【スペインで活躍】エル・グレコとベラスケス【メトロポリタン美術館展】

ぶらぶら美術・博物館

2022年3月29日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#403 今年イチオシ!メトロポリタン美術館展・後編〜フェルメールから印象派の巨匠たちまで!「西洋絵画の500年」完結篇〜】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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ルネサンスの後、絵画はどうなったか?

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

今も西洋絵画の基本となっているルネサンス期の絵画。
この時代に遠近法陰影法といった、現在でも広く使われる絵画技法が確立しました。

また油彩画の発展により、筆跡の残らないタッチで、美しく均整のとれた歴史的傑作が誕生していきました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

そのルネサンスの次に登場したのが”マニエリスム”です。
山田五郎さん曰く、「ルネサンスの技法を強調しすぎて、変になっちゃう時代」とのこと。

そのマニエリスム期を象徴する画家がエル・グレコ(1541-1614)です。

エル・グレコ《羊飼いの礼拝》


《羊飼いの礼拝》1605–10年頃
エル・グレコ
ニューヨーク、メトロポリタン美術館蔵

エル・グレコというのはじつは通称で、本名は「ドメニコス・テオトコプーロス」といいます。

なかなか覚えるのが難しい名前ですね(笑)

ギリシャ領のクレタ島(当時はヴェネツィア領)に生まれたことから、スペイン語で「ギリシャ人」を意味するエル・グレコの名で呼ばれました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

エル・グレコはクレタ島時代はギリシャ正教のイコンを描いていましたが、その後ヴェネツィアへ行き、イタリア・ルネサンスに触れます。
さらにローマへ行き、そこからフェリペ2世の宮廷画家を目指してスペインへ行きます

最終的にトレドという街に定住するようになりますが、宮廷画家になる夢は叶いませんでした

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

描かれているのは「羊飼いの礼拝」という主題で、イエス様が生まれた事を夜空の星を見て知った羊飼いが礼拝のためにイエス様の元を訪れた場面です。
宗教画では定番の画題であり、エル・グレコ自身もこの作品の他に同主題の作品を複数残しています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

人物の形がグニャグニャで、まるで炎が揺らめいているかのようです。
現代の私たちが見ても”異質”に感じるエル・グレコの作品。同時代の人にとってはもっと衝撃的だったことでしょう。

エル・グレコは16世紀から17世紀に活躍しましたが、死後は忘れ去られてしまいます。
そして20世紀に入る頃に再評価が起こるのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

まるで中心のイエス様から光が放たれているようなこの作品。
このような明暗のコントラストは、次の時代のバロック絵画を先取りしているともいえます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

粗くて素早い筆遣いも特徴的です。

バロック絵画の始まり

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

マニエリスムの後に起こるのが”バロック”です。
ポルトガル語で”ゆがんだ真珠”を意味する「バロッコ」がその語源といわれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

1517年、マルティン・ルターによる宗教改革が起こります。
それにより勢力が衰えたカトリック教会が、多くの信者を獲得するために、よりインパクトのある絵画を求めたことなど、いくつかの事情が重なり誕生したのが「バロック」です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

その始まりを告げる存在となるのがカラヴァッジョです。
この《聖マタイの召命》に見られるような、”明暗表現”や”劇的(ドラマティック)な表現”がバロック絵画の特徴といわれています。

続いてはそんなバロック期にエル・グレコと同じく、スペインで活躍した画家の作品を見ていきます

ベラスケス《男性の肖像》


《男性の肖像》1635年頃
ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス
ニューヨーク、メトロポリタン美術館蔵

それがディエゴ・ベラスケス(1599-1660)です。
”スペイン絵画の黄金時代”と呼ばれる17世紀を代表する巨匠です。

24歳の若さでスペイン国王フェリペ4世の宮廷画家になっています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

人物を変に理想化したりせず、そのままリアルに捉える描写。
そして筆が素早く、正確に捉えているのがベラスケスの作品の特徴です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

現在は《男性の肖像》というタイトルですが、かつてはベラスケスの自画像と考えられている時代もあったといいます。
研究が進むにつれ、絵のモデルは不明になり、さらに作者もベラスケス本人から、ベラスケスの工房作に変更されたという歴史があります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ところが2009年にメトロポリタン美術館で行われた修復作業で、後の時代の修復や加筆の跡を取り除いたところ、やわらかなタッチがよみがえってきたため、「ベラスケスの真筆で間違いない」ということになり、「工房作」から再度「ベラスケス作」に変更され、今に至るのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

解説の宮島綾子さん曰く、「この途中の仕上がりみたいなのがすごくベラスケスらしいなっていう。完成作なのか、そうじゃないのか分からないようなところで止めているときがよくありますので」とのこと。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

単色の背景で、そこに物を一切描かないのもベラスケス絵画の特徴です。

”粗いタッチ”や”背景に何も描かない点”などがベラスケスが近代絵画を先取りしたと言われる理由なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらは今回のメトロポリタン美術館展には出展されていない作品ですが、《男性の肖像》と同じく背景には何も描かれていません。
それどころか、床と後方の壁の境目も全くない不思議な背景になっています。

こうした描き方は後の”印象派の父”と呼ばれたエドゥアール・マネらに影響を与えていきます。

今回の記事はここまでになります。

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