【美の巨人たち】フェルメール『ワイングラス』①【美術番組まとめ】

美の巨人たち

2018年12月1日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【フェルメール『ワイングラス』光の魔術師が仕掛けた恋のからくり】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

スポンサーリンク

イントロダクション

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

今からおよそ350年前、17世紀のオランダで活躍したヨハネス・フェルメール
彼が残した作品は全部で三十数点といわれています。

世界中の美術館が彼の作品を所蔵し、宝物のように大切にしています。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールはその43年の生涯のほとんどをデルフトの町の1キロ四方内で過ごしました。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールと同時代、同じオランダで活躍した画家にあのレンブラントがいます。
そのレンブラントの代表作《夜警》。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールのすべての作品の大きさを合わせても、レンブラント夜警》の中にすっぽりと収まってしまいます

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

2018年から2019年にかけて東京・上野の森美術館で開催された『フェルメール展』では、8点のフェルメール作品が来日しました。

この中に日本初公開の作品が2点ありました。


《赤い帽子の娘》1665-66年頃
ヨハネス・フェルメール
ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵

1つがこちらのワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する《赤い帽子の女》。

フェルメール作品で唯一木の板に描かれたもので、また大きさも最も小さいのが特徴です。


《ワイングラス》1658-60年頃
*「フェルメール展」の見解は1661-62年頃
ヨハネス・フェルメール
ベルリン国立美術館蔵

そしてもう1つが、今回取り上げる《ワイングラス》です。
縦67.7センチ、横幅79.6センチの油彩画です。

男がワインをすすめ、女がそれを飲み干す様子が描かれています。


女は白い頭巾を被り、またワイングラスの角度も相まってその表情は伺えません。
身にまとっている鮮やかな深紅のドレスはその質感まで見事に表現されています。

床に敷きつめられた深い赤と黒の市松模様は当時の流行のデザインです。


男は黒いつば広帽をかぶり、体にはマントのようなものを巻きつけています。
そしてその視線はじっと女を見つめ、口元は意味深に緩んでいるようです。


部屋の左側には、ステンドグラスの窓が見えます。


青い背の椅子はスパニッシュチェアと呼ばれるものです。
そしてその上に楽器が置かれています。

テーブルの端に置かれている本のようなものはなんでしょうか?


画面の中心には男が手を添えたワインのデカンタ。
このデカンタは他のフェルメール作品でもよく登場するアイテムです。

果たして二人は恋人同士なのか、違うのか。
そこはかとない恋の駆け引きが漂います。

フェルメールについて、後世の芸術家たちは次のように述べています。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールと同じオランダ出身の画家、フィンセント・ファン・ゴッホの言葉です。

彼の絵には完璧なパレットがある

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

スペインの奇才、サルバドール・ダリはこう述べています。

アトリエで仕事をするフェルメールを10分でも観察できるなら、この右腕を切り落としてもいい

フェルメール《牛乳を注ぐ女》

フェルメール”光の魔術師”と呼ばれます。

画面の左側にある小窓からは柔らかな光が入ってきます。
そして、そこで起きた日常の一コマを数々の小道具を使い、様々なメッセージを散りばめて、訳アリの一場面として描いて見せたのです。

それでは《ワイングラス》にはどのような”訳アリ”が潜んでいるのでしょうか?

オランダ・黄金の日々

フェルメールが生きた17世紀のオランダは、海運貿易で大いに栄えた”黄金の時代”でした。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

さらにスペインからの独立も勝ち取り、市民主導の共和制国家として発展していきます。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

庶民が主役となった事で、求められる絵画も大袈裟な宗教画等ではなく、”風景画”や”風俗画”が多くなっていきます

『牛乳を注ぐ女』北方の聖母像の美しさ


《牛乳を注ぐ女》1658-60年頃
ヨハネス・フェルメール
アムステルダム国立美術館蔵

フェルメールの代表作の一つ《牛乳を注ぐ女》。
”北方の聖母像”と讃えられる傑作です。

抑制の効いた静かな佇まいにもかかわらず、なぜ観る者を引き付けるのか。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

その秘密は女性の右腕の上にありました。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

じつはここに小さな穴があいています。
これがこの作品の消失点なのです。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

ここを基準に一点透視図法で引いた線に沿って物体を配置することで、正確な遠近感を作り出しています。

観る者の視点は自然と消失点に向けられ、そこから流れ落ちるミルクに誘導される、そんな仕掛けがこの絵にはあるのです。


女性の衣装は上から白い頭巾、黄色の上着、ウルトラマリンブルーの布の腰巻き、その下から赤いスカートがのぞいています。
牛乳を注ぐ女》は、その構図と色彩によって完璧な画面になっているのです。

そして更に驚くのは描かれているのが市井の人、しかも使用人であるという事です。

フェルメールのアイテム

フェルメールの作品には、同じ小道具が複数の作品に登場します。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

手紙をモチーフにした作品は何枚も描かれています。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

部屋の壁によく見かけるのが世界地図です。

その他にも真珠楽器、絵の中の描かれた絵画(画中画)など繰り返し用いられているものがあります。
これらのアイテムの多くはフェルメールが実際に持っていたものだと考えられています。
彼はこれらのアイテムを駆使して画面を作り上げ、そこに寓意を込めて作品を描きました。

それでは今回の一枚、《ワイングラス》にはどんなアイテムが描かれ、そこにどんな意味が込められたのでしょう?


手前の青い背もたれの椅子には”リュート”と呼ばれる楽器が置かれています。
その前、テーブルの上にかろうじて乗っているのは楽譜でしょうか。

花柄のテーブルクロスは、中近東から高級絨毯として輸入されたものです。
しかし当時のオランダの人は、「高級なものを床に敷くのは勿体ない」と考え、多くはテーブルクロスとして使われました


壁には風景画のようなものがかかっていますが、ぼやけていてはっきりとは分かりません。

その絵の下、画面中央には男が手にする白いデカンタがあります。
こちらはデルフト・ホワイトという種類のデルフト焼です。

アムステルダム国立美術館学芸員のピーター・ルロフス氏はフェルメールについて、「17世紀の映画監督だ」と言います。
現実の空間の一部を切り取り、それを画中に収める事に非常に長けた画家だったのです。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

ステンドグラスに描かれているのは、手綱を取る女性の像です。
これは「節制」や「きちんとした生活」を意味しています。


一方で楽器や楽譜など音楽に関わるアイテムは、「恋愛」を暗示しているといわれます。

女性にワインをすすめる男性には何やら下心がありそうな感じも見て取れます。
一方女性は顔が見えず、この先二人の男女がどうなっていくか読めません。

フェルメールはこの絵の中に「誘惑」と「自制」、ひいては”恋愛の駆け引き”を表現したのかもしれません。

今回の記事はここまでになります。
パート2へと続きます。
【美の巨人たち】フェルメール『ワイングラス』②【美術番組まとめ】

コメント

  1. […] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。 […]

タイトルとURLをコピーしました