通の絵にように見えますが、作品の背景にある物語や歴史が分かると段々と怖くなってくる、そんな作品を集めた展覧会でした。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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《そして妖精たちは服を持って逃げた》チャールズ・シムズ


《そして妖精たちは服を持って逃げた》1819-19年頃
チャールズ・シムズ
イングランド、リーズ美術館蔵

この作品に添えられたキャッチフレーズは「小さい人、みぃつけた。
一見すると、親子が外で日向ぼっこをしているような可愛らしい作品に見えるこの作品。

キャッチフレーズにある「小さい人」というのは、画面右下の妖精たちの事をいっています。

タイトルの通り、妖精たちが子供から服を持ち去っている場面を描いています。
服を奪われた子供は迷惑そうな顔をしています。
母親も妖精と洋服に手を伸ばしていますが、そこまで必死に取り返そうとしているようには見えません。

イギリスでは19世紀の終わり頃に、産業革命の反作用妖精がブームとなっていました。
元々イギリスは幽霊などのオカルト的な話が好きな国で、日本と似ているといいます。
湿気が多く雨が降ったり、霧や深い森があると”人ならざるものがいる”という考えや不安感を抱く点で共通しています。
逆に地中海の方に行くと、そういうのはなくなるといいます。

特にケルト民族(古代ヨーロッパに中央部に住んでいた民族、今日でもイギリス・フランスの一部に住んでいる)の伝統では妖精が普通に存在します(例としてピーターパンのティンカーベルなど)。

そういった背景もあり、当時のイギリスでは妖精ブームが起こり、絵画の世界では妖精画家という妖精専門に描く人もいたほどです。

この作品を描いたチャールズ・シムズも妖精画家のカテゴリーに組み入れられる事があるといいます。

画家チャールズ・シムズについて

チャールズ・シムズは19世紀の終わりから20世紀初頭にイギリスで活躍した画家です。
肖像画や風景画、装飾芸術などを手掛けました。

1914年に起こった第一次世界大戦では、長男が戦死してしまいます。
また自身も戦争画家として戦地に赴いていました。

これまでにない大規模な戦争、息子も含む多くの人が亡くなっていく光景をみたシムズは精神を病んでしまいます。
この《そして妖精たちは服を持って逃げた》は終戦直後に描かれた作品です。

つまり、ここでは息子の服が取られているだけですが、実際には彼の息子自身が戦争に取られてしまっているのです。

その後シムズは53歳で入水自殺をしています。

子供の傍らに置かれた帽子も、この子のものしては少し大きい気がします。
この帽子も誰のものなのでしょうか・・・

コティングリー妖精事件

この時代の妖精にまつわるエピソードで外すことができないのが「コティングリー妖精事件」です。

画像出展元:wikipedia(Cottingley Fairies)より

こちらの写真を見た事ある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
コティングリー妖精事件」とは、1916年頃にイギリスのコティングリー村の二人の少女が作った合成写真が「本物ではないか?」と騒動になった事件です。

もちろんですがこの写真は少女たちが作った作りものの写真です。
しかしこれを本物だと信じてしまった人たちがおり、その中には「シャーロック・ホームズ」の作者のコナン・ドイルもいました。
彼はこの写真を見て、完全に信じてしまったといいます。

コナン・ドイルはオカルトマニアであり心霊研究家でもあったといいます。
実際に彼の父親や叔父さんも妖精画家だったので、ここからも当時のイギリスでいかに妖精がブームになっていたのかが分かります。
余談ですが、栃木県の宇都宮にある「うつのみや妖精ミュージアム」には、そのコナン・ドイルの叔父さんの作品が展示されています。

この写真は少女たちがふざけて作った写真のもかかわらず、本物だと著名人からお墨付きを付けられた事により、作った当人たちは大変困惑しました。
結局コナン・ドイルが亡くなった後に「あれは作りものでした」と発表するにいたりました。

その時は誰もが「そんなの知っとるわい」という

状態だったそうですが(笑)

妖精にまつわる怖い絵、いかがでしたでしょうか。
続いては「美女の甘い誘惑」にまつわる怖い作品をご紹介します。
パート2はこちら☚からどうぞ。

コメント

  1. […] 番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。 前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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