【CONTACT ART】ルソー/東京国立近代美術館②【美術番組まとめ】

CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~

2021年6月14日にwowowで放送された「CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~ シーズン2」の【#1 アンリ・ルソー/東京国立近代美術館】の回をまとめました。

今回の記事はパート2になります。
前回の記事はこちら☚からご覧ください。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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絵のモチーフを観察する


《第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神》1905-06年
アンリ・ルソー
東京国立近代美術館蔵

今回の記事では先ず《第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神》で描かれているものを見ていきます。

誰に頼まれたわけでもなく、勝手にアンデパンダン展を宣伝するためにルソーが描いたこの作品。
みんなでアンデパンダン展に参加しよう!」そんなメッセージが込められているのです。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

画面下部では、画家たちはキャンバスを抱えて、ぞろぞろと展覧会場に向かっています。
手前の人や、馬車や荷車で作品を運ぶ人はまだ分かりますが、その後ろ、ちょうど木の辺りはあまりにも人が多すぎます

こんなに人が来るわけないだろ(笑) アニメで群衆が殺到するシーンみたい」(原田マハ氏)

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

この時代、まだ画家=男性のイメージが強かった時代ですが、ルソーは沢山の画家の中に、女性の画家の姿もちゃんと描いています。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

ライオンの前では握手を交わす二人の男性が描かれています。
左側にいるのがアンデパンダン展の会長で、右側がルソー本人です。

もちろんこれもルソーの空想です。
「ルソーさんありがとう。あなたのおかげでこんなに多くの画家が参加してくれました」
「いやいや、そんな。私はやるべきことをやっただけですよ」
なんてやり取りを妄想していたのかもしれません(笑)

なんだかたまらなく愛しくなりますね。


絵の上半分には、画家の自由を讃える自由の女神が、勝利のラッパを吹き鳴らしています。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

画面を上下でスパッと分けています。
今でこそ珍しい構図ではありませんが、当時の絵の常識から考えると「稚拙な構図」と捉えられるものでした。

ルソーは作品を描く際に、部分部分から仕上げる描き方をしていました。

この作品では、まず自分の描きたい”自由の女神”に真正面から向き合うのです。
そして次に地上の展覧会の建物、木々、芸術家たちを描いていくのです。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

その結果、遠近法は破綻しています。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

葉っぱの一枚一枚までもが、丁寧に緻密に描かれているのが分かります。
その全てが正面を向いているのも、実際にはあり得ない光景です。

一つ一つの対象に生真面目に向き合って描いた結果、画面全体の独特な緊張感が生み出されているのです。


しかし、この独特な雰囲気こそ、後の時代の画家に繋がる”新しさ”だったのです。
ルソーの凄さは、「意識しないで、新しかった点だ」と原田マハさんは言います。

ちぐはぐな感じが絶妙な面白さになっており、あのピカソルソーの新しさに注目した一人でした。

後に起こる20世紀美術を牽引する「シュルレアリスム」。
その前衛芸術を促した画家こそルソーだと言われているのです。

ルソーがすごいのは、後の人たちがテクニックとしてやることを、全くの自然体でやっているところ」(原田マハ氏)

絵画に込めた思い


ルソーアンデパンダン展の関わりは非常に深いものでした。
1886年の第二回展からルソーが亡くなるまで(1889年と1900年の二度を除く)、作品を発表し続けています。

65歳の時には、病に苦しみながらも、最期の大作を出品しています。


《夢》1910年
アンリ・ルソー
ニューヨーク近代美術館蔵

現在、ニューヨーク近代美術館にあるこちらの作品。
第26回アンデパンダン展に出品されたこの作品は、亡くなる半年前に描かれたものです。

まさに夢の中を描いたような不思議な光景が広がります。
ハスをイメージした花々が咲き誇り、ゾウやライオン、鳥や蛇まで様々な動物が密林に勢ぞろいしています。

最初あんなに下手だったのに、最終的にここに辿り着いちゃうんですからスゴイですよね!

ルソーは貧しかったので、実際にジャングルに行ったり、そこにいる動物を生で見る事は叶いませんでした。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

ですので、トラを描く時は、トラの毛皮や敷物などを参考して描いたといいます。
そのせいか、どこか動きの止まった不自然なトラになっているのです。

しかし原田マハさんは「それがかえって心に残る」といいます。
もし仮にこのトラが生き生きと描かれていたならば、また違った印象になっていた事でしょう。


ルソーは二度結婚していますが、どちらの妻にも先立たれており、また我が子も自分より早く亡くしていたりと、孤独な人生だったといいます。
辛い事や思い通りにいかない事ばかりの中、ルソーは夢中で絵を描きます。

ルソーにとっては、絵の世界こそ何もかも思い通りになる場所だったのです。
時には空を飛び、時には《》のように密林でトラを見る事もできる。
絵の中では、ルソーの夢や妄想は現実のものとなったのです。

ルソーが美術教育を受けて、アカデミックな絵を描いていたとしたら、これほどまでに人の心に迫らなかっただろうし、これほどまで人の記憶に残った画家にはならなかったと思う。アートの神様のいたずらとしか思えない」(原田マハ氏)

いくら周りから認められなくても、ルソーは自分の好きなものを描き、それを貫いて66年の生涯を閉じたのです。
そして結果的に、亡くなって100年以上経った今も世界中の人々に愛されているのです。

もうひとつの展示室

最後に東京国立近代美術館が行っているユニークな取り組みをご紹介します。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

それは「#MuseumBouquet(ミュージアムブーケ)」というものです。
このハッシュタグ、元々は2020年3月、コロナウイルスの影響で世界中の美術館が休館に追い込まれる中、アメリカの美術館が同国の美術館にメッセージを送る際に使われたのがきっかけです。

それに世界中の美術館がリアクションして、それぞれの館の花の作品を「#MuseumBouquet」のハッシュタグと共に投稿していったのです。

画像出展元:テレビ番組「CONTACT ART シーズン2」より

東京国立近代美術館では、所蔵するポール・セザンヌなどの花の作品を展示しています。
こんな時代だからこそ、人々の心を明るくするアート、その中でも様々な画家が描いてきた花束の絵を、見る人に届けようという企画です。

心が疲れた時こそ、アートに親しむ。それができる美術館は良いですね。こういう時にこそ来たいなっていう」(原田マハ氏)

いかがでしたでしょうか。
今回の記事はここまでになります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. […] 今回の記事は一旦ここまでです。 パート2に続きます。 【CONTACT ART】ルソー/東京国立近代美術館②【美術番組まとめ】 […]

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