2020年3月3日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#339 東京都美術館「ハマスホイとデンマーク絵画」展〜幸福の国が生んだ巨匠“北欧のフェルメール”その静謐な世界〜】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
デンマークは世界幸福度ランキングで常にトップ3に入る国として知られています。
そんなデンマークで有名なものといえば、レゴブロック、クリスチャン・アンデルセンの「人魚姫」、ロイヤルコペンハーゲンなどが挙げられます。
デンマークは冬の平均気温が1度という非常に寒い環境なこともあり、ゆったり家の中でお茶をするのが好きな国民性です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
表参道にあるカフェ「ニコライ バーグマン ノム」ではデンマークの文化を味わう事ができます。
”ニコライ バーグマン”といえば、箱に入った花(フレッシュフラワーボックス)の考案者として知られています。
彼は東京を拠点に活躍するデンマーク人のフラワーアーティストです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらの「ニコライ バーグマン ノム」では花屋とカフェが併設されています。
ヒュゲとは?
デンマークの文化を語る上で外せないワードが”ヒュゲ”です。
「ヒュゲ(hygee)」は、”くつろぎや憩い、心地よい雰囲気”を意味する言葉で、家にいて皆で楽しんでリラックスして過ごす時間や空間のことをいいます。
デンマークは外が寒くて暗いという事もあり、家にいる時間を充実させるという感覚が強いといいます。
また山田五郎氏によると、北欧の国でインテリアのものが充実しているのはそれが理由だといいます。
家の中の暮らしを大事にするという、気持ちが反映されているのだそうです。
「ハマスホイとデンマーク絵画」展
東京と山口県で開催の「ハマスホイとデンマーク絵画」展。
東京展は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会期途中の3月13日にて残念ながら閉幕してしまいました。
開催が心配されていました山口展は、幸いな事に5月26日開幕。
13日間という短い期間ではあるものの、無事に作品が展示される運びになりました。
(整理券の配布や入館人数の制限、山口県外からの来館自粛など美術館からのお願いもありますので、詳細については山口県立美術館のホームページでご確認頂くようお願い致します)
リンク:山口県立美術館ホームページ
展覧会概要
ハマスホイの展覧会が日本で初めて開催されたのが2008年でした。
今回は12年振りの大規模な展覧会になります。
ヴィルヘルム・ハマスホイ(Vilhelm Hammershøi、1864-1916)は19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したデンマークを代表する画家です。
生前は国際的にも高い評価を得ましたが、死後は時代遅れの画家と見なされ、次第に忘れられていきます。
しかし20世紀後半になると再評価が起こり、世界的にも色々な美術館で展覧会が開催されるようになります。
その流れの中で2008年には日本でも展覧会が開かれました。
(『ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情』展 @国立西洋美術館)
ちなみに同じ1864年生まれにはナビ派のポール・セリュジエ、パリで活躍したロートレックがいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
またこの展覧会ではハマスホイだけではなく、19世紀デンマーク絵画も取り上げられています。
これは日本では初の展覧会だといいます。
⑴日常礼賛—デンマーク絵画の黄金期
展覧会の第1章では、デンマーク絵画の黄金期と言われる1800年から1864年の作品を紹介しています。
ではなぜこの時代が”デンマーク絵画の黄金期”と呼ばれるのでしょうか?
デンマークは19世紀の前半にナポレオン戦争で敗戦し、財政破綻するという”暗い時代”でした。
貴族たちが没落する一方で、新たに市民たちが力をつけていきます。
その流れで絵画の購買層も貴族から市民階級へと移行します。
今回の記事では取り上げませんが、肖像画も社会的地位を象徴する形式ばった表現から、市民が好む飾り気のない親密な描写のものに変化していきます。
《パン屋の傍の中庭、カステレズ》クレステン・クプゲ
《パン屋の傍の中庭、カステレズ》1832年頃
クレステン・クプゲ
ニュー・カールスベア彫刻美術館蔵
先ず注目すべきは絵の大きさです。
この作品は縦33センチ、横24センチしかありません。
これは購買層が市民に変わったという事で、市民の家に飾りやすいサイズになっています。
描かれている主題も画家の身近な風景です。
それまでは神話画や宗教画が主な題材でしたが、やはりここでも絵画を購入する層の変化にあわせてモチーフも変化した事が分かります。
描いたクレステン・クプゲは父親がパン屋を営んでおり、タイトルにもある「カステレズ」というコペンハーゲンの北にある城塞の中で暮らしていました。
クプゲの作品にはこの《パン屋の中庭、カステレズ》を含めて、城塞の中の景色が多いといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
城塞とは思えない、のどかな風景として描かれており、画面の中央には遊ぶ子供たちが描かれています。
この”デンマーク絵画の黄金期”と呼ばれる時代の風景画の特徴は、屋外でスケッチをしてアトリエで仕上げるという点があります。
完全に屋外での制作をした印象派とは若干異なるものも、屋外で描き始めるという意味では時代を先取りしていたといえます。
《ブランスー島のドルメン》ダンクヴァト・ドライア
《ブランスー島のドルメン》1842-43年
ダンクヴァト・ドライア
ブランツ美術館蔵
タイトルにある”ドルメン”は巨石記念物の事です。
その歴史は古く、先史時代のケルトよりも更に昔の時代の巨石文化です。
描かれている風景もデンマークらしいものになっており、山がほとんどなく平らな大地が広がっています。
その特徴から”パンケーキアイランド”と呼ばれる事もあります。
このような風景こそ”デンマーク的な風景”として好まれました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
画面奥にはかなり小さく、馬車に藁を積む人影なども見えます。
小さい人を描くのが好きなのでしょうか?
その人や動物のサイズから比較すると、ドルメンが異様に大きく描かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ダンクヴァト・ドライアは先に紹介したクレステン・クプゲよりも一世代あとの時代の画家になります。
ドライアの時代になると、領土をめぐりドイツと紛争が起こったりしていきます。
そんな中デンマーク国内では、愛国主義の動きが出てきます。
絵画の世界でも、愛国心を掻き立てるような作品が好まれるようになっていきます。
デンマークの風景の中に古代の遺跡や、古い教会やお城など歴史的な建造物とあわせて描かれるようになり、「ナショナルロマン主義」と呼ばれるようになっていきます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ブランスー島はフューン島とユラン半島の中間にある小さな島です。
この島にはドルメンが2基確認されており、ドライアの作品ではそのうち1基を描いています。
今回の記事はここまでになります。
続くパート2では、”スケーイン派”の画家たちの作品を見ていきます。
こちら☚からご覧いただけます。
コメント
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