画家ウィリアム・ターナー
さいごにご紹介するのは、史上最も有名なイギリス人画家といえるでしょう。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)です。
18世紀の終わりから19世紀前半にかけて活躍しました。
かつて美術後進国とされてきたイギリスは、ここで風景画で世界をリードする事になります。
《雨、蒸気、スピード》1844年
ターナー
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
こちらは彼の代表作《雨、蒸気、スピード》です。
嵐の中を疾走する蒸気機関車を描いています。
荒々しい自然と、それに対峙する文明。
ぼんやりとした画面は、抽象画のようにも見えます。
光と大気、そこに機関車の煙が交じり合うように。
ターナーは捉えがたい対象を大胆な筆致で、ニュアンス豊かに描きました。
この型破りな風景画は、のちのフランス印象派先取りする斬新なものでした。
印象派の巨匠クロード・モネもターナーの作品から影響を受けています。
ターナーの作品はこの《雨、蒸気、スピード》のように、空気を描いたものが多いですが、これには彼が気象学に通じていたというのが理由に挙げられます。
18世紀に他国に比べて遅い幕開けとなったイギリス美術ですが、そこから一世紀足らずで世界をリードする存在になった事には、驚きの一言です。
イギリス美術はここから更に、風景画のコンスタブル、ミレイらラファエル前派と更なる発展を遂げるのです。