【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展③【美術番組まとめ】

ぶらぶら美術・博物館

2019年9月24日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#322 東京ステーションギャラリー 没後90年「岸田劉生展」】の回をまとめました。

番組内容に沿ってそれだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
前回のパート2はこちらからご覧頂けます☟☟
【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展②【美術番組まとめ】

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《道路と土手と塀(切通之写生)》(1915年)


《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年(24歳)
岸田劉生
重要文化財

読み方は「どうろとどてとへい、きりどおしのしゃせい」です。

「ほり(堀)」じゃないですよ
(僕がずっとそう思ってました笑)

青空の下、まるでこちらに迫ってくるような坂道です。
むきだしの大地のひび割れからは雑草が生えています。

手前に描かれている影は、描かれていない電柱の影です。
この風景は、当時劉生が暮らしていた代々木の風景だと言われています。

この場所は宅地造成のため掘り起こされている状態で、ありのままの自然の情景とは異なります
土をはじめ全体の細密描写が大変見事で、存在感に満ちています。

なんとなく全体に違和感のような、不思議な迫力を受ける作品でもあります。
不自然に歪み、こちらに迫ってくるかのようです。
人によっては「怖い」という感想さえ持ってしまいます。

それはまるで自然ではなく、生き物のようにも感じられます。
土が盛り上がって迫ってくるような、かと思えば後方に下がっていくような…
遠近法もデフォルメされているので、それが不自然に感じる要因の一つでもあります。

それまで人物画ばかりを描いていた劉生は、なぜここにきて風景画を描いたのでしょう?

銀座生まれの都会っ子であった劉生にとって、むき出しの大地や生い茂る草木は新鮮そのもので、また興味の対象でもあったのです。

この作品を制作した1915年に劉生は新たなグループ「草土社(そうどしゃ)」を立ち上げています。
草に土と書いて「草土社」、まさにこの作品とリンクしています。

《古屋君の肖像(草持てる男の肖像)》(1916年)


《古屋君の肖像(草持てる男の肖像)》1916年(25歳)
岸田劉生
東京国立近代美術館蔵

読み方は「こやくんのしょうぞう」です。

*ふるやくん ではありません。

デューラーをはじめとする北方ルネサンスの影響を受け、細密描写を極めていった劉生の一つの到達点とも言える作品です。
緻密且つ精密に描かれているのが分かります。

モデルとなった「古屋君」は劉生の隣の家に住んでいたお医者さんです。
その古屋君もデューラーに詳しく、たいへん話が合ったと言われています。

この作品もデューラー作品のように、見事な写実表現で描かれています。
顔のしわや口周りの髭など、そういった所まで細密に描かれています。
そこから人物の内面までも分かるかのようです。


《エリンギウムを持つ自画像》1493年
アルブレヒト・デューラー
*「岸田劉生展」には出展されておりません。

この作品には、デューラーの影響を受けていると分かる部分が一か所あります。
それは手に持っている「花」です。

こちらの《エリンギウムを持つ自画像》のように、「デューラーっぽく何か持とうよ」みたいな話に二人でなったのではないでしょうか。

劉生自身もこの構図を大変気に入り、以降の作品でも花を持つ肖像画を描いています。
麗子肖像(麗子五歳之像)》でも手に花(赤まんま)を持っています。

《壺の上に林檎が載って在る》(1916年)


《壺の上に林檎が載って在る》1916年(25歳)
岸田劉生
東京国立近代美術館蔵

岸田劉生の作品に対して、静物画のイメージを持っている人は少ないかもしれません。
ですがじつはその静物画が、抜群の出来栄えなのです。

こちらの作品はタイトルから面白く、「のっている」ではなく、「のってある」となっているのがポイントです。
これは林檎の存在・実在を意味しています

構図から陶器の質感からたいへん見事に表現されています。
ここに描かれている陶器は、肖像画でも描かれていたバーナード・リーチが制作したものです。

また、この作品には劉生による裏書が残されています。
そこには「この絵は難しかった。とても実物の感じは描けない
と書かれています。

僕なんかからすると、大変見事な出来栄えに感じますが・・・

劉生はそれ以上のものを目指していたのが分かります。

描かれている壺は当初は取っ手の部分がついていたようで、一番最初に描いた静物画では同じ壺で取っ手のついた状態のものが確認できます。

静物画としての一作目の作品《壺》

劉生は以降も静物画の作品を描いていきます。
次第に「自分と静物画は合っている」と考えをもつようになっていったといいます。

パート3はここまでです。
パート4では、おなじみ《麗子像》についてまとめていきます。
【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展④【美術番組まとめ】

コメント

  1. […] パート2はここまでです。 パート3へと続きます☟ 【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展③【美術番組まとめ】 […]

  2. […] 見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。 前回のパート3はこちらからご覧頂けます☟☟ 【ぶらぶら美術・博物館】岸田劉生展③【美術番組まとめ】 […]

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