【ぶらぶら美術・博物館】「法隆寺金堂壁画と百済観音」まとめ②

ぶらぶら美術・博物館

2020年4月28日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#346 東京国立博物館 特別展 「法隆寺 金堂壁画と百済観音」】の回をまとめました。
こちらの記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

パート2では明治の桜井香雲の模写、そして昭和の大修理の際に描かれた模写の2点をご紹介します。

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桜井香雲による模写(明治時代)


模本《第一号壁 釈迦浄土図》1884年(明治17年)頃
桜井香雲
東京国立博物館蔵

画像出展元:ホームページ「東京国立博物館」より

こちらは模写は壁画の傷や剥落も含めた実際の状態を写したもので、「現状模写」と呼ばれるものです。

明治期に活躍した桜井香雲(さくらいこううん)という画工が描きました。
彼は全12面全ての壁画をおよそ2年の歳月をかけて写しました。
全12面を写した模写の中で最も古いものになります。

桜井香雲は暗い金堂の中で、灯明を片手に写したと記録されています。
ですので明かりが不十分だった事もあり、若干暗い画面になっています。

この12面の模写は、文化財の保存を目的に国家事業として行われました。
しかしその元々のきっかけは、イギリス外交官のアーネスト・サトウが壁画の模写を桜井香雲に発注した事が始まりでした。


その際に模写したのが、第9号壁の『弥勒浄土図(みろくじょうどず)』です。
その一番最初の模写は現在、イギリスの大英博物館に所蔵されています。

ちなみにアーネスト・サトウの”サトウ”は、日本語の”佐藤”ではなく、スラブ系の苗字の”Satow”になります(アーネスト・サトウの父親はドイツ人で、母親はイギリス人です)。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この壁画の中心に描かれているのが如来です。
その両脇に菩薩の御姿が見えます。

その三尊の他に描かれているのは、(若干見えずらいのですが)『釈迦の十大弟子』と呼ばれる十人のお坊さんが描かれています。

こちらの模写は「上げ写し」と呼ばれる技法で描かれました。
上げ写し」とは、壁画に写す紙をピンで留め、上から透かして描いたり、紙を捲っては戻したりして描く技法です。

入江班による模写(昭和の大修復)


模本《第六号壁 阿弥陀浄土図》1940-51年(昭和15-26年)
入江班
奈良・法隆寺像

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

6号壁の『阿弥陀浄土図(あみだじょうどず)』を模写したものになります。
昭和9年の大修理の際に作成されたもので、この模写が完成するより前に、火災が起きてしまったので未完の模写になります。

昭和の大修理の際には、文部省の中に「法隆寺国宝保存事業部」が創設され、建築家の伊藤忠太、日本画家の安田靫彦、洋画家の和田英作などそうそうたる顔ぶれの人たちが参加していました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

実際に作業は日本画家が中心となり、4つの班に分担されて進められました。
この模写を手掛けた入江班は、入江波光を(京都出身の日本画家)中心とした6人のメンバーがいました。

こちらの六号壁は人気が高く、模写したい班が多かったといいます。
どの班がどの壁画を手掛けるのかは、くじ引きで決められました。

明治時代の桜井香雲は灯明を片手に模写をしましたが、この昭和の模写作業の際には蛍光灯(当時は海軍でしか扱っていなかった)が使用されました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

蛍光灯のおかげで、桜井香雲の時とは全く色合いの違う模写になりました。
(その蛍光灯の光のせいで、白飛びしているように見えなくもないですが)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この入江班の凄さは、壁面の素地のニュアンスをすべて点描で表している点です。
これは伝統的な模写の方法としてあるものですが、針の先のような点を重ねて表現しています。

それにより、壁画の表面の剥離した部分や、カビたような部分を見事に表現しているのです。

入江班を率いた入江波光は、この模写事業に携わった為に他の仕事がほとんどできない程、壁画模写にかかりっきりだったといいます。
そんな入江波光は、模写の完成を見ることなく昭和23年(1948年)に胃癌のため亡くなっています。

そしてその翌年の昭和24年(1949年)に法隆寺金堂の火災が発生します。
模写の作業も12枚中8枚の所でストップしてしまいました。

法隆寺金堂壁画の模写作業をする画家は皆、何かにとりつかれたかのように一心に壁画を写しました。
続くパート3では、その中でも最も壁画に魅了された鈴木空如(すずきくうにょ)の模写作品を見ていきます。
こちら☚からご覧いただけますので、是非ご覧ください。

コメント

  1. […] パート1は一旦ここまでです。 パート2へと続きます。 (こちら☚からご覧いただけます。) […]

  2. […] 2020年4月28日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#346 東京国立博物館 特別展 「法隆寺 金堂壁画と百済観音」】の回をまとめました。 こちらの記事はパート3になります。 前回のパート2はこちら☚からご覧いただけます。 […]

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