2020年5月17日にNHKにて放送された「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」をまとめました。
こちらの記事はパート4になります。
前回のパート3はこちら☜からご覧ください。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
なぜ”動物が遊んでいる”のか?
では、どうして『鳥獣戯画』は”人が遊ぶ姿”ではなく、”動物が人のように遊ぶ姿”を描いたのでしょう?
国文学者の今村氏によると、『鳥獣戯画』は動物たちが人間の真似をしているという、いわば「ごっこ遊び」だといいます。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
この場面は人間の遊びの「石合戦」を真似ているのだといいます。
ただ、人間のする「石合戦」は段々とヒートアップしていくうちに、弓矢や刀などが使われ、怪我人もでてしまうといいます。
しかし『鳥獣戯画』に登場する動物たちはその弓矢や刀を植物で代用しています。
なので、誰もけがをすることなく平和に遊ぶことができるのです。
「楽しく、平和に、そして平等にみんなで遊ぶ」
『鳥獣戯画』の中で描かれているのは、遊びが自立した一つの世界なのです。
そして”平等”を表す表現として、ほとんどの動物たちが皆同じ大きさで描かれているのもポイントです。
背の高さの違いや、力の違いによる差別はそこにはないのです。
時代背景
『鳥獣戯画』が描かれた平安時代末期は、武士が台頭し始め、都では武力衝突や混乱が続いていました。
しかし絵巻に登場する動物たちから伝わってくるのは、勝ち負けではなく楽しむ姿です。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
投げ飛ばされたウサギの目は三日月形に描かれ、表情も笑っています。
『鳥獣戯画』は誰が見ても楽しめる絵巻だったのです。
各巻の詳細なストーリー
平安時代末期に甲巻が描かれて以降、続く乙巻・丙巻・丁巻が名もなき絵師らによって描き継がれます。
本ブログのパート1の記事でそれぞれの巻について簡単にご紹介しましたが、ここでそれぞれ詳細に見ていきます。
乙巻
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
乙巻は甲巻と同じ頃に描かれたとされています。
まず登場するのは身近な動物たちです。
にらにあったり、じゃれあう犬が描かれています。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
ひなたでくつろぐのは鶏の親子です。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
後半になると、当時の日本人は見た事がないはずの虎や獅子が登場します。
想像を膨らませて伸びやかに表現されています。
丁巻
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
丁巻はこれまでの甲巻・乙巻とは打って変わって”人間尽くし”です。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
見覚えのある場面が出てきました。
甲巻に出てきた袈裟を着たサルが、仏像のように鎮座するカエルにお経をあげる場面にそっくりです。
カエルの代わりに描かれているのは、カエルの骸骨のようにも見えます。
「甲巻のパロディー」とも取れる遊び心の溢れた場面です。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
場面は変わって、今度は男たちが大きな丸太を引いています。
ところが途中で綱が切れてしまい、後ろの人が吹っ飛ばされてしまいます。
転がる人もそれを見ている人も皆大笑いです。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
振り返る貴族も興味津々の様子です。
丙巻
丙巻は平安時代から鎌倉にかけて描かれたとされています。
その構成はこれまでの巻を取り入れたように、前半部分が人間の様子で、後半部分が動物たちになっています。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
人間たちは、引っ張っり合いやにらめっこなどの遊びをしています。
画像出展元:テレビ番組「謎の国宝 鳥獣戯画 “楽しい”はどこまで続く?」より
後半に登場する動物たちは甲巻同様、人間の遊びを楽しんでいます。
絵巻を見た人がその内容を見て楽しみ、その刺激を受けてさらに描くという、『鳥獣戯画』はそんな時代を超えたリレーによって描き続けられてきたのです。
特別展 国宝鳥獣戯画のすべて(東京国立博物館・平成館)
2020年7月14日㈫から8月30日㈰まで東京・上野の東京国立博物館・平成館で
『特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」』の開催が予定されています。
2020年5月29日追記:
『特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」』は2021年春に開催が延期となりました。
詳細など決定次第、こちらの記事でも情報を更新してまいります。
この展覧会は『鳥獣戯画』の甲・乙・丙・丁全4巻の全場面を、会期中に渡って一挙公開されます。
これは展覧会史上初の試みだそうです。
特に人気が予想される「甲巻」については、”動く歩道”に乗っての鑑賞になるようです。
これはこれで面白そうですね。
今後の展覧会の詳細については公式ホームページ(リンクはこちらから)をご確認願います。
今回の記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました。
コメント
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