【国立西洋美術館】プラド美術館展②【ぶらぶら美術館】

ぶらぶら美術・博物館

2018年3月9日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#262 “画家の中の画家”ベラスケス一挙来日!「プラド美術館展」~ルーベンス、ティツィアーノ・・・王室が誇るスペイン絵画黄金期の名画たち~】の回をまとめました。

今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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《狩猟服姿のフェリペ4世》ベラスケス


《狩猟服姿のフェリペ4世》1632-34年
ディエゴ・ベラスケス
プラド美術館蔵

ベラスケスは24歳の時にフェリペ4世の宮廷画家となります。
この《狩猟服姿のフェリペ4世》はベラスケスが宮廷画家になって10年近く経った、30代半ばの頃に描かれたものです。

フェリペ4世(1605-1665)は非常におおらか性格で、その一方”無能王”とも呼ばれていたといいます。


王様の肖像ですが、非常にシンプルな装いです。
これはタイトルにもある通り狩猟を行う際の服装で、隣には猟犬の姿も見えます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

マドリード郊外に狩猟休憩塔と呼ばれる、狩りの際に休憩する建物がありました。
フェリペ4世がその狩猟休憩塔を絵画で飾ろうと考え、ベラスケスルーベンスの工房に絵を発注したのです。
その中の一枚という事で、狩猟服を着た王の姿が描かれているのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

作品をよく見てみますと、修正した跡が確認できます。
足の位置が直され、猟銃も元々はもう少し長かったのが分かります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

腰の所には何か袋のようなものをぶら下げていた跡が見られます。

じつはこれは経年変化によって出てきてしまったもので、ベラスケスの時代には見えてなかったものだといいます。


この作品にもベラスケスの凄さが表れています。
一見すると、細部までしっかり細かく描いているように見えるこの作品ですが…

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

しかし近くでよく見ると、かなり粗いタッチで描いているのです。
例えば、首元のレースの部分は近くで見ますと、こんなにも筆跡の残る描き方をしているのです。

このような描き方は、後のエドゥアール・マネらが用いた描き方です。
ベラスケスマネが生まれるおよそ200年前に時代を先取りした描き方をしているのです。

このような新しい表現ができた背景には、当時のスペインが美術後進国であった事が理由に挙げられます。
遅れていた事で、きっちりとルールが決まっていなかった分、新しい事がやりやすい環境だったのです。


お顔を見ても”美化していない”、”本当にこういう顔だったんだろうな~”という感じがします。
たいてい王侯貴族の肖像画は3割増しで、”盛って”描かれるといいます。

しかしベラスケスは美化せず、リアルに描いたのです。
それをフェリペ4世はたいへん気に入り、逆にそれまでの肖像画は全て処分したと言わています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

中野京子先生は「ベラスケスの作品にはどれも”気品”がある」といいます。


《セビーリャの水売り》1618–1622年
ディエゴ・ベラスケス
アプスリー・ハウス蔵
*『プラド美術館展』の出展作品ではありません

この作品は水売りをしている一般人を描いた作品です。
粗野に見えますがその中にも品があり、それを抽出・表現する事が非常に上手い画家だったのです。

王様でも庶民でも、それぞれのモデルの内面までも描き出しているのです。

《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》ベラスケス


《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》1635年頃
ディエゴ・ベラスケス
プラド美術館蔵

続いては『プラド美術館展』のメインビジュアルにもなっていたこちらの作品です。

描かれているのは、フェリペ4世の長男・バルタサール・カルロスです。
当時5~6歳の王太子の姿です。


手にしているのは軍の最高指揮官が持つ、指揮棒と呼ばれる棒です。

その割にはすんごい普通の棒な感じがしますが…(笑)

馬が前脚を上げているこの体勢は、乗馬ではかなりの高等テクニックだといいます。
5~6歳の子供がそのような事ができるはずがありませんが、それくらい凄いんだぞ!というヨイショの意味合いが込められています。


馬も非常に品があり、イケメンな描かれ方をしています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

しかしよく見てみると、馬の胴体がやたらと太く、不自然に描かれています

じつはこれにはちゃんと理由があるのです。
この作品は元々ブエン・レティーロ離宮の「諸王国の間」という所の非常に高い場所に飾られており、見るときは下から仰ぎ見るような感じだったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

『プラド美術館展』では下からといっても、このくらいの位置からですが、本来の飾られていた場所で見ると、馬の体も丁度よく見えるのだと言います。

ベラスケスはこの絵を、下から仰ぎ見るという前提で描いているのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この作品は風景画としても、素晴らしい」と山田五郎さんは言います。
背景は適当な風景ではなく、マドリード郊外の風景を写実的に描いているのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

例えば山の雪の表現は、近くで見ると絵具でササッと描かれていますが、離れて見るとしっかりと対象を捉えているのが分かります。


このような表現は、後の印象派に影響を与えました

また西洋ではこの頃、風景画は重要視されていませんでした。
そのような時代にもかかわらず、見事な風景まで描いたベラスケスはやはり頭一つ出た存在だったのが分かります。

今回の記事は以上になります。
パート3へと続きます(記事はこちら☚から)。

コメント

  1. […] 今回の記事はパート3になります。 前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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