【アートステージ】冬を描いた名画【美術番組まとめ】

アート・ステージ

2019年1月26日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【冬を描いた名画】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

今回のテーマは「」です。
画家たちが描いた冬の名画をご紹介します。

スポンサーリンク

ブリューゲル(父)《雪中の狩人(冬)》


《雪中の狩人(冬)》1565年
ピーテル・ブリューゲル(父)
ウィーン美術史美術館蔵

ピーテル・ブリューゲル(父)は、16世紀フランドルを代表する画家で、画家一族と言われた”ブリューゲル一族”の祖ともいえる人物です。

冬の澄み渡った空気の中、遠くまで見渡せる広々とした風景が広がります。


画面手前には猟犬を引き連れた狩人の姿。
一日の労働を終え帰る所だと思われますが、その足取りは重いようです。

それもそのはず。この日獲れたのは男の背中に見えるキツネ一匹だけなのです。
狩人たちのテンションが猟犬たちにも伝わったのでしょう。彼らも落ち込んでいるのが分かります。


画面奥には凍った湖の上で遊ぶ人々の姿が見えます。
疲れ切った狩人たちとは対照的に、冬を満喫しているようです。


その奥には冬山がそびえたちます。
ブリューゲル(父)は、近景から遠景までを平面のキャンバスに巧みに配置して、遠近感を演出しています。

風に乗って空を舞う鳥が、画面に深い余韻を与えています。
目には見えない風や大気の流れを、この鳥の描写で表しているのです。


「冬」を描いた名画として良く知られているこの作品ですが、じつは春夏秋冬の連作の一枚です。
ブリューゲル(父)は、季節と共に生きる人間の営みを描いたのです。

詩情溢れる穏やかな作品ですが、描かれた当時のオランダは宗教改革の真っただ中にありました。
ブリューゲル(父)は、激動の時代の中で、昔と変わらない穏やかな田園生活を理想的なものとして描いているのです。

アーフェルカンプ《スケートをする人々のいる冬景色》


《スケートをする人々のいる冬景色》1610年頃
ヘンドリック・アーフェルカンプ
アムステルダム国立美術館蔵

ヘンドリック・アーフェルカンプ(1585~1634)は、17世紀前半のオランダで活躍した画家です。アムステルダム生まれですが、その生涯のほとんどをオランダ東部のカンペンという街で過ごしました。
また、生まれつき聴覚障害を持っていました。

この《スケートをする人々のいる冬景色》では、地平線を高い位置にとる事で、大地を広々と描いています。
前のブリューゲル(父)の影響を受けているのが分かります。

画中にはスケートやそり遊びなど、冬を満喫する人々の姿がびっちりと描かれています。


こちらではゴルフの元になった、コルフというゲームを楽しむ人の姿も見えます。
今から400年前の冬を満喫する人々の姿です。

画面には人間や動物の営み以外にも、井戸や狩猟道具など当時の様子がわかるものが数多く描かれています。
この作品は当時を知るための重要な資料という側面もあるのです。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

アーフェルカンプブリューゲルが生きた時代は、「小氷期(しょうひょうき)」と呼ばれる寒い時代でした。
そのためオランダや北方のフランドルでは、冬を描いた作品が多く登場したのです。

ロイスダール《冬景色》


《冬景色》1670年頃
ヤコブ・ファン・ロイスダール
アムステルダム国立美術館蔵

ヤコブ・ファン・ロイスダール(1628頃~1682)は17世紀のオランダ絵画の黄金期に最も評価された風景画家の一人です。
繊細かつ雄大な作風で知られています。

この《冬景色》という作品では、雪が一面を覆い、寒々とした光景が描かれています。
空にはどこか不吉な印象の黒い雲が見えます。

人工物は数軒の家とひときわ高い塔、それだけです。
ここには厳しい冬の本質だけが描かれているようです。


行き交う人の数もまばらで、そこに活気はありません。
ブリューゲルらが描いた人々の息遣いははなく、孤独感や寂しさが漂います

ロイスダールは厳しい眼差しで、自然と真摯に向き合いました。
日本ではあまり知られていませんが、ヨーロッパでは高く評価されています。

あの文豪ゲーテは、ロイスダールを”詩人画家”と称えました。

フリードリヒ《氷の海》

続いての作品はそのゲーテと親しかった、ドイツロマン派の巨匠フリードリヒの作品をご紹介します。


《氷の海》1823-24年
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
ハンブルク美術館蔵

この《氷の海》は《雲海の上の旅人》と並ぶフリードリヒの代表作です。

描かれているのは、砕けて重なりあった流氷の固まりと、荒々しい肌を見せる岩礁です。
自然のダイナミックな存在感が見る者を圧倒します。


画面をよく見てみると、難破した船が流氷に飲み込まれるように横たわっています。
まるで玩具のような扱いで、いかに人工物、そして人間という存在が自然の前では無力であるかというのを表しているようです。


流氷の先端はまるで空に突き刺さるように天にそびえています。
その先には柔らかな光に満ちた、穏やかな空が広がります。
フリードリヒはこの作品で、単に恐怖心を表したかったわけではありません。

フリードリヒ初期の自画像

フリードリヒが13歳の時にある事故が起きました。
彼と弟のクリストフは、ふたりでスケート遊びをしていました。
その時氷が割れ、フリードリヒは溺れかけてしまいます。
それ助けようとした弟が逆に命を落としてしまったのです。

フリードリヒは生涯、その自責の念を抱いて生きていました。


激しい描写の凍った海と、対照的な穏やかな空。
この作品には悲劇の向こう側に希望を見出そうとした、フリードリヒの必死の祈りが込められているようです。

いかがでしたでしょうか。
多くの画家を魅了した冬景色の数々。
そのどれを見ても、他の季節では見られない冬ならではの詩情に溢れています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました