(前ブログ「masayaのブログ美術館」からのリライト記事になります)
2019年11月16日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【「ビーダーマイヤー」の美術 19世紀中欧を風靡したその情趣】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。
イントロダクション:ビーダーマイヤー
19世紀のドイツとオーストリアで花開いた「ビーダーマイヤー」。
元々はインテリアから始りましたが、その後絵画やファッションにも幅広く普及しました。
「ビーダーマイヤー」は当時の市民の好みを反映して誕生した文化と言えるのです。
しかしこの「ビーダーマイヤー」が生まれた背景には、当時の政治への失望があるのです。
その発端は1814年に開かれたウィーン会議でした。
ウィーン会議は、フランス革命とナポレオン戦争終結後の欧州の秩序再建と領土分割を目的として開かれました。
しかし、参加国の間で利害の折り合いがつかず「会議は踊る、されど進まず」と揶揄されました。
また、ドイツではこの会議を機に、王政復古と旧体制の復活を果たします。
フランス革命やナポレオンの台頭によって、当時の市民たちは新時代の幕開けを期待していました。
けれども、再び古い世界に逆戻りしたのです。
更に政府は厳しい検閲や言論弾圧を行ったことで、市民は徐々に政治や社会への関心を失っていきます。
そしてその検閲は言論のみならず、絵画などの美術にまで及びました。
加えて不安定な経済状況から、宗教画などの公的な絵画の注文も激減します。
「壮大な風景よりも身近な風景を」と言わんばかりに、画家たちの視線は一般市民のささやかな日常へとシフトしていくのです。
画家カール・シュピッツヴェーク
ここで「ビーダーマイヤー」を代表する画家をもう一人ご紹介します。
カール・シュピッツヴェーク(1808-1885、Carl Spitzweg)です。
日本での知名度はあまりありませんが、ドイツでは有名な国民的画家の一人です。
《貧しき詩人》シュピッツヴェーク
《貧しき詩人》1839年
カール・シュピッツヴェーク
ノイエ・ピナコテーク蔵
この作品はドイツでは切手にもなっており、知らな人はいないと言えるほどの認知度を誇っています。
描かれている場所はみすぼらしい屋根裏部屋。
詩人が布団に潜り込んで横たわっています。
頭にはナイトキャップを被り、その姿は老人といえどどこかチャーミングです。
タイトルにもある通り、やはり彼は「貧しい」のでしょう。
また雨漏りがするのか、彼の頭上には屋根から傘がぶら下がっています。
けれども詩人はそんな境遇などどこ吹く風と言わんばかりに詩作に没頭しています。
ユーモアとそこに漂う哀愁が人気の理由です。
古代ローマ以来、ヨーロッパには「絵は詩のように」という言葉があります。
詩人はあらゆる芸術の頂点に君臨する存在だったのです。
この時代以前の多くの画家は、例として詩人ホメロス等を格調高く描いています。
しかしこの「ビーダーマイヤー」に時代になると、詩人も現実的な姿で描かれるようになっていきます。
このように理想的なものよりも、現実味を重視した姿勢こそが「ビーダーマイヤー」なのです。
ビーダーマイヤーの終わり
「ビーダーマイヤー」は1848年の三月革命で市民たちの勝利と共に幕を閉じます。
その後クリムトたちによって、ウィーン分離派が結成され、華麗な芸術が誕生していくのです。
リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展
渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは、2019年12月26日まで「リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展」が開催されていました。
パート1で紹介した《イシュル近くのヒュッテンエック高原からのハルシュタット湖の眺望》も展示されていました。
リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展【すでに終了】
Bunkamura ザ・ミュージアム
総展示品数:約130点
展覧会会期:2019年10月12日(土)~12月23日(月)
開館時間:午前10時から午後6時まで(最終入場は午後5時30分まで)
【毎週金・土】午後9時まで(最終入場は午後8時30分まで)
休館日:10/15㈫, 11/12㈫, 12/3㈫
入館料:一般は1600円
詳細は公式HP:
建国300年 ヨーロッパの宝石箱リヒテンシュタイン 侯爵家の至宝展 | Bunkamura
リヒテンシュタインは、スイスとオーストリアに囲まれた所にある国の名前です。
君主の家名が国の名前になっている世界で唯一の国です。
元々は大ハプスブルク家の侯爵であったリヒテンシュタイン侯国は、2019年に建国300年を迎えました。
コレクション総数3万点にも及ぶ中から貴重な作品を見る事のできる素晴らしい展覧会でした。
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