2019年9月24日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#322 東京ステーションギャラリー 没後90年「岸田劉生展」】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
前回のパート3はこちらからご覧頂けます☟☟
【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展③【美術番組まとめ】
《麗子肖像(麗子五歳之像)》(1918年)
《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年(27歳)
岸田劉生
東京国立近代美術館蔵
今回の展覧会のメインビジュアルにもなっている《麗子像》です。
この作品が初めて油絵で描かれた麗子像になります。
記念すべき、初・麗子像です。
5歳と書かれていますが、当時は数え年でカウントされていましたので、現在の4歳という事になります。
《麗子像》と聞くとちょっと怖い・おどろおどろしいイメージを抱く人もいると思いますが、この作品は可愛らしく、且つ写実的に描かれています。
その写実性には《古屋君の肖像》に通ずる部分も感じられます。
手元には《古屋君の肖像》同様に花(赤まんま)が描かれています。
画面上部(赤色の部分)にはタイトルの「麗子」の文字が描かれています。
このアーチの形はルネサンス期の絵画に見られる、装飾的且つ宗教的な要素を含んでいます。
麗子の頭上真上の黄金の文字は劉生の「劉」の字が、こちらも装飾的に表されています。
劉生は愛娘をたいそう溺愛したといい、《麗子像》は全部で100点以上描いたといわれています。
娘の成長の様子を作品に描く一方で、劉生自身の画風も成長(というより変化?)していきます。
重要文化財《麗子微笑》(1921年)
《麗子微笑》1921年(30歳)
岸田劉生
重要文化財
東京国立博物館蔵
そうして劉生の画風が成長(変化)していった結果、生み出された《麗子微笑》。
名古屋の巡回展では、2月16日(日)までの6週間限定公開となっていました。
5歳の肖像と比べると、ずいぶんと目が細くなってしまいました。
先の肖像画から3年程しか経っていないので、麗子さん自身はそこまで変わっていないはずです。
となるとやはり、劉生の画風が3年の間に変化したという事になります。
その変化は中国絵画の影響を受けたことにあります。
読み方は「かんざんじっとくず」です。
なぜこれを愛娘の肖像画に取り入れようと思ったのかは僕からすると謎ですが・・・笑
顔を横伸ばしに描いている点などが共通しているのが分かります。
また中国だけでなく、姿勢はあの有名な《モナ・リザ》から着想を得ています。
《麗子微笑》は、まさに東洋と西洋の絵画を融合した傑作と言えます。
《麗子像》を見ていくだけでも、劉生の画風が変化していったことが分かります。
今回の展覧会では、全部で17点の《麗子像》が展示されています。
(東京会場の作品数)
《鯰坊主》(1922年)
《鯰坊主》1922年(31歳)
岸田劉生
豊田市美術館蔵
《麗子像》で東西美術の融合を考えた劉生。。
さらにここにきて今度は浮世絵のような作風に挑みます。
モデルは澤村宗十郎(さわむら そうじゅうろう)という役者で、鯰坊主(なまずぼうず)という舞台に出演していた時のスケッチを基に描いた作品です。
この頃は奥さんの影響もあり、歌舞伎をよく鑑賞するようになっていました。
この時期の劉生は、歌舞伎や岩佐又兵衛の肉筆浮世絵などに見られる俗っぽく派手な感じを好んだといいます。
その美意識を「卑近美(ひきんび)」と名付けました。
「卑近」とは、身近でありふれていること・高尚ではないことの意味です。
また「卑近美(ひきんび)」にはグロテスクの要素も含まれます。
1919年には「白樺」の展覧会のために京都に行き、そこで京都にはまります。
そこから更に奈良へ足を運んだりして、神社仏閣・仏像・古画を見て劉生は感動します。
最初は洋画から入った劉生ですが、20代の終わりになると徐々に日本寄りになっていくのです。
そしてこの頃から作品の収集にも力を入れるようになります。
自ら中国の絵や、日本の古い絵を買い集めます。
収集した作品から影響を受け、劉生は本格的に日本画を描いていくのです。
パート4はここまでです。
次のパート5でラストです。
日本画に転向していった劉生についてまとめていきます。
【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展⑤【美術番組まとめ】
コメント
[…] パート3はここまでです。 パート4では、おなじみ《麗子像》についてまとめていきます。 【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展④【美術番組まとめ】 […]
[…] 見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。 前回のパート4はこちらからご覧頂けます☟☟ 【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展④【美術番組まとめ】 […]