【ぶら美まとめ】《春》と《大気》【アルチンボルド展②】

ぶらぶら美術・博物館

2017年7月28日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#245 国立西洋美術館「アルチンボルド展」~精巧・不思議!”だまし絵”の傑作が奇跡の集結~】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回は記事パート2です。前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。
今回は『四季』から《》と『四代元素』から《大気》を取り上げていきます。

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『四季』と『四台元素』

2017年のアルチンボルド展の目玉は、彼の代表作である
四季(春・夏・秋・冬)
四代元素(大気・火・大地・水)
8枚が一堂に会した事です。

このシリーズは皇帝にも気に入られ、人気もあったのでアルチンボルドは複数枚描いています。
けれども8枚すべて揃って展示されている美術館はありません。

ルーヴル美術館では四季』の4枚は揃って見る事ができますが、
四代元素』が揃って見られる所はありません

そういった意味でもたいへん貴重な展覧会だったのです。
ここからはその『四季』と『四代元素』をそれぞれ見ていきます。

《春》


《春(Spring)》1563年
ジュゼッペ・アルチンボルド
スペイン・マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館蔵

これは実物はとてつもなく綺麗でしたね。
個人的に今まで見た絵画トップ10に入るといっても過言ではありません。
綺麗すぎて鳥肌が立ったのを覚えています。

春にまつわる草花で、若い女性の姿が構成されています。
性別は少し分かりにくい気もしますが・・・

この絵の特定のモデルはいないとされています。
「春の擬人像」と言った所でしょうか。

ラテン語やイタリア語において、春と夏は女性名詞になります。
秋と冬は男性名詞なので、アルチンボルドもそこからそれぞれの性別を描き分けたと考えられます。

アルチンボルドがすごいのは描かれている草花などがほぼすべて同定できる事です。
ただ単に”っぽいもの”で画面を構成しているのではなく、実際にある草花で描いています。
その数はおよそ80種類、ある意味”図鑑”的な側面もあるのです。

珍しい草花であったり見た事もないようなものも、図鑑を見るようにこの一枚の絵に凝縮されているのです。
なのでこの当時見た人もたいへん喜んだことでしょう。

時代はちょうど大航海時代が始まった頃でした。
ヨーロッパでは見る事のできない様々なものが、海の向こうから入ってきました。
当時の皇帝はそういったものを「全てを集めたい」と考えていました。
それにより「自分の支配地域がこんな遠くまで及んでいるんだ、こんなに広いんだ」という事をアピールする狙いがあったのです。

やがてそのような皇帝や王室のコレクションが現代の博物館の元になっていくのです。

アルチンボルドが仕えたマクシミリアン2世ルドルフ2世は、特に珍しいものを収集するのが好きでした。
皇帝が珍しいものを手に入れた時は、それをスケッチするという役目もアルチンボルドはしていました。

ここでそれぞれどんな草花で描かれているか見ていきます。


目はパンジーで表現されています。


耳はボタンです。


頬は赤いバラで可愛らしく描かれています。
細かいところまで描かれており、歯はスズランで表現しています。

こちらのバージョンの《》は現在スペイン・マドリードの美術館に所蔵されています。
これにはウィーンの皇帝からスペイン王フェリペ2世の元に送られたのが理由と考えられています。

《春》の別バージョン

同じ《》の別バージョンがルーヴル美術館に所蔵されています。


《春》1573年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ルーヴル美術館蔵

《大気》


《大気(Air)
ジュゼッペ・アルチンボルド(?)
スイス、個人蔵

『四季』の4枚と『四代元素』の4枚はそれぞれがセットになるようになっています。
前述の《》に対応するのがこちらの《大気》です。

一見顔には見えない方もいると思いますが、分かりますでしょうか?
右側を向いた横顔になっています。

大気を駆け巡るという事で、””をモチーフに描かれています。

若干気持ちが悪いという方もいるかもしれませんね。。。

このような多くの鳥が調和を持って描かれているというのは、ハプスブルク家の支配下が”平和”であり、且つ”繁栄”している事を表していると言えます。


クジャクの羽がハプスブルク家の紋章に使われており、所縁のある鳥といえます。
クジャクの横に描かれている胸元のは、皇帝を象徴する鳥でもあります。

この時代は宮廷という場所が文化の中心地でした。
学者や芸術家といった教養にある人たちが出入りする中で、アルチンボルドは彼らをいかに驚かせるかという事に頭をひねっていたのでしょう。

描くのも時間が掛かりそうですが、その前に画面構成を考えるのに時間が取られそうです。
なので生涯で約30点しか描けなかったのかもしれませんね。

この個人蔵の《大気》については様々な意見がでています。
他の『四代元素』の作品と微妙にサイズが違う点や、カンヴァスに描かれている点などからコピーもしくは工房作であると考える研究者もいます。

ただアルチンボルドが「鳥を構成して頭部を描いた」という当時の記述が残されているので、今作がどのような位置関係は別にしても、アルチンボルドがこの作品のような《大気》を制作した事は間違いないと考えられます。

いかがでしたでしょうか。
パート2はここまでです。
次のパート3では、続く《》、そして《》についてまとめていきます。
こちら☚からご覧ください。

 

 

コメント

  1. […] いかがでしたでしょうか。 パート1はここまでです。 続くパート2では『四季』シリーズから《春》、そして『四代元素』の中から『大気』についてご紹介します。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

  2. […] 今回は記事パート3です。前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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