【国立西洋美術館】プラド美術館展③【ぶらぶら美術館】

ぶらぶら美術・博物館

2018年3月9日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#262 “画家の中の画家”ベラスケス一挙来日!「プラド美術館展」~ルーベンス、ティツィアーノ・・・王室が誇るスペイン絵画黄金期の名画たち~】の回をまとめました。

今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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《バリェーカスの少年》ベラスケス


《バリェーカスの少年》1635-45年
ディエゴ・ベラスケス
プラド美術館蔵

描かれているのは、パート2でご紹介した王太子バルタサール・カルロスに仕えていた(遊び相手をしていた)少年です。
パッと見では分かりませんが、低身長症の少年で、この時は12~13歳でした。
当時宮廷には引き立て役のような形で、この少年のような低身長症の人が必ずいたといいます(これも酷い話ですが)。

そして多くの画家が、その宮廷内にいる低身長症の人たちを作品に描いています。


《王女イサベル・クララ・エウヘニアとマグダレーナ・ルイス》1585-88年
アロンソ・サンチェス・コエーリョ
プラド美術館蔵

こちらはフェリペ2世の娘のイサベル・クララ・エウヘニアを描いた作品です。
描いたのは宮廷画家のサンチェス・コエーリョ
王女の姿は姿は気品に溢れ、表情も意志の強さを感じさせます。

その横に描かれているのは低身長症マグダレーナ・ルイスです。

この絵の主役は王女です。マグダレーナ・ルイスは彼女を引き立てるかのように頭に手を置かれて描かれています。


《矮人の肖像》1626年頃
フアン・バン・デル・アメン
プラド美術館蔵

作品の読み方は「わいじんのしょうぞう」です。

上からのアングルで、低身長症の男性を描いていると見た誰もが分かります。
またモデルも今日まで特定されていません。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ここでベラスケスが描いた作品と今の2枚を比べてみましょう。
こうやって見てみると、ベラスケスの描き方がいかに新しかったかがよく分かります。

両端の2枚は上から見下ろすように描かれているのに対して、ベラスケスは低身長症の人と同じ目線からモデルを描いています
同じ人間として、対等の存在である」というのが、作品から伝わってくるのです。

確かに最初に見た時に「低身長症の人を描いている」と思いませんもんね。


また絵のタッチも非常に時代を先取りしている感があります。
19世紀のマネクールベらの作品と並んでいても、全く遜色ありません。

描く対象を美化せず、欠点さえも余す事なく描いていますが、その中に”品”であったり、この作品でいえば”無垢さ”がにじみ出ているのです。
ベラスケス作品の中でも「傑作」の呼び声が高い一枚です

《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》ベラスケス


《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》1635年頃
ディエゴ・ベラスケス
プラド美術館蔵

描かれているのはフアン・マルティネス・モンタニェース(1568-1649)という、17世紀のスペインを代表する彫刻家です。
ベラスケスと同じセビーリャの出身で、ベラスケスの師匠のフランシスコ・パチェーコとも交流がありました。

これを見た人は、先ず画面右下の人の顔のようなものが気になるでしょう。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

落書きのような、まるで描いている途中のような…

じつはこれは粘土の像を制作している最中を描いた絵なのです。
それを表すようにモデルの手元には、へらが描かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

そのモンタニェースが作っているのが、フェリペ4世の粘土像なのです。

王様をこんな風に表現して良かったんですかね…(笑)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

顎鬚の部分も近くで見ると、絵具がベターっと置かれているだけのような感じです。
一度ここに気が付くと、離れて見ても少し気になりますが、最初見た時には全く気づきません。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

衣服の質感の表現もたいへん見事です。

視線の利用


彫刻家が粘土像を造っている場面ですが、粘土像の方は見ておらず、鑑賞者の方に視線を向けています
これがこの作品の特徴の一つです。

彫刻家がこちらに視線を向けるという事は、彼の視線の先にフェリペ4世がいる事を暗示しているのです。
ベラスケスはこのように、描かれている人物の視線を利用する事で、鑑賞者の関心を画面の外に引き出したり、内側に持っていったりする事に長けた画家でした。

それが一番よく表れているのが、ベラスケスの代表作である《ラス・メニーナス》です。

>>《ラス・メニーナス》とベラスケスの作品の魅力について

コメント

  1. […] 今回の記事は以上になります。 パート3へと続きます(記事はこちら☚から)。 […]

  2. […] 今回の記事はパート4になります。 前回のパート3はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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