2019年11月19日にBS日テレで放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#327 国立西洋美術館「ハプスブルク展」】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
イントロダクション
2019年は日本とオーストリアの国交150周年の記念の年になります。
今回の「ハプスブルク展」はそれを記念した展覧会です。
*現在は既に終了しています。
そもそも「ハプスブルク家」とは、中世から20世紀初頭まで広大な領地を持っていた、ヨーロッパの名門貴族です。
ハプスブルク家の人々はその莫大な富やネットワークを背景に、様々な美術工芸品を収集しました。
その主要なコレクションは現在、ウィーン美術史美術館に保管されています。
今回の展覧会はそのウィーン美術史美術館の協力のもと、世界屈指のハプスブルク家のコレクションが展示されます。
《ヴュルテンベルク公ウルリッヒ(1487-1550)の実践および槍試合用溝付き甲冑》
画像出展元:「ハプスブルク展」公式図録より
こちらは、ヴィルヘルム・フォン・ヴォルムスという当時の人気甲冑師が制作した甲冑です。
とても凝ったデザインとなっており、全体に溝状の装飾が施されています。
この溝状の装飾技法はフルーティングと呼ばれます。
太陽の下でこの甲冑を身に纏うと、光の反射の効果により着用者の姿は魅力的に演出されます。
ウエストがかなり細いように見えますが、当時の流行のデザインだったようです。
この甲冑自体が実戦で使用されたかどうかは定かではありませんが、仕様は実戦向きに造られています。
例えば肩の部分は、右と左で形状が異なっているのが分かります。
左の方が大きなプレートが付けられていますが、これは敵の攻撃からの防御性を高める役割をしています。
一方の右側は、自ら攻撃をする際に邪魔にならぬよう、動かしやすい形状になっています。
顔の部分を見ていただくと、なかなかにひょうきんな顔をしていますね。
これは実戦以外にも、カーニバルの槍試合の時など催しの際にも使うためだったと考えられます。
そういった実戦ではない、お遊びの場で使うためのユーモアもデザインの取り入れたのでしょう。
《徒歩槍試合用甲冑、オーストリア大公フェルディナント2世(1529-1595)の「鷲の紋章付き甲冑セット」より》
画像出展元:「ハプスブルク展」公式図録より
こちらの甲冑は馬には乗らずに、地面で行う槍試合用の甲冑です。
ですので歩きやすいように、裾がスカートのようになっています。
こちらには金を用いた高価な装飾が施されている事からも、実戦には使用されていないと考えられます。
制作者のイェルク・ゾイゼンホーファーは宮廷付きの甲冑師でした。
この「鷲の紋章付き甲冑セット」の制作の報酬で、イェルクは1258フローリンという額の報酬を受け取っています。
これは当時の高級官吏の年収のおよそ12倍にあたります。
注文主は皇帝フェルディナント1世で、息子の為にこの甲冑を発注しました。
その息子というのが、このような高価な甲冑をいくつもコレクションしていた、オーストリア大公フェルディナント2世です。
次にそのフェルディナント2世の肖像画を見てみましょう。
《オーストリア大公フェルディナント2世(1529-1595)の肖像》
画像出展元:「ハプスブルク展」公式図録より
フェルディナント2世が19世の時の肖像画です。
描いたのは、ヤーコプ・ザイネッガー。
画家にもかかわらず、貴族になるほど出世した彼は、当時の統治者の全身肖像画を数多く描きあのティツィアーノの手本にもなりました。
フェルディナント2世はハプスブルク家きっての大コレクターでした。
またオーストリアのチロル地方にアンブラス城という城を持っていました。
城内には、クンスト・ウント・ヴンダーカマー(日本語に訳すと「芸術と驚異の部屋」)というコレクション室を設けて、ありとあらゆるものを集めました。
その当時の王様は世界中の珍しいものを集めて、ブンダー・カマー(驚異の部屋)やクンスト・カマー(芸術の部屋)を作りました。
これらが今の西洋の美術館や博物館の元となっているのです。
《角杯(グリフィンの鉤爪)》
画像出展元:公式図録より
グリフィンとは伝説上の生き物で、鷲の上半身とライオンの下半身を持ち合わせているとされています。
動物の角を杯として使用することは、この時代によく見られました。
同時代の絵画などでも見る事ができます。
また「グリフィンの鉤爪(かぎづめ)」には、飲み物に毒が入っていればそれを解毒する作用があると信じられていました。
フェルディナント2世はこのような、美術工芸品を大量に収集してコレクションを充実させました。
そしてこのフェルディナント2世に憧れたのが、彼の甥にあたるルドルフ2世でした。
パート1は一旦ここまでで、パート2ではそのルドルフ2世のコレクションについてまとめていきます。
【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅱ.ルドルフ2世のコレクション》
コメント
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[…] 前回のパート1・2はこちらからご覧頂けます☟☟ 【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅰ.フェルディナント2世のコレクション》 […]