2020年3月8日にwowowで放送された「CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~」の【#2 クールベ/島根県立美術館】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《波》ギュスターヴ・クールベ
《波》1869年
ギュスターヴ・クールベ
島根県立美術館蔵
画面に描かれているのは、海と波だけです。
そしてタイトルもシンプルに《波》。
作品の舞台は、フランス・ノルマンディー地方のエトルタの海です。
前回のモネの《アヴァルの門》と同じ海辺を描いているのですね。
ただただ荒れた海を、荒れた波を描いています。
それだけの作品ではありますが、水の表現であったり波の水しぶきの表現は本当に見事です。
荒れ狂う波の音や風の音が聞こえてくるかのようです。
クールベはこの作品を描いたころ、同じような波を描いた作品を30点ほど残しています。
島根県立美術館は「水との調和」をテーマに作品を収集し展示しており、まさにこの美術館に相応しい一枚といえます。
画家クールベについて
ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet、1819-1877)は19世紀のロマン主義の時代に登場した画家です。
原田マハ氏のイメージでは、クールベは「革命の闘士」だと言います。
クールベが生きた19世紀のフランス画壇では、アカデミズムの画家たちは王侯貴族のためにシンボリックなテーマの作品(歴史画や宗教画)を描いており、そのようなルールに支配されていました。
そんな中クールベは、王侯貴族のようなブルジョワジーの為に描くのではなく、自分自身のために絵を描きました。
そして自分が見たことのないものは描かない、と決めていました。
クールベの有名な言葉で次のようなものがあります。
「私は天使は描かない。なぜなら見たことがないからだ」
それまでのアカデミズムの絵画にはない、リアリズムの絵画の流れを彼は作り出していくのです。
また、クールベはパレットナイフを使い、絵の具を厚く塗り重ねるように描いています。
そうする事で、作品に力強い表現が生まれるといいます。
原田氏によると、クールベが写実を目指した中にはこの世界の様々な実存するもの、五感で感じるものを一枚の絵で表現しようとしたのだと言っています。
《オルナンの埋葬》ギュスターヴ・クールベ
《オルナンの埋葬》1849-1859
ギュスターヴ・クールベ
オルセー美術館蔵
こちらはクールベの代表作ともいえる作品です。
(島根県立美術館の作品ではありません)
名もない村民が亡くなり、遺体が埋葬される場面を幅7メートル近い大画面に描いています。
それはまるで歴史上の英雄が亡くなったかのような大きな画面です。
このような作品は当時としては異例中の異例でした。
普通に考えて、名もない村人が埋葬される場面の絵を欲しい、買いたいと思う人はいないでしょう。
けれどもクールベはこの作品を描いたのです。
クールベにとってこの作品のような場面こそ、「現実で起こっている事」だと考えたのです。
「現実の世界で起こっている事を、画家が絵にして何が悪い」と。
女神も天使も英雄も、ここには描かれていません。
この作品は当時の人たちにとって大変ショッキングな作品だったといえます。
けれどもこの《オルナンの埋葬》はクールベの芸術家宣言のような、一種のマニフェストのような画期的な作品と言えます。
今回取り上げる《波》という作品も、その系譜にあるといえるでしょう。
「私が見ているものを、君にも見て欲しい」そんなクールベのメッセージが込められているのかもしれません。
「現実世界で起こっている事を美化しないで描く」という姿勢は、そののちに登場するモネや印象派の画家に引き継がれていくのです。
島根県とバーナード・リーチの関係
ここからは一旦クールベからは離れまして、島根県と関係の深いバーナード・リーチについてご紹介します。
バーナード・リーチは(Bernard Leach、1887-1979)は、イギリスの陶芸家です。
民芸運動を支持し、日本の窯を訪れて作陶を続けました。
また、画家・岸田劉生とも交流があった事で知られています。
リーチは島根県松江市の湯町窯をしばしば訪れて、技術指導をしていました。
その直伝の技と精神は今でも受け継がれています。
画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~」より
島根県立美術館について
1999年3月に開館した島根県立美術館は、菊竹清訓氏(きくたけ きよのり)による設計です。
その設計は水面と大地をつなぐ「なぎさ」をイメージして作られました。
また美術館の対岸からの景観も、自然との調和が取れるように作られています。
画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~」より
そんな島根県立美術館には面白い噂話があります。
湖岸の芝生に12羽のうさぎのブロンズ像《宍道湖うさぎ》があります。
その前から2番目にウサギを、西の方角に向いて優しく触ると幸せが訪れる、という噂があるのです。
行かなきゃ!(笑)
その西の方角には縁結びの神様が集まる出雲大社がある事から、このような噂が言われるようになりました。
さいごに
クールベの言葉です。
「画家とは、”見る人間”である」
彼は現実を美化せず、そのありのままの姿を描いたのです。
いかがでしたでしょうか。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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