【ロンドン展⑬】クロード・ロランとターナー【風景画とピクチャレスク】

ぶらぶら美術・博物館

2020年4月7日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#343 世界初!奇跡の大規模展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」後編〜古典から印象派の誕生へ、ゴッホ「ひまわり」日本初公開!〜】の回をまとめました。
今回の記事はパート13です。
前回までのロンドン・ナショナル・ギャラリー展の特集記事一覧は、こちら☚からご覧ください。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

*開幕日及び会期が変更となっております(2020年6月7日現在)
詳細は展覧会公式HPをご確認ください。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展公式HP:リンク

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第6章 風景画とピクチャレスク

ピクチャレスク」とは、”絵になる、絵のような”という意味で、イマドキで言う所の”映える”といった所でしょうか。

現代の私たちも例えば写真を取る時などは、「この景色は絵になる」などと言ったりしますよね。

ここでは、イギリス人にとってどういったものが「絵になる風景、映える風景」であったのかを見ていきます。

《海港》クロード・ロラン


《海港》1644年
クロード・ロラン(本名クロード・ジュレ)
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

イギリス人にとっての”ピクチャレスクな光景”の一つの典型的なイメージを作ったのが、クロード・ロラン(Claude Lorrain、1600年代-1682)です。

本名はクロード・ジュレといいますが、自身がフランスのロレーヌ地方の出身だったのでロランと呼ばれました。
フランスの出身の画家ですが、生涯ローマを活動の拠点にしました。

グランドツアーでイタリアを訪れたイギリス人が、ローマでクロード・ロランの絵を見て、それをイギリスに持ち帰ったのです。
クロード・ロランの作品こそ、”ピクチャレスクな絵画”だとしてそこに価値を見出していきました。
ピクチャレスクの元祖」といえるでしょう。


クロード・ロランの描く風景は、現実にはない架空の風景です。
一個一個の建物やモチーフは実際にあるものですが、画面の中でそれらを自由に組み合わせて作品を構成していきます。
それにより理想的で美しい風景を作っています。


クロード・ロランの作品で典型的なのが、地平線の近くにある低い太陽とそれが放つ黄金色の光です。
これにより作品全体をノスタルジックで幻想的な雰囲気にしているのです。

彼の作品からは独特なもわっとした空気感がどれも感じられます。
そしてこれがクロード・ロランの新しさでした。
「空気感」を描いた画家だったのです。

光の粒子までも感じられるようですね。

それによりまるで夢の中の光景のように感じるのです。

《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》ターナー


《ポリュフェモスを嘲る(あざける)オデュッセウス》1829年
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

クロード・ロランの描いた”空気感”を見て、影響された画家がジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner、1775-1851)です。
18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍した、イギリス人画家の中でも代表的存在です。
この作品のような風景画を数多く描きました。

めちゃめちゃ”空気感”出てますね~

山田五郎さんは、「ターナーは”絵画界のビートルズだ」といいます。
それまで絵画後進国と言われていたイギリス絵画が、この時いきなり最先端になったのです。

クロード・ロラン同様に、低い水平線の近くに太陽が描かれ、そこから発せられる黄金色の光に画面全体が包まれています。
この世の光景とは思えない、どこかファンタジックな雰囲気に満ちています。

この《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》では、神話のエピソードをモチーフに描いています。
しかし19世紀の前半ともなると、神話主題というのは時代遅れになってきますが、ターナーは生涯に渡り神話主題に取り組みます。


この作品はホメロスが書いた「オデュッセイア」という叙事詩(=歴史上の事件や英雄を書いた詩)の一場面を描いています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

船の上で赤い服を着て両手を挙げているのが英雄のオデュッセウスです。

どのようなストーリーかといいますと、船の左奥に見える洞窟にポリュフェモスと呼ばれる一つ目の巨人が住んでおり、その巨人にオデュッセウスが捕らえられてしまいます。

その後オデュッセウスポリュフェモスを倒し、洞窟から帰還します。
この作品ではまさにその場面を描いています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ターナーはその一つ目の巨人そのものを画面には描いていません。
その姿があると、作品から現実味が欠けておとぎ話になってしまいます。

彼はそこで工夫を凝らして、雲の中にポリュフェモスを暗示する姿を描きます。
オデュッセウスが一つ目を攻撃され、それを押さえる右手と左手を上げる姿を雲の中に忍ばせています。

この作品にはそういった仕掛けが他にも隠されています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

太陽の周りには光のシルエットのようなものが描かれていますが、これは馬の頭で「アポロンの馬車」を表しています。
神話ではアポロンが太陽を馬車に乗せてやってくるので、朝が来るとされているのを表しています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

船の前には海の精霊ネレイスが、波しぶきに紛れるように描かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この作品は是非近くで見た後に遠目で見て頂きたい作品です。
遠目で見るとターナーのすごさ、光と色彩と空気感が堪能できます。

実物を見るのがすごく楽しみです!

そしてその光に対する効果というものが、後のフランス印象派へとつながるのです。

いかがでしたでしょうか。
今回の記事は以上になります。
次のパート14ではフランス印象派の作品について見ていきます。
こちら☚からご覧いただけます。

コメント

  1. […] いかがでしたでしょうか。 今回の記事は以上になります。 続くパート13では、クロード・ロランとターナーの風景画についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

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