葛飾北斎『富嶽百景』【アートステージ、2020年10月放送分】

アート・ステージ

TOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」内のコーナー【葛飾北斎 富嶽百景コーナー】にて取り上げられた作品をまとめました。

今回は2020年10月に取り上げられた5作品についてまとめていきます。

番組内容に沿ってそれでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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葛飾北斎「富嶽百景 狼煙の不二」

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

こちらは「狼煙(のろし)の不二」という作品です。
”狼煙”は、物を燃やして煙を上げ、それによって遠くの人に情報を伝える方法です。

この頃の日本は、周辺に外国船が現れるようになったこともあり、幕府は佃島沖で狼煙の稽古を行っていたといいます。

北斎この作品では、画面奥の富士山の上にある凧のようなものが、その”狼煙”です。

北斎が描きたかったもの

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

タイトルに「狼煙の不二」と付けながらも、その狼煙はさほど大きく描かれていません
北斎がこの作品で描きたかったものは、手前にある大きな船でした。

よく見てみますと、船は持ち上げられその下で男たちが何やら作業をしています。
彼らは船底を焼いて、そこを炭化させているのです。
これには防腐の効果があります。

いわばメンテナンスという事ですね!

『富嶽三十六景』より《武陽佃嶌》

こちらの富嶽三十六景の作品では船がたくさん描かれています。
移動手段として船をよく使われていたのでしょう。
北斎は船を描くのが好きだったのかもしれません。

葛飾北斎「富嶽百景 橋下の不二」

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

こちらは『橋下(きょうか)の不二』という作品です。
この作品ではなんと、巨木の枝を横一線に切り、それを橋脚にして橋をかけています。

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

橋を渡る人の姿と見比べると、この木の大きさがどれほど大きいものかがよく分かります。

このような橋が作られたという記録等はない事から、”北斎の創作”の光景だと考えられます
一見突拍子もないアイデアのようにも思えますが、状況さえ整えば非常に効率的に橋をかけることができそうです。

北斎の工学的な非凡さがよく表れた一枚です。

北斎は同じ頃に「諸国名橋奇覧(しょこくめいきょうきらん)」というシリーズものを発表しています。
これは全国の珍しい橋を描いたものですが、実在する橋に混じって北斎が想像で描いたものも含まれています。

今回の『橋下の不二』もその流れにある”奇想の表現”の一つと言えるかもしれません。

葛飾北斎「富嶽百景 福禄寿」

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

こちらは「福禄寿(ふくろくじゅ)」という作品です。

画像出展元:wikipedia「福禄寿」より

福禄寿というのは七福神の一人で、低い身長に長い頭、鶴を連れ立った姿で表されます。

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

つまりこの作品は”めでたい絵”という事になります。
それを表すように絵の中に「福」「禄」「寿」がそれぞれ表されています

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

まず「福」ですがこれは空を飛ぶコウモリによって表されています。
コウモリを漢字で書くと「蝙蝠」となり、「蝠」の字が”ふく”と読めることがその理由です。

画像出展元:テレビ番組「アートステージ」より

続いて「禄(ろく)」ですが、これは大きく描かれた「鹿」を音読みして、”ろく”にしています。

最後の「寿」は富士そのものです。
北斎は富士を「寿」、つまり「長寿」と見立てたのです。

葛飾北斎「富嶽百景 足代の不二」

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ」より

こちらは「足代(あしだい)の不二」という作品です。

組まれた足場の上にいる男の人に、下の人が何かを渡しているようです。
じつはこれは蔵の壁に漆喰を塗る作業、いわゆる左官の仕事風景を描いているのです。
下に人から渡されているのは、その漆喰です。

職人の動きが見事に表現されています。
北斎はここの描かれた二人組のような、息の合った仕事ぶりを描くのが好きだったといいます。

こちらは富嶽三十六景の「江都駿河町三井見世略図(えとするがちょうみついみせりゃくず)」という作品ですが、こちらでも屋根の上でイキイキと仕事をする瓦職人が描かれています。

同じく富嶽三十六景の「本所立川(ほんじょたてかわ)」でも、材木屋の職人の息のあった仕事ぶりを描いています。

材木が上からポーンと投げられていますね。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ」より

富嶽百景の「足代の不二」に話を戻しましょう。
よく見ると、壁の色が一番上とその下で違っているのがわかります。
今まさに漆喰を塗っている、その経過を北斎は表しているのです。

画面全体で見ると、足場の垂直の木と斜めの木の組み合わせでたくさんの三角形が形作られており、そこに富士山の三角形が合わさっているのです。

北斎の幾何学的なセンスが光る一枚です。

葛飾北斎「富嶽百景 武蔵野の不二」

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ」より

今回の記事のラストは「武蔵野の不二」です。

元々、奥に富士、手前にススキ原や秋草を描いた図柄の事を「武蔵野図」と呼びます。
(桃山時代には、長谷川派の絵師によって「武蔵野図屏風」という作品が描かれています)

ススキの丈は、富士に近づくにつれて段々短くなっているのが分かります。
そしてススキが原にかかっている霞みは、手前の方は間隔が広く、奥の方が間隔が短くなっています。
これにより、北斎は遠近感を表しているのです。

空の満月のまん丸と富士山の三角形、そして麓に広がるススキと霞みの平行線で、幾何学的に画面が作られているのが分かります。

今回の記事はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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