2017年7月28日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#245 国立西洋美術館「アルチンボルド展」~精巧・不思議!”だまし絵”の傑作が奇跡の集結~】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回は記事パート3です。前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。
36歳でウィーンへ、そして宮廷画家に
イタリアのミラノで生まれたアルチンボルド。
彼は1562年、36歳の頃にアルプスを越えてオーストリアのウィーンに出ます。
ウィーンに出る以前に、画家として大きな実績があったかは定かではありません。
なのでどういう経緯で、また何が評価をされてウィーンに呼ばれたのかが分かっていません。
ウィーンに到着して間もない1563年から『四季』のシリーズが描かれます。
その後1566年から『四大元素』のシリーズが制作されます。
そして1569年の元旦に新年の贈り物として、皇帝マクシミリアン2世に献上されています。
アルチンボルドは皇帝に作品の意図をきちん伝えるために、同郷ミラノの友人に絵の解釈や解説になる詩を書いてもらっています。
献上の際にはその詩も添えて、皇帝の手元に届きました。
その甲斐もあって、マクシミリアン2世はアルチンボルドの作品を見てたいへん喜んだといいます。
気に入ったあまり皇帝は、アルチンボルドに同じシリーズを再度作るように命じます。
なので、複数枚あるのですね!
今回の「アルチンボルド展」では幾つかのバージョンから8点が集められて展示されました。
《夏》
《夏(Summer)》1572年
ジュゼッペ・アルチンボルド
アメリカ、デンヴァー美術館蔵
《夏》もいいですね~
かっこいい!!
鼻はズッキーニで、頬は桃で表現されています。
首から下は麦で描かれています。
トウモロコシは当時ヨーロッパに伝わったばかりの最新の野菜でした。
コロンブスが1492年にアメリカ大陸を発見して、それを機にヨーロッパに入ってきたのです。
これを見た当時の人の中にはトウモロコシを知らない人もいた事でしょう。
その横のナスも元々はインド原産と言われています。
面白い事にこの《夏》ではトマトが描かれていません。
今でこそ”イタリアン”というと、”トマト”のイメージですが、トマトは南米が原産です。
アルチンボルドが仕えたマクシミリアン2世は、自然科学を愛好しており植物園を所有していました。
そこで栽培されたものをアルチンボルドがスケッチしました。
この《夏》では、そういったスケッチを基にして制作されました。
つまりここには「皇帝が様々なものを所有しているぞ」という”権力の象徴”としての意味も含まれているのです。
じつは襟の所にアルチンボルドのサインがあります。
(画像ではちょっと見づらいですが)
二行になっており上が「GIVSEPPE(ジュゼッペ)」で、
下が「ARCIMBOLDO.P」になっています。
そして肩の所には「1572」と制作年が記載されています。
《夏》の別バージョン
本作《夏》の別バージョンがルーヴル美術館に収蔵されていますので、そちらもご紹介します。
《夏》1573年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ルーヴル美術館蔵
僕はデンヴァー美術館版の方が好きですね!
《火》
《火(Fire)》
ジュゼッペ・アルチンボルド
スイス、個人蔵
《夏》に対応する『四大元素』がこちらの《火》になります。
基本的に『四季』のシリーズは植物で、『四大元素』は動物で構成されていますが、本作《火》のみ”火にまつわるもの”で描かれています。
描かれているものを順番に見ていきましょう。
まず頭はそのまんま、薪が燃えている様子で表されています。
あごはオイルランプ、頬にあるごつっとした塊は火打ち石です。
その火打ち石をカチカチと叩く火打ち金が目鼻、そして耳に使われています。
おでこに見えるバンダナのようなものは導火線です。
首飾りが付けられていますが、その中央に羊のモチーフがあります。
これは「金羊毛騎士団」の紋章です。
「金羊毛騎士団」の頭首であるという事が皇帝の証だったのです。
なのでこの紋章があるという事は、「ハプスブルク家のものだな」と当時に人は一目で分かったのです。
首飾りの横には大砲も描かれています。
火に表すモチーフだけではなく、武器(大砲や鉄砲)も描くことで、「ハプスブルク家の軍事力」も誇示する狙いがあると考えられます。
この《火》という作品の第1バージョンはウィーン美術史美術館に収蔵されています。
本作は第2バージョン、もしくはコピーと考えられています。
それでは、ウィーン美術史美術館所蔵の《火》を見てみましょう。
《火》ウィーン美術史美術館蔵
《火》1566年
ジュゼッペ・アルチンボルド
ウィーン美術史美術館蔵
こちらのバージョンの方が画面が明るく、また仕上げも丁寧(特に首飾りのところ)な印象を受けます。
頭部の薪が燃える表現もこちらの方がリアルに描かれています。
《火》だとウィーン美術史美術館の方がいいですね!
いかがでしたでしょうか。
パート3はここまでです。
次のパート4では、《秋》と《大地》についてまとめていきます!
こちら☚からご覧頂けます。
コメント
[…] いかがでしたでしょうか。 パート2はここまでです。 次のパート3では、続く《夏》、そして《火》についてまとめていきます。 こちら☚からご覧ください。 […]
[…] 今回は記事パート4です。前回のパート3はこちら☚からご覧頂けます。 […]