葛飾北斎『富嶽百景』【アートステージ、2020年11月放送分】

アート・ステージ

TOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」内のコーナー【葛飾北斎 富嶽百景コーナー】にて取り上げられた作品をまとめました。

今回は2020年11月に取り上げられた3作品についてまとめていきます。

番組内容に沿ってそれでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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葛飾北斎「富嶽百景 薐穴の不二」

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

こちらは『薐穴の不二(さいけつのふじ)』という作品です。

障子には逆さになった富士が映っており、それを見た男たちが驚いています。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

どうしてこのような”逆さの富士”が映し出されたのかというと、雨戸の節穴から入ってきた光が、外の富士の姿を障子に映し出したのです。
これは”ピンホール現象”と呼ばれ、写真機の原理としても使われています。

良く見ると、障子に映った富士は二重になっています。
節穴が2つあったのか、非常に面白い現象です。

まるで現在の映像文化を先取りしているかのようなこの作品。
葛飾北斎の鋭い観察眼が見られる一枚です。

葛飾北斎「富嶽百景 村雨の不二」

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

続いては『村雨の不二(むらさめのふじ)』という作品です。
降りしきる雨を表現した”線”がとても印象的な一枚です。

「村雨」というのは、一時激しく降っては止み、また降るような雨の事をいいます。
主役である富士は強い雨のせいでかすんでしまっています。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

人の動きも雨の音に合わせるかのように、リズミカルに配置されています。
画面右手前から、左奥へと遠近法を駆使して描かれているのがわかります。

よく見てみるとこちらも先ほどの『薐穴の不二』と同様に富士が二重で表わされています。
雨の強さ、激しさを直線だけではなく、墨を薄くすることでも表現しているのです。

葛飾北斎「富嶽百景 深雪の不二」

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

最後の作品は『深雪の不二(しんせつのふじ)』という作品です。
今度は雪が降り注いでいます。
富士だけでなく、人々の笠や蓑にも雪が積もっていることからも、相当な雪が降っているようです。

富士が画面いっぱいに描かれているのが特徴的です。
この『深雪の不二』のように、見開き2ページの作品は『富嶽百景』の中にいくつかありますが、その中でも最大級の大きさの富士です。

もしこれだけの降雪だった場合、実際のところ富士はこれほどはっきりと見る事ができないといいます。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

北斎は降りしきる雪の中を行き交う人々の”心の支え”としての富士を描きました。
雄大な霊山である富士が、勇気や力を与えている」という事なのでしょう。

その一方でリアルな描写も忘れてはいません。
それは人々の足元です。沢山の足跡があり、これが描かれている人たちだけのものではない事が分かります。

こんな大雪の中だけど、これだけの往来がある」というのを、この足跡の数で表しているのです。
画面に虚と実の両方を描いて、雪の中の富士をよりドラマチックなものに仕上げているのです。

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