【ぶらぶら美術博物館】男を惑わす美女の怖~い作品【怖い絵展②】

ぶらぶら美術・博物館

2017年11月24日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#253 英国の至宝が初来日!「怖い絵」展~名画に潜む“恐怖”を、ベストセラー著者・中野京子さん解説で!~】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。

今回のパート2では美女の甘い誘惑」にまつわる怖い絵をご紹介します。

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《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》


《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》1891年
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
オールダム美術館蔵

こちらも見た感じ、特に怖い絵という雰囲気はありませんね・・・
普通に綺麗な女性が描かれた作品といったところでしょうか。

しかしこの美女、こわ~い人なんですよ。

描かれているのギリシャ神話の一場面です。
トロイア戦争を終えたオデュッセウスが部下を連れて戦地から帰る際に、この女性のいる島にたどり着きます。
この女性、実はキルケーという名前の魔女だったのです。

オデュッセウスの部下が先に島に降りて、様子を見に行きますが中々帰ってきません。
心配になったオデュッセウスが迎えに行き、このキルケーと対面する。
この作品はその場面を描いています。

キルケーの後方が鏡になっており、そこに映っているのがオデュッセウスです。
オデュッセウスはギリシャの知将で、トロイの木馬を考えた人でした。

じつはなかなか帰ってこなかった部下もここには描かれています。
彼等はどうなってしまったのでしょうか?

なんと部下たちはキルケーの魔術によって””にされていたのです。
キルケーは男たちを惑わして、右手に掲げた魔酒を飲ませます。
そして左手に持つ杖でポンと叩くと、豚に変えられてしまうのです。

それを踏まえて顔を見ると、急に怖い表情に見えてきませんか?

それではオデュッセウスはどうなったのでしょう?
オデュッセウスも部下同様に魔酒を飲んでしまいますが、その前に毒消しを飲んでいたので豚に変えられずに済みました。
その後部下たちも人間に戻してもらいます。

しかしそこから面白い事に、オデュッセウスキルケ―は恋愛関係になります。
一年間この島で過ごすのです。

豚にはされなかったものの、結局オデュッセウスキルケ―に惑わされている、という事ですね。

その後一年間この島で過ごしたのち、部下たちの勧めもあり島を離れる事になります。
その際にキルケ―
これから行く海には、もっと怖いセイレーンという魔女がいる。
彼女たちの歌声は絶対に聞かぬように
と忠告をするのでした・・・。

画家:ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス

この作品を描いたジョン・ウィリアム・ウォーターハウスは(John William Waterhouse、1849-1917)はイギリス・ヴィクトリア朝の画家です。
彼の作品は典麗な女性像で知られています。


《シャロットの女》1888年
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
ロンドン、テート・ブリテン蔵

(「怖い絵展」の出展作品ではありません)

こちらの《シャロットの女》が彼の代表作ともいえる作品です。

この時代、19世紀末はキルケ―のようなファム・ファタル(運命の女・魔性の女)を描くことが流行します。
例えばクリムトの《ユディトⅠ》やギュスターヴ・モローのサロメを題材にした作品などがそれにあたります。

《オデュッセウスとセイレーン》


《オデュッセウスとセイレーン》1909年
ハーバード・ジェイムズ・ドレイバー
イングランド、リーズ美術館蔵

それでは次の作品です。

キルケーと別れて島を出たオデュッセウスと部下たち。
この作品はそのキルケーがまさに忠告した、海の魔女セイレーンと彼らが出くわしている場面を描いています。

描かれた時代は先のウォーターハウスの作品と同時代になります。
ハーバード・ジェイムズ・ドレイバーはイギリスのアカデミズムの画家です。

セイレーンというのは美しい歌声で船乗りを狂わせる魔女です。
その歌声を聞かないために部下たちは皆、耳栓をしています。

しかし!
オデュッセウスは聞いてみたいという興味に打ち勝つ事ができずに、耳栓をしていませんでした。
左上部で縛り付けられているのがオデュッセウスです。

歌声を聞いて精神が錯乱してしまったのでしょう。
完全に目が行っちゃってます。

歌声を聞いてしまったのがオデュッセウスだけだったので、舟は転覆せず、命は助かりました。
しかし全員が聞いていたら、皆がオデュッセウスのようになって舟はたちまち沈んでしまった事でしょう。

この作品の素晴らしいのは「」が聴こえてくるかのような見事な表現です。
セイレーンはみな口を開いて、歌声を発しているのが分かります。
ちなみにセイレーンというのは、今日のサイレンの語源になっており、また当時はセイレーンという言葉が”娼婦”の代名詞として使われていました。

さらになびく髪や布の表現からは吹き荒れる海風の音が聞こえてきます。
そして舟の縁にあたる波の音
それらがうまく一つの画面に表現されています。

セイレーンというのは元々は「鳥」として表されていましたが、時代が進むにつれて「人魚」として表現されるようになっていきます。
この時代のイギリスでは、セイレーンが一台ムーヴメントで多くの画家がこの主題を描いています。

また先の《オデュッセウスに杯を差し出すキルケ―》同様に、ファム・ファタル(男を惑わす魅惑的な女性)的な要素も含んだ作品です。

いかがでしたでしょうか。パート2はここまでです。
続くパート3では「母の愛情」をテーマにした作品をまとめていきます。
こちら☚からご覧頂けます。

コメント

  1. […] 妖精にまつわる怖い絵、いかがでしたでしょうか。 続いては「美女の甘い誘惑」にまつわる怖い作品をご紹介します。 パート2はこちら☚からどうぞ。 […]

  2. […] 番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。 前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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