2022年5月15日にNHKで放送された「日曜美術館アートシーン」の展覧会紹介の内容をまとめました。
*画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より
スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち (東京都美術館)
エディンバラにあるスコットランド国立美術館。
開館したのは1859年。
世界でも指折りの西洋絵画コレクションを中心に12万点が所蔵されています。
今回スコットランドが誇る美の殿堂から選りすぐりの作品が日本にやってきました。
後世の画家たちから「画家の中の画家」と呼ばれたベラスケス。
10代の終わりに描いた作品です。
台所で料理を作る老婆と少年の日常的な風景。
テーブルに置かれた陶器や金属の器など、質感の違いが見事に描き分けられています。
とりわけ目を引くのが、鍋の中で白身が固まりつつある卵。
その描写力は圧巻です。
若き日のベラスケスが自身の力量を世に示した野心作。
美術館を代表する一枚です。
「スコットランド国立美術館のコレクションは他の国と違いまして、王侯貴族のコレクションが基になっているのではなく、19世紀の開館の時に合わせて寄贈や購入といった形で収集した作品が中心になっています」
「例えば18世紀の英国の知識人たちが”グランド・ツアー”と呼ばれるヨーロッパの大旅行をした際に…」
「フランス絵画やイタリア絵画を収集して、持ち帰った作品が寄贈されたりですとか」
「あるいは19世紀の印象派の作品をコレクターが購入して、それが寄贈される。または作品を購入するための資金を提供するというような形で、地元の名士たちの協力を得て、少しずつ充実したコレクションがつくられていきました」
レオナルド・ダ・ヴィンチの師匠だったヴェロッキオが描いたとされる聖母子像。
19世紀イギリスの高名な評論家のジョン・ラスキンのコレクションでした。
現在は「ラスキンの聖母」という名で知られています。
こちらはオランダの巨匠、レンブラントが描いた「旧約聖書」の一場面。
女性の表情が印象的です。
「レンブラントの作品を購入するために」と寄付された資金でコレクションに加わりました。
今回の展覧会にはイギリスの画家たちの作品も数多く来日しています。
イギリスを代表する肖像画家、ジョシュア・レノルズの作品。
貴族の三姉妹の肖像画を依頼されたレノルズは、3人が向かい合って手作業する場面を描きました。
そのモチーフとなっているのは、ギリシャ神話やローマ神話などで女神を描く際の伝統的な構図。
女性の後ろにかけた絹のドレープや明るい空の色。
過去の巨匠たちの作品の影響を見る事ができます。
レノルズはこうした「グランド・マナー」と呼ばれる歴史画の技法を用いて、イギリスにおける肖像画の地位を高めました。
こちらはレノルズのライバルといわれたゲインズバラの風景画。
17世紀オランダ風景画を思わせる、曲がった道や低い地平線。
想像力豊かに描いた理想の風景です。
ミレイはレノルズやゲインズバラの絵画を研究し、洗練された肖像画を生み出しました。
スミレの花を持つ少女の純真さと儚い美しさが描かれています。
この展覧会は東京・上野の東京都美術館で7月3日まで。
その後、兵庫の神戸市博物館、福岡の北九州市立美術館本館に巡回します。
企画展「生誕110年 松本竣介」 (神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)
昭和の初めに新時代の絵画を模索し、36歳の若さで亡くなった松本竣介の展覧会です。
西洋の古典絵画の影響を受けながら試行錯誤を繰り返した29歳の作品。
どこにでもあるけれど、どこにもない。静謐で抒情的な都市の風景です。
戦時中、防空壕の中に褐色と黒の絵具を埋めておいたという松本。
亡くなる前の年、その2色でキュビスム的な手法にも挑戦しました。
短くも豊かな松本竣介の画業をたどる展覧会。
神奈川県立近代美術館・鎌倉別館で5月29日まで。
モディリアーニ ─愛と創作に捧げた35年─ (大阪中之島美術館)
独自の表現様式で人間の内面に迫る絵を描き続けたモディリアーニ。
35歳で夭折した画家の回顧展です。
モディリアーニが晩年の3年間を一緒に過ごした女性、ジャンヌ。
当時二十歳のジャンヌが少女から大人の女性へと成熟していく姿を見事に捉えています。
画面に押し込まれたかのような裸婦像。
今にも動き出しそうな躍動感。
こちらをまっすぐに見るまなざしが印象的です。
同じモデルを描いた作品があります。
肉感的に描かれた女性の視線は外されています。
生涯、人物像の制作に取り組み、人物の内面を捉えたモディリアーニの真骨頂です。
絵画でありながら、どこか彫刻のようにも見える不思議なほほ笑みをたたえた少女。
この作品を40年以上、自宅に飾っていた人物がいます。
若くして映画界を引退したハリウッドの伝説的スター、グレタ・ガルボです。
1990年に亡くなったあとこの作品の存在が公となり、今回世界初公開となります。
この展覧会は大阪中之島美術館で7月18日まで。
今回の記事はここまでになります。