【アートステージ】18世紀から19世紀のイギリス美術【美術番組まとめ】

2020年12月12日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【イギリス美術の幕を開けた巨匠たち】の回をまとめました。

番組内容に沿ってそれでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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イントロダクション

イギリスはかつては「美術後進国」と呼ばれており、フランスやイタリアなどに比べて遅れを取っていました


《英国王チャールズ一世の肖像》1635年頃
アンソニー・ヴァン・ダイク
ルーヴル美術館蔵

17世紀にはイギリスを舞台に活躍したアンソニー・ヴァン・ダイク(1599-1641)がいましたが、彼はフランドルの出身で生粋のイギリス人ではありません。
このように他国から来た外国人画家が、イギリス画壇の指導的な立場にありました。

画家トマス・ゲインズバラ

イギリス人によるイギリス独自の美術が花開くのは、18世紀になってからの事です。
他のヨーロッパ諸国がそれまで描いてきた「神話画」や「歴史画」ではなく、人物を描いた「肖像画」からイギリス美術はスタートします。

《自画像》(1758-1759頃)

その幕開け飾る画家の一人が、トマス・ゲインズバラ(1727-1788)です。


《アンドリューズ夫妻》1750年頃
トマス・ゲインズバラ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

ゲインズバラの代表作の一つ、《アンドリューズ夫妻》。
画家の地元の有力者であるロバート・アンドリューズと、その妻のフランシスを描いています。
当時二人は新婚で、その記念に描かれた作品です。

デリケートなタッチで人物が描かれています。
新婚の夫婦の肖像画ですが、画面の大部分が風景を占めているのが特徴的です。

この作品には「ロココ」そして「オランダ美術」の特徴が見られます。


ゲインズバラは、フランス・ロココを代表する画家フランソワ・ブーシェの孫弟子にあたります。

ブーシェといえば《ポンパドゥール夫人》が有名ですね!

アンドリューズ夫妻》にはゲインズバラロココから学んだものが反映されています。

さらにゲインズバラは、17世紀オランダの風景画も参考にしています。
その繊細な描写が風景表現に存分に発揮されています。


この作品が発表された200年後の1953年、女王エリザベス2世の戴冠を祝した展覧会がパリで開かれました。
その展覧会でこの《アンドリューズ夫妻》はイギリス絵画を代表する一枚として展示されました

人物と自然を融合させたこの作品は、まさにイギリス美術史のスタートを飾るに相応しい傑作です。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

その後ゲインズバラは、ロンドン王立美術アカデミーの創設メンバーに選ばれます。
彼は会長の座を期待していましたが、そこには別の画家が選ばれました。

画家:ジョシュア・レノルズ

ジョシュア・レノルズ

その人物はゲインズバラより4歳年上のジョシュア・レノルズ(1723-1792)です。
ゲインズバラレノルズは18世紀イギリス画壇を代表する人物です。

レノルズもまた格調高い肖像画で人気を博しました。


《マスター・ヘア》1788年
ジョシュア・レノルズ
ルーヴル美術館蔵

豊かな金色の髪をもつ少年を描いたこちらの作品。
頬はバラ色で、小さな手で指さす仕草がなんとも可愛らしく印象的です。

子供ならではの無垢さ、そして生命感を前面に出すのではなく、それらが自然に描かれ、観る者を惹きつけます。


背景の木々や青葉は空気に溶けるかのように、ぼかして描かれています。

また子供の金髪と衣服の純白と、木々や葉の深い緑色の色彩の対照が画面の中で絶妙に響き合っています。
これにより作品がより活気的になり、子どもより可愛らしく際立てるようにしているのです。

画家ウィリアム・ホガース

ゲインズバラ

ジョシュア・レノルズ

ゲインズバラレノルズの二大巨匠によって、アカデミックなイギリス美術は確立されました。
そんな彼らより20年ほど早く生まれ、活躍した画家がいました。

それがイギリス人のウィリアム・ホガース(1697-1764)です。
初めてイギリス人らしい絵を確立した、国民的画家として知られています。

《エビ売りの少女》や《ビール通りとジン横丁》などの有名な作品がありますが、中でも『当世風の結婚』は彼の代表作です。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

『当世風の結婚』は6枚の連作からなる作品で、落ちぶれた貴族と成金商人の政略結婚の様子を描いたものです。


《「当世風の結婚」より「婚約万端整って」》1743年頃
ウィリアム・ホガース
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

こちらは1枚目の婚約の場面です。
登場人物が一堂に会し、物語の幕開けが描かれています。


一番右に座るのがお金のない伯爵で、政略結婚の仕掛け人です。
左手は血筋をアピールするために、家系図を指さしています。


伯爵とテーブルを挟んで座るのがお金持ちの商人、その後ろにいるのが彼の娘です。
こちらはこちらで娘を嫁がせて、地位を手に入れようとしているのです。


その娘に背を向けて座るのが、貧乏伯爵の息子です。
新婚の二人ですが、互いに全く関心がない様子です。

足元の犬も結婚を象徴する動物ですが、この二匹も互いに関心を持っていないようです。


「当世風の結婚」という事で、この二人が主人公のはずですが、端の方に描かれています。
見栄と欲望に満ちた富裕層へのホガースの皮肉が描かれているのです。

>>最も有名なイギリス人画家ターナー

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